7月5日(土) 2008 J1リーグ戦 第15節
札幌 2 - 2 清水 (14:03/札幌厚別/10,282人)
得点者:12' 西澤明訓(清水)、29' ダヴィ(札幌)、44' マルコスパウロ(清水)、74' 池内友彦(札幌)
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この試合は札幌にとって、厚別競技場で行なわれた今季初めてのホームゲーム。この日の札幌市内は午前中から太陽が照りつけ、市内中心部から競技場へ向かう道中も非常に蒸し暑く、この日の試合は運動量のそれほど多くないスローテンポなものになるのではないだろうか、そう考えながら記者席に座った。
公式記録によるこの日の天候は晴れ。気温28.4℃、湿度60%という条件だった。一般的に考えれば若干気温が高く感じるかもしれないが、同じく公式記録には「中風」とも記されている。その風が非常に心地よく、試合中はそれほど暑さを感じることはなかった。記者席が日陰となるメインスタンドにあるため、バックスタンドやゴール裏などで観戦していた方々は暑さを強く感じたかもしれないが、札幌の坪内秀介が「暑さはそんなに感じなかった」と話すように、少なくともグラウンド上でプレーする選手には厚別独特の風が体感気温を下げてくれたようである。
さて、試合の方であるが、どちらも戦い方は明確だった。この日、札幌は左MFに本来はFWである長身の中山元気をスタメン起用。この選手のスピードをアウトサイドで生かすとともに、青山直晃、高木和道という清水の両センターバックが空中戦に強さを持っているため、ここでの勝負を避けて中山にロングボールを当てることで起点を作ろうとした。同時に自陣深くからのFKやゴールキックの時はダヴィ、アンデルソンの2トップを右サイドへと流れさせ、清水のDFラインでもっとも身長の低い山西尊裕の場所での勝負を挑んだのだ。
そして、対する清水はバイタルエリアでの勝負を仕掛けた。中盤がダイヤモンド形の4−4−2システムを用いている清水はトップ下に位置する枝村匠馬が、DF、MF、FWのスリーラインがフラットに並ぶ札幌のDFとMFの間にポジションを取り、ここにボールを集めることで堅いブロックを築く札幌の守備網を崩そうとした。
そして、この戦い方を見事にフィットさせたのが清水の方だった。枝村が上下左右に広く動き、そうして生まれたスペースに藤本淳吾、マルコス・パウロ、時には守備的MFの伊東輝悦が入り込んで札幌の守備を翻弄した。1−1のスコアで迎えた44分に生まれたマルコス・パウロの得点は、まさにこのスペースで伊東、藤本らが有機的に動いたことで得られたものだった。
一方の札幌だが、せっかく両アウトサイドの空中戦から活路を見出そうとしながらも、ホームスタジアム特有の風に悩まされた印象だ。GK高木の蹴ったボールが風に押されてそのままラインを割ってしまう場面は幾度もあった。
確かに、風に邪魔された部分は不運とも言える。けれど、今季初めての使用とはいえ厚別は札幌のホームスタジアム。そして、札幌に加入してこれが2試合目の箕輪義信が、開始早々にハイボールの扱いを誤りそうになりながらも、その後はしっかりと適応してプレーしていたことを考えれば、札幌はチーム全体としてもう少し風を計算に入れたプレーをすべきだったろう。失点リスクに直結するプレーではないとはいえ、せっかくフィールドプレーヤーの10人中7人も身長180センチ以上の長身選手を揃えているのだから、もう少し丁寧にプレーしたいところだった。
さて、そんな試合であるが、試合終盤になると地元の声援に後押しされた札幌が勢いをつけた。これは「結構影響があった」と長谷川健太監督が振り返ったように、水曜日にカシマでナビスコカップを戦ったばかりの清水が疲弊し運動量を落としたことと、札幌の得点への執念が組み合わさったというべきだろう。選手間の距離が広がってしまった清水が縦に蹴るだけのサッカーになってしまい、そのボールを箕輪、坪内らがファウルすれすれのハードワークで跳ね返し攻撃につなげるという場面が幾度も見られるようになった。
そして74分。「スカウティングの方から、相手のセットプレーの弱点を聞いていたので、そこに思い切り飛び込んでいった」という池内友彦のヘディングがゴールネットを揺らし、2−2のタイスコアに。そして、試合はそのままタイムアップを迎えたのだった。
札幌にとっては、タイトなスケジュールで運動量を減らした相手をそのまま押し切りたいところだったが、2度のビハインドを覆した部分は今後に向けた自信となるだろう。そして、試合終了までハードワークを継続させたこともまた、充分に評価したい。
一方の清水は、2度のリードを守りきれなかったというのは事実だが、中断期間前の清水ならばそのまま逆転されてしまう可能性もあった。チーム全体の疲労も大きかった。しかし、そうしたなかでしっかり勝点1を確保したことは前向きに捉えるべきだろう。
中断期間を経て、双方がチームとしての逞しさを増した。そんな印象を得られた試合だった。両チームの今後の健闘に期待したい。
以上
2008.07.06 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
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