7月5日（土） 2008 J2リーグ戦 第24節
湘南 0 - 1 水戸　（19:03／平塚／4,973人）
得点者：56' 荒田智之（水戸）
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　年に一度の七夕に街が賑わいを見せるこの日、平塚の空には夕方から重たい雲が垂れこんでいた。霧にも包まれ、不穏な気配が漂う。昨季4月に笠松で行なわれた両者の対戦が脳裏をよぎったのも無理はない。このときも濃霧に包まれていたのだった。

　湘南のアウェイ水戸戦を振り返るにつけ、勝利こそすれど、しかし内容にはあまりよい印象がない。笠松の魔力とでも言おうか、独特の雰囲気と停滞感に呑みこまれてしまう。試合中にも霧が濃さを増した今節はまるで、水戸がホームからその空気をも持ち込んできたかのような内容だった。

　水戸は堀健人と小澤雄希、そしてトップに入った赤星貴文が加わり、立ち上がりから左サイドでつくっていく。サイドバックの小澤が深くえぐったのは、開始わずか1分のことだ。なかでは荒田智之が手ぐすねを引いてクロスを待つ。守っては2試合ぶりにスタメンに名を連ねたビジュが、湘南の2トップとアジエルに対するケアを怠らない。

　他方、湘南は前線で阿部吉朗が時間をつくり、アジエルや永田亮太らが絡み応戦する。21分には石原直樹が寄せてきた相手DFをトラップでかわし、アジエルとの連係でチャンスをつくった。逆に水戸は32分、左に流れた赤星からのクロスに、荒田がヘディングを合わせるが、これはGK金永基の手のなかに収まっている。

　両者ともにミスが見受けられるなか、相手の攻勢もあり、湘南から前への推進力が失われていく。坂本紘司が中盤で奪った場面も、周囲の動き出しが伴わない。結局スコアレスドローで前半を終えることになるが、重苦しい空気は笠松さながらだった。つまり、自分たちの土俵に持ち込めてはいなかったのである。

臼井幸平の述懐が、前半の様子を端的に示している。
「受け身になってしまい、細かいミスも重なってリズムをつくりきれなかった。いいリズムではなく、悪いリズムの0−0だったと思う」

　それでもハーフタイムを契機に、湘南イレブンはスパイクの紐を締めなおしたはずだった。後半開始直後には、アジエルの絶妙なスルーパスから永田が相手ゴールを脅かしてもいる。だが前半とおなじく、一気呵成とはいかない。スピードを上げきれぬまま、逆に水戸がミスに乗じて押しこんでいく。そんななか、得点機はアウェイチームに訪れる。

56分だった。水戸は中盤で挟み込むかたちで奪うと、すかさずカウンターに転じる。赤星から受けた村松は、敵が寄せるまえに前線へスルーパスを刺した。これに反応したのが前半から機を窺っていた荒田だ。水戸の点取り屋は足元巧みに収めると、迷いなく左足を振り抜き、前節の仙台戦に続くゴールを沈めた。

　先制を許した湘南は、失点の直前に投入されていた鈴木将太のドリブルと裏への動き出しから、攻撃がようやく活性する。60分過ぎには鈴木将と鈴木伸貴に攻め上がった坂本が絡んで左サイドを崩し、アジエルがヘディングシュートを狙った。さらに74分には、金から鈴木伸、石原とシンプルにまえへと運び、鈴木将とともに入っていたリンコンが石原のパスから決定機を迎える。しかしシュートは惜しくも枠を捉えきれない。

その後も湘南は猛追するが、前半に自ら失したリズムを取り返すことは叶わない。終盤にはリンコンが相手DFとの交錯で一発退場となり、アジエルまでもが退場に追いやられ、試合終了の笛を聴いた。

水戸は勝利を手にし、連敗を4で止めた。「これまでも悪くなかった」と誰もが口を揃えた内容を、アウェイの地でついに結果に繋げた。かたや湘南は、不甲斐ない黒星を刻んだ。たしかにミスは多かったかもしれぬ。しかしミス自体を叱責する指揮官ではない。「チーム全体でもっと強い気持ちをもってつぎに向かう」と坂本が唇を噛み締めたように、この日の敗戦を教訓にすることが肝要だ。もう繰り返すわけにはいかない。

　この世には必ず叶う願い事がひとつだけあると、聞いたことがある。答えは、「雨乞い」だそうだ。なぜなら、雨は時を待てばいつか必ず降るものだからだという。しかし望むのが勝利となればそうはいかない。念じるだけで手のひらに落ちてくるべくもない。リバウンドメンタリティとハードワークという湘南の芯をいま一度、見詰め直す必要がある。立ち返るべき芯はこれまでに培ってきたのだと、胸を張れるのだから。

以上


2008.07.06 Reported by 隈元大吾