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【J2:第24節 福岡 vs 甲府】レポート:ターニングポイントとなる試合で福岡失速。甲府が藤田の大活躍で勝点3を手にする(08.07.06)

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7月5日(土) 2008 J2リーグ戦 第24節
福岡 0 - 2 甲府 (19:04/レベスタ/7,990人)
得点者:42' 藤田健(甲府)、55' 神崎大輔(甲府)
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 ナイトゲームとは言え、キックオフ時点での天候は気温28度、湿度75%。J1復帰へ向けて後がない両チームにとっては厳しい条件の中での試合となった。浮上のきっかけを掴むには勝点3が最低条件。「正直に言って今日の試合はスペクタクルなものではなく泥臭い試合だった」(安間貴義監督・甲府)のは、気象条件に加え、福岡11位、甲府12位という両チームの置かれている状況から来るものだったのだろう。

 前半の主導権を握ったのは福岡だった。「意外と高い位置でボールが取れていたし、いつもは大久保が孤立することが多かったが、今日はそういう場面が少なかった」(中払大介・福岡)。この日の福岡のゲームプランは、甲府にボールを回させておいて前に出てくるところを捕まえてカウンターを仕掛けるというもの。ゲーム展開はその狙い通り。ボールポゼッション率では甲府がやや勝るが、ゲームをコントロールしていたのは福岡だった。

「押し込まれることも多くて前半はアビスパの流れ。攻撃も前の3人で攻めるだけだった」(杉山新・甲府)。いつものようにショートパスをつないで打開を図ろうとする甲府だったが、この日はミスを連発。右SBの杉山は対峙するハーフナー・マイクに引っ張られて持ち味である積極的な駆け上がりが見せられない。前に出ようとしてはミスからボールを奪われ、福岡の圧力に押し戻され、リズムが作れない。

 ただ、福岡にもゴールを決めるだけの迫力はなかった。狙い通りの形でボールを奪っても、そこからの展開がスピードアップしない。加えて、「ボールを奪ったら逆サイドという狙いを持っていたが、ダイアゴナルなボールではなく、ストレートなボールが入ってしまった」とリトバルスキー監督(福岡)が振り返ったように、甲府攻略のポイントであるボールの反対サイドに広がるスペースを思うように使いきれなかった。ゲームの主導権は握っているのだが、その優位性を生かせない。そして42分、この日のゲームの行方を大きく左右するゴールが生まれた。

 ピッチ中央でボールを持った前田雅文が藤田健にボールを預けて交差するように中央へと走りこむ。この動きに前田のマンマークに付いていた長野聡と、中島崇典の2人が引っ張られた。目の前に広がる大きなスペースに向かって悠然とドリブルを仕掛けた藤田は視界にゴールをとらえると、一呼吸おいて左足を一閃。鮮やかな軌道を描いたボールがゴールに吸い込まれた。「ああいうゴールは普段は入らない」(リトバルスキー監督)。福岡の指揮官もお手上げのスーパーゴール。GK神山にはノーチャンスだった。

「福岡の攻撃を持ちこたえて1点取れたことでチーム全体に勢いがついた」(杉山)。これで試合の流れが甲府に傾いた。そして、後半に入って間もない55分、試合を決める2点目が甲府に生まれる。福岡が攻め込んだ後の甲府のクリアボールが中央にいた藤田にわたる。前がかりになっていた福岡の中盤に空く大きなスペースを使って、藤田が再びノーマークで持ち上がる。疲労が溜まっていたのか、福岡の中盤は追いかけることさえできない。そして繰り出されるスルーパス。「健(藤田)さんがボールを持ったときに自分がフリーになっていたのが分かったので信じて中で待っていた」という神崎大輔がゴールネットを揺らした。

 ここから福岡は不調に沈んだ第1クールの姿に戻っていく。攻撃は大久保哲哉めがけてロングボールを放り込むだけ。単調な攻撃を繰り返した。71分に大久保に代えて黒部光昭を投入。2トップにしてからはサイドからのクロスボールでチャンスも作ったが、それも徹底できず。ロングボールを前に蹴るだけのサッカーは変わらず、それでいて、高さを生かすために残したハーフナー・マイクに高いボールを合わせることもできない。意図が見えない攻撃はいたずらに時間を費やすだけ。福岡は抵抗する姿を見せられないままに試合終了のホイッスルを聞いた。

 浮上のきっかけをつかみたかった福岡だが、その逆に、再び窮地に追い込まれる結果に終わった。試合後、久藤、大久保らは「臨機応変、工夫」という言葉を何度も繰り返したが、試合の中でリズムを変えられない懐の狭さが露呈。今後の戦いに大きな不安を残すことになった。「勝つのがもちろんだが、次はいいゲームがしたい。そうすればおのずと結果が出てくると思う」(大久保)。次節の相手は好調の草津。厳しい状況の中でどう戦うかに注目したい。

 そして甲府。チームに課せられていた勝点3を奪うことには成功したが、指揮官の言葉に勢いはなかった。「今週やってきた部分はしっかりとゲームで出来た。このチームは3試合まではそれを続けられるようになったが、それを続けていけるかどうかが自分たちにとって勝負になる」。文句なしのMVPの藤田の活躍で勝利を手にしたものの、試合内容自体に大きな変化はなかったからだろう。しかし、勝利はチームにとって最高の良薬。この日の勝利を、リーグ後半戦にどうやってつなげていくのか。それが次節に問われることになる。

以上

2008.07.06 Reported by 中倉一志
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