7月5日(土) 2008 J2リーグ戦 第24節
仙台 0 - 1 愛媛 (19:04/ユアスタ/13,808人)
得点者:61' 田中俊也(愛媛)
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両チームの置かれていた順位、それぞれにとってのホーム、アウェイにおける記録やジンクス…詰まるところ、そのようなものは一切関係がなかった。
勝つべくして、愛媛が勝った。負けるべくして、仙台が負けた。0−1という最少点数での決着ではあるが、もたらされた結果に対してここまで異論を挟めない試合も珍しいのではないだろうか。
今季初めてスタメン出場を飾った左SB細川淳矢の豪快なミドルで幕を開けたこの試合。その後細川は守備に関して言うと、起用した手倉森誠監督の意図どおり、相手の攻撃を良く跳ね返していた。12分には仙台の右サイドを突破してきた江後賢一から鋭いセンタリングが入ってきた場面において、しっかりと中に絞った上で、中央で合わせかけていた若林学にフリーでのシュートを許さず。このプレーを讃えるGK林卓人と直後にハイタッチを交わすなど、彼自身乗っていける兆候は確かにあった。
しかし、やはり攻めの局面では、微妙な不慣れさが顔を出す。ボールを動かしながらの連動に上手く入れないため、勢いをつけての前線への飛び出しは見られず。低い位置で前からの戻しを待つような位置取りが続き、左サイドに動きをつけるには至らなかった。
その「余波」と言えるかどうかはわからないが、この日の仙台は、途中まで右サイドも上手く回らない。右SB田村直也の前には、愛媛の左サイドハーフである江後が張る形で配され、田村はここ数節でしばらく見なかったほどに守備へと、それも先手をとられる形で奔走させられる。田村の前にいた関口訓充が、仙台の右サイドを狙って速い攻めを打ってくる江後と三上卓哉という愛媛左サイドの後方を突き、単独でサイドを若干押し返すことに成功するまで、田村にとっては本当に厳しい展開となった。
とはいえ、こうしたサイドの危機と呼べる時間が過ぎても、仙台は一向にペースをつかめない。この日の仙台には、好守両面において言い得ぬ「軽さ」が漂っていたからだ。パス交換をしようにも、選手間の呼吸のミスや、単純なキックミスなどが相次いだ上、それが動き出しの悪さに拍車をかける。また守備においても、球際の激しさに欠ける守備ではボールを奪いきることができず、ボール保持者に人は行っているのに突破を許す、あるいは人数は揃っているのに、簡単にポストプレーからDFラインを飛び出されるという場面を続けた。愛媛のチャンスメイクにいたる形が極めてシンプル、それゆえスピーディーだったことも、愛媛にとってこの日の仙台の守備を突破する上では全て良い方向に作用したといえる。
何とか0−0で折り返したものの嫌な流れに苦しむ仙台に対し、愛媛は後半に入って、仙台のお株を奪う、SBを絡めた両サイドからの崩しを敢行。中盤でいいようにパスを回し、仙台の守備を揺さぶれるだけ揺さぶった上で、守備選手の届かない大外のスペースからシンプルにクロスを供給するというサッカーは、クロス自体に鋭さを欠いたためゴール前で決定的なチャンスを生むには至らなかったものの、仙台の選手たちから反撃に活かすべき体力を奪い去るという意味では効果てきめんだった。
そして61分である。仙台が点を取りに行くために、サイドでリズムを作る上では細川より一日の長がある田ノ上信也を投入、さらに運動量が明らかに落ちた永井篤志に代えて富田晋伍を入れた直後のことだったのだが、交代直後の混乱が災いしたのか、仙台のバイタルエリアには危険なスペースが。そこを愛媛左サイドの江後が見つけて侵入すると、良い動き出しを見せた田中俊也へとスルーパス。ゴールラインぎりぎりで追いついた田中俊也は、追いすがる一柳夢吾のスライディングをキックフェイントでかわすと、さらに詰めてきた仙台の選手も振り切り、ゴール左角度の無い位置からシュート。これが右のサイドネットを揺さぶった。
失点した仙台、反撃に出る必要があるのはもちろんだったのだが、最後まで詰めの甘さは消えなかった。GKを脅かしたシュートはエリア外からのものが多く、相手のDFラインを最後まで崩しきることはできず。また、最後の交代枠である中原貴之投入に際し、ケガを抱えていた平瀬智行を下げざるを得なかったため、相手ボランチへのケアにも奔走しボールを追えないほどの疲労困憊だった田中康平を使い続けるという酷な状況も生まれてしまった。
分厚い攻撃を打とうにも、1点をリードした愛媛が前線に、横山拓也、三木良太などフレッシュな選手を次々と投入してきたために、失点時のように裏を取られることを恐れた仙台のDFラインは押し上げることができなかった。そのため高い位置でスローインを得ても、仙台の布陣は密度がどうしても薄くなり、ルーズボールも愛媛に拾われる。自らの悪さが招いた流れとはいえ、仙台にとっては全てが裏目(言い換えれば、愛媛が採った仙台対策がその都度当たる)という結果を、仙台は最後まで覆すことができなかった。
試合終了直後、ユアスタを包む強烈なブーイング。これが今季初のホーム敗戦ということを思えば厳しいリアクションに思えなくもないが、裏を返せばそれだけ、仙台の今日の出来が失望感を抱かせるものだったということになる。
「似たようなプレースタイルを目指しているチーム」という、仙台を評した愛媛・望月一仁監督の言葉が間違っていないのだとすれば、差を分ける部分はスタイルの先にある細部である。
その「細部」とは一体何なのか。攻撃でのシンプルさ(決して「スタイルを放棄して単純に放り込むやり方」を是とするわけではない)がもたらす仕掛けへの積極性の度合いなのか、ボールの側でのミスの多少なのか、はたまた球際での強さにつながるメンタルの部分なのか。
一つに決めるのは難しい。しかしもしかしたら、全てが正解なのかもしれない。
以上
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