10月12日(日) 第88回天皇杯3回戦
湘南 1 - 1(PK 4 - 5)松本山雅 (18:59/平塚/2,580人)
得点者:23' 原竜太(湘南)、26' 柿本倫明(松本山雅)
☆天皇杯特集
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6人目のキッカー、小澤修一がゴール右隅にシュートをねじ込んだ瞬間、アウェイ側スタンドの歓喜は文字通り爆発した。その場に立ち尽くすホームチームを尻目に、ピッチ上も優勝と見まがうほどの喜びに沸いている。かくして延長PKまでもつれた平塚の一戦は、松本山雅に軍配が上がったのだった。
先にスコアを動かしたのは湘南である。素早いリスタートから押し込んだ先の23分、加藤望がクロスを送り、攻め残っていたジャーンが高さを活かして折り返す。そのボールに合わせたのは、「先制点を狙いたい」と戦前から話していた原竜太だ。ヘッドを振りぬき、宣言どおりゴールネットを揺らした。
「相手が僕と光(三田)のところにプレスに来ていたので、最初15分ぐらいは裏を狙った」と右サイドバックの臼井幸平が振り返ったように、湘南は序盤、シンプルに2トップを目指していた。対する松本山雅は3ラインをしっかりと形成し、タイトなチェックを絶やさない。敵を囲い込んで奪うと、18分には阿部琢久哉から大西康平へと1タッチで繋ぎ、スルーパスに反応した柿本倫明がシュートを放ってもいる。どちらのペースともいえない中で、それでもゴールをこじ開けた原の先制弾は大きく映った。だが一方の松本山雅もまた、失点によって揺らぎはしなかったのである。
先制点からわずか3分後のことだった。中盤の混戦から阿部が左サイドを抜け出すと、湘南の虚を突いてそのままドリブルで持ち込む。サイドを起点に2列目、あるいは3列目が忠実に追い越す動きは松本山雅に一貫していた。くわえて、「今日はシンプルにプレーできた」と柿本が評したように、強敵を相手にしたことがプラスの側面を引き出したようだ。そうして阿部のグラウンダーのクロス目掛けてゴール前に走りこんだのは、古巣との対戦に静かな闘志を燃やすその柿本だった。チームの大黒柱は、右足で落ち着いて同点弾を沈めた。
「楽しいですよ」松本山雅での日々について、柿本はこう語ったものだ。5箇所ほどの練習場所を転々とする毎日である。なかには土のグラウンドもあるそうだ。しかし曰く、「月2,3回ぐらい、いいピッチでトレーニングできるときなんて、高校生か大学生の頃みたいにみんなで喜ぶんですよ」と屈託のない笑顔を見せる。ベストピッチに輝いたこともある平塚競技場の芝を、また松本から駆けつけた多くのサポーターの後押しを受けて臨んだJクラブとの初めての公式戦を、彼らは全身で楽しんでいたのかもしれない。事実、時間が経過するほどに松本山雅のプレーは落ち着きを見せていた。
だがとはいえ、後半は湘南がゲームを握った。湘南サポーターの声援を背に、こと59分に坂本紘司が投入されてからはリズムよくパスが紡がれ、湘南の攻撃が活性する。時間が生まれ、両サイドの攻め上がりも増した。投入直後には三田のクロスに2トップが走りこみ、65分にも臼井のクロスから原がヘッドを合わせている。その10分後には坂本自らDFの裏を盗み、決定機を演出した。かたや押し込まれる松本山雅はカウンターで応戦し、トップにポジションを上げた今井昌太が快足を飛ばして脅かすなどするが、斉藤俊秀の冷静なディフェンスやGK金永基の好守がこれを阻む。
90分で決着を見ない戦いは延長戦に持ち込まれた。激しい消耗戦のなか湘南は猛攻を仕掛けるが、松本山雅も体を張ってゴールを死守する。ロスタイムのジャーンの渾身のヘッドも枠を捉えきれず、勝負はPK戦に委ねられるのだった。
「少しは『松本山雅』の名前を知ってもらうことができましたかね」柿本は笑顔で熱戦の汗を拭った。それは間違いなかろう。「全国社会人大会に向けて弾みになった」と吉澤英生監督も語ったとおり、この日の内容と結果を糧に、期するJFL昇格を成し遂げたい。そして、糧にすべきは湘南もまた同様である。「勝ちきれなかったことを反省し、この悔しさをしっかりとつぎへのパワーに置き換える」と菅野将晃監督は噛み締めた。明暗はくっきりと分かれたが、勝利も敗北も、つぎの一歩によってその価値が、その意味が変わってくる。これまで幾度も逆境を血肉にしてきたように、シーズン残り6試合、まずはホーム熊本戦に挑む。
以上
2008.10.13 Reported by 隈元大吾
J’s GOALニュース
一覧へ【第88回天皇杯3回戦 湘南 vs 山雅】レポート:PK戦までもつれる平塚の熱い夜。柿本倫明の恩返しゴールも飛び出し、松本山雅が湘南から金星を挙げる。(08.10.13)















