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【第88回天皇杯準々決勝 柏 vs 広島】レポート:広島の連動的なパスサッカーがピッチを支配するも、熱狂の120分間を締めくくったのは、柏の魔法使い。 (08.12.20)

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12月20日(土) 第88回天皇杯準々決勝
柏 3 - 2 広島 (15:04/岡山/8,531人)
得点者:3' 古賀正紘(柏)、6' 佐藤寿人(広島)、13' 菅沼実(柏)、26' 佐藤寿人(広島)、99' フランサ(柏)
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 「魔法使い」と称された偉大なる男が登場したのは、69分のこと。柏にとっては3枚目、最後のカードだった。
 背番号10を背負ったその男は、投入当初はほとんど機能していなかった。ミスも多く、何度もボールを失った。やはり、コンディションに問題があるのだろう。この日の魔法使いは、魔法を使えないのか。しかし、試合のリズムに身体と精神が順応し始めた時、スーパーマンはその本領を発揮する。
 後半ロスタイム、広島の最終ラインがパスを無理につなごうとした、そのスキを彼は見逃さない。ゆったりとしたリズムながら、ボールを奪いにいけない懐の深さ。広島のDFは、容易に飛び込めない。
 ドリブル。緩から急へ、一気にスピードアップ。DFは、ボールにさわれない。
 シュート!
 決まったか。いや、外れた。逆サイドのポストをなめるように、ボールは転がっていった。
 後半終了。しかしこの時、彼のプレーを目の当たりにした岡山・桃太郎スタジアムの観客は、フランサという男の凄みを実感した。

 延長戦。フランサはふらりふらりと、ピッチの中を漂う。この時の柏のフォーメーションを表現するならば、4-4-1+自由人フランサ。しかし、フランサのその自由さが故に、広島DFは彼を捕まえきれない。
 99分。フランサは一気に前に出る。栗澤僚一にボールを預け、リターンを受けると今度は最前線の李忠成へパス。李が身体を張ってボールを出した場所に、フランサが出現した。
 広島GK佐藤昭大が、果敢にアタックする。しかし、そこでフランサは魔法をかけた。
 フワリ。
 GKの果敢な動きを見て、魔法使いは冷静にその逆をとった。浮いたボールは、ストヤノフのカバーをあざ笑うかのように、そのままネットに吸い込まれていった。
 今季のリーグ戦、埼玉スタジアムで見せた驚愕のシュートと比較すれば、衝撃度は少ない。しかし、身体と身体をきしませ、走りに走った両チームの選手たちの中で、この男だけは明白に別次元だった。その異次元の存在感は、確かに組織にとっては諸刃の刃かもしれない。しかし、苦しい状況で光明を見いだそうともがく時、優しく手を差し伸べることができる唯一無二の存在であることも、また間違いない現実だ。

 「普通に、負けそうだった」と山根巌が苦笑するほど、柏は広島に圧されていた。シュート数は13対25。前半は広島のミスに乗じて2得点をあげたものの、それ以降はほとんど決定機もない。「後半は守備が良くなった」と柏・石崎信弘監督は振り返ったが、それは本来のプレッシングサッカーではなく、「キープされるのは仕方がないと割り切って、最終ラインまで相手を来させてもいい」(古賀正紘)と、後ろに人数をかけて守るようになったから。
 それでも、柏は何度も決定機をつくられた。48分、槙野智章のシュートがゴールラインを割ったかに見えた。楽山孝志のシュートは、あと数センチでゴールだった。87分には、槙野の決定的なシュート連発を、GK菅野孝憲が身体を張って阻止。ロスタイムには、佐藤寿人が「ハットトリック達成か」と思わせる強烈なシュートを放つも、小林祐三がゴールライン上でクリアする。
 どれがゴールになっても、おかしくなかった。しかし「勝つ時はこんなもの」と山根が振り返るように、ゴールにはならない。確かに、運は柏にあった。ただ、選手たちが集中を極限にまで高め「石崎さんのために」(古賀)という強い想いをプレーにぶつけたことが、その運を引き寄せたのである。

 広島は、素晴らしかった。森崎和幸や服部公太など、先発から主力4人が出場停止や体調不良で外れ、ジョーカー・久保竜彦は足の負傷でメンバーにも入れない。先発した柏木も、下痢が続き、万全ではなかった。そういう状況でも、ポゼッションと決定機では相手を完全に上回り、2度にわたって同点においついたことは、賞賛されるべきだろう。
 ただ敗因が、前半の「プレゼントしたかのような」(ペトロヴィッチ監督)2失点だということを、忘れてはいけない。どんなに美しいサッカーを披露しても、負けは勝ち点0。その冷たい現実の先にあるものは、誰よりも選手たち自身がわかっているはずだ。
 両チームの選手たちが見せた、美しい個人技、連動性豊かな組織プレー、カウンターの迫力、激しい気持ちと気持ちのぶつかりあい。この試合には、サッカーの魅力が充満していた。その証拠に、この日の桃太郎スタジアムは、悲鳴と歓声が120分間休みなく交錯し、試合後は両チームの選手たちに、スタンドからは惜しみない拍手が贈られたのだ。
 これぞ、プロ。これぞ、サッカー。
 こんな試合を演じられたことを、両チームの選手たちは誇りに思っていい。

以上

2008.12.20 Reported by 中野和也
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