6月6日(土) アジア最終予選
ウズベキスタン 0 - 1 日本 (23:05/パフタ)
得点者:9' 岡崎慎司(日本)
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日本代表が彼らのサッカーを貫けたのかと、実際のところそうではなかった。ウズベキスタンが蹴ってきた事もあるのだが、前半を通して感じたのは、落ち着きのない試合だな、という事だった。相手の運動量もあるのだろうが、パスミスが多く、簡単にボールを失い場面が多すぎた。キリンカップの2試合で見せた素晴らしい戦いぶりと、この試合とを見比べた時に、どちらが今の日本の世界での正しい立ち位置を示しているのか、はっきりと断言するのは難しい。ただ、簡単な言葉である事を承知で書かせてもらえば、それがアジアでの戦いなのだと、そういう事なのだろうと思う。
もちろん日本代表はいつものように自分たちのプレーを出そうとした。試合開始直後から前線に枚数をかけてプレスをかけていく。しかし、ウズベキスタンはプレッシングサッカーに対する最もシンプルな対策であるロングボールによって、プレスを無効化しようとする。岡田監督が試合後の監督会見の冒頭で「なかなか自分たちのサッカーをさせてもらえないところはありました」と述べたほどにウズベキスタンの日本対策は徹底していた。
そんな流れもあったのか、必ずしも日本代表の動きが良かったわけではない。特に日本での直前の2試合でこの大一番に出場するチャンスを掴んでいた中村憲剛は、彼本来が持つ正確なプレーを出せずにいた。ただ、その中村憲は悪いなら悪いなりに責任を果たしていた。前半9分。中央やや右よりの地点でボールを受けた中村憲は「岡崎には試合前からああいう場面の話をしていました。岡崎もオレの事(パスの出し方)をわかっていたと思う」というプレーを見せる。ディフェンスラインの裏にまさに走り込もうとする岡崎慎司に、見事なタイミングでパスを通したのである。
この日、先発フル出場を果たした岡崎は、1試合を通してその正確なトラップでボールを収め続け、前線で起点を作っていた。この9分の場面も自らのタテへと走りこむスピードを殺す必要のないトラップを決め、エリア内へ侵入する。「憲剛さんがいいボールをくれました」と振り返る一連のプレーの仕上げとしてのシュートは、一端はGKにセーブされる。しかし跳ね返ったボールは再び岡崎の頭へ。「あれはついているというのもあります」と苦笑いの岡崎のゴールで、日本がアウェイでの貴重な先制点を手にする。
この日のウズベキスタンは日本攻略の方策として、攻撃の起点であるジェパロフを「右サイドに移し、フォーメーションを少し変えて」(カシモフ監督)いた。前回のホームでの対戦を踏まえた日本代表の、ジェパロフが遠藤保仁、長谷部誠へのファーストディフェンス要員であろうという予測は外れる事となる。中盤の中村俊輔、中村憲、遠藤の3選手で、ジェパロフのディフェンスを含めた試合展開について事前に話し合いをしていたというが、それは試合を進める中で一端白紙の状態となる。そういう点も含めて、ウズベキスタンは日本対策を施してこの試合に臨んでいた。しかし、試合後のカシモフ監督が「早い時間帯での失点によりゲームプランを変更せざるを得なかった」と明らかにしているように、この得点はウズベキスタンにダメージを与える事となる。もちろんカシモフ監督は失点の影響についての具体的な内容にまでは踏み込んでいないが、いずれにしてもどうしても勝ち点がほしいウズベキスタンは、最低限1点を奪わなければならない状況になったのである。
前半を1点のビハインドで折り返したウズベキスタンは、後半に入ると前への圧力を強める。前半同様に日本のプレスに対してはロングボールで無力化。日本の中盤でのパスワークにはアフメドフとカパーゼのボランチコンビが中心となり対抗する。後半開始早々から立て続けにチャンスを迎えていたウズベキスタンは、55分には横パスをカットしてゲインリフへのラストパスを通し、決定機を生み出すなどして日本を攻め立てた。
シリア人のBASMA MUHSEN主審の不安定なレフェリングが試合をさらに難しいものにしていた。ウズベキスタンは後半61分と75分に先発の2トップをそれぞれ長身FWへとスイッチ。ホームの声援もあり、まさにごり押しのウズベキスタン代表がなりふりかまわない攻撃で日本を押し込んだ。試合終了直前の89分には長谷部が退場処分となり、岡田監督もそのあおりを食って退席処分となる。ロスタイムにはクロスバーを叩くシュートを放たれ、ジェパロフのFKが日本ゴールを襲った。
ちゃんとサッカーをしてくれていたキリンカップでの2チームと比べると、レフリーも含めてこのウズベキスタン戦は、内容としては見るものはなかった。ただ、だからといって日本代表を批判しようとは思わない。悲観論者からは「そんな事では世界のベスト4など無理だろう」という声も出てくるのかもしれない。ただ、その立場には立ちたくはない。世界にでれば結果重視の試合はいくらでもあり、ピッチに立つ22人や、彼らをコントロールすべき4人の審判団を含めたあらゆる要素が試合の流れをかき乱す可能性を持つからである。「やっぱり連動してどうこうとか、そういうのはあのジャッジの中では無理。今日の試合はあまり参考にならない」と中村俊が振り返る、そんな試合にあって、一番必要なのは結果である。日本代表は、サッカーにならなかったという批判に対する最大限の反論の根拠として、結果を出したのである。その点についての中村俊が的確な言葉を残している。
「(所属するセルティックの監督である)ストラカンもよく言うんだけど、試合中とかは審判がどういうヤツであれ、もうやるしかない。だから不可解な、理解し難いファウルばかりだったけど、その中でこっちが、いろんなことに左右されず、動揺せずにプレーできて、そのなかで勝点3を取ったことが一番大きい」
キリンカップでの2試合と、このウズベキスタン戦までの流れを100%前向きに捉えれば、国内の2試合では自分たちが追求してきたサッカーをスマートに表現。ウズベキスタン戦では壊れた試合を勝ちに持ち込むタフさを発揮したのだと言う事ができるだろう。もちろん、国内の2試合については「主力が不在だった」とその試合内容を毀損する事が可能だろうし、ウズベキスタン戦では「やりたいサッカーをまったく出せなかった」とこき下ろすことも可能である。ただ、表層上の現実として、日本代表はウズベキスタンの終盤の攻勢をしのぎきり、W杯への出場権を手にした。岡田監督が会見で述べていたように「ワールドカップの出場権を取ったという事で、ようやく我々の目標にチャレンジするスタートラインに立てた」のである。
100%の楽観は、合理的な反省点すら否定するという点で危険であり、前進する意欲をそぎ落とすという観点で100%の悲観論者の意見も意味はない。進歩するために必要なのはバランス感覚を持った評価と、的確な批判である。そうした視点から見れば、国内の2試合にも留意すべき点はあるし、結果を出したこのウズベキスタン戦にも反省すべき点はある。それを見つめ直すための作業として、ここからW杯本大会に向けた1年間は日本代表にとって重要な時間となる。
試合後に岡田監督は「ともかくボロボロにやられてもいいので強いチーム、日帰りでもやるくらいの気持ちでね。ホントにベスト4に行くために何が必要なのかと言う事を選手が実感として持つような試合をともかくしたい」と発言。日本代表の強化の一環として世界の強豪国とのアウェイでの試合が組まれる事になりそうである。そしてそれはつまりW杯本大会への出場権を手にしたからこそ受けられる恩恵であり「我々の目標にチャレンジするスタートラインに立てた」というその現実が、最終予選の意義だったのである。
いずれにしてもウズベキスタンを1-0で下した日本代表は世界への挑戦権を手にした。岡田監督に率いられた日本代表の可能性は、国内の2試合で見せてもらっている。そのサッカーが世界を相手にどこまで出せるのだろうか。そのためにも選手たちは個人としては、各クラブでそれぞれに技を磨く。そして代表チームとして世界を相手に武者修行に出る。その成果が来年の南アで発揮される。すでに何度か見せてくれている可能性が現実のものになるとしたら、それはすばらしいサッカーになるはず。その美しさを想像するだけで楽しみで仕方ない。
いずれにしても、アジアから世界へと連れて行ってくれた代表に、ねぎらいの言葉と共に感謝したいと思う。
以上
2009.06.07 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
一覧へ【アジア最終予選 ウズベキスタン vs 日本】レポート:アウェイでタフさを発揮した日本代表が、ウズベキスタンを下してW杯出場を決める。世界での戦いに向け、貴重な強化の時間を手にする。(09.06.07)















