6月24日（水） 2009 J2リーグ戦 第23節
草津 1 - 1 熊本　（19:31／正田スタ／2,741人）
得点者：40' 後藤涼（草津）、69' 木島良輔（熊本）
スカパー！再放送 Ch183 6/26（金）05:00〜（解説：遠藤雅大、実況：梨子田友和、リポーター：円戸由香）
☆勝敗予想ゲーム
----------

　ホームでの勝利はまたもお預けとなった。前半に後藤涼のゴールで先制した草津は、後半に熊本の交代策に屈して同点ゴールを許してしまう。前半とは一転してゲームの主導権を握られたチームは、流れを引き戻すことができないまま試合終了の笛を聞くことなる。草津は、敗れはしなかったが、ホーム9戦連続で白星を逃した。試合後のスタジアムは行き場のない「怒り」と、深い「ため息」が入り混じり、重苦しい雰囲気に包まれていた。

　ゲームのポイントは、やはり「ポゼッション」だった。前半の両チームは、双方はポゼッションスタイルを誇示するかのように徹底してパスをつないでいく。まるでサッカーゲームのように点と点とを丁寧に結び付けていく作業は、両者のポゼッションサッカーへの強い信念の表れのようにみえた。

　前半は、草津のゲームだった。ボールを支配した草津は、熊本のプレスをパスワークでかわして攻撃の糸口を探る。そして、先制点は右サイドバック佐田聡太郎のミドルフィードから生まれた。40分、カウンターでボールを受けて右サイドを駆け上がった佐田がファーサイドを走る後藤へピンポイントクロス。吸い付くようなトラップでボールを足元に収めた後藤は、喰いつくＤＦを難なくかわして豪快にゴールネットを揺らす。「ニアに走ったヤスさん（高田保則）にＤＦが釣られてファーが空いていた。うまく切り返してシュートを打つことができた」（後藤）。草津は、後藤の4戦連続弾により1点リードで前半を折り返す。

　草津優位のゲーム展開を変えたのは選手交代だ。草津は58分に、熊林親吾、60分に高田がケガで立て続けにピッチを退く。前線のキーマンをアクシデントで欠いた草津は、ポゼッションサッカーに異変が生じ始める。「縦への展開が増えてしまい相手ゾーンでゲームを進められなくなった」（佐野達監督）。そして、ゲームのリズムはしだいに熊本へと傾き始める。

　そのタイミングを見計らったように、熊本は2選手を同時投入してきた。木島良輔、井畑翔太郎という2枚のカードは、疲れの見え始めた草津の守備ラインに次々とプレッシャーを与えていく。「相手のラインが高いままだったので裏を狙わせた。もし自分が草津の監督だったら、（木島と井畑の投入は）嫌だと思う」（北野誠監督）。2人の動きをスイッチにして、熊本は裏へと縦パスを入れるサッカーに方向転換。中盤を省略された草津は防戦一方となり、バランスが一気に崩れていく。

　そして69分、草津にとっては悲しみ、熊本にとっては歓喜の瞬間が訪れた。井畑がヘッドで裏へと送ったボールへの処理に草津守備陣が戸惑ったところを、木島が詰めてゴールへと流し込む。「相手ＤＦが嫌がっているのは分かっていた。裏を狙っていったことで途中出場の役割が果たせた」（木島）。その後は両チームが勝点3を求めて一進一退の攻防を繰り返す。草津は小池純輝の個人技、熊本は2トップへのシンプルな攻撃で決勝点を奪いにかかるが、決定打を出すことができずに90分間を終えた。

　ゲームを通じて両チームの「ポゼッション」を振り返ってみると、全体像が見えてくる。前半は双方が徹底してポゼッションを貫いていた。だが後半は違っていた。自らのアクションでポゼッションを捨てた熊本と、相手の変化によってポゼッションを手放した草津。勝負に徹して戦術を変えた熊本に対して、草津が後手に回った印象は否めない。「ボールを回すことができなくなり、相手のシンプルな攻撃を受けてＤＦの負担が増えてしまった」（佐田）。ポゼッションという拠り所を失った草津は、脆弱な構造体をピッチ上にさらけ出した。

　試合後、佐野監督は「良い流れの時間帯に2点目、3点目を取らなければいけなかった」と、ドローの要因が攻撃にあることを示唆した。チームが掲げる攻撃サッカーで試合を決めたい気持ちは十分に理解できるが、ドローの原因は攻撃だけではく守備にもあることを認識しなければ同じ過ちは繰り返される（現に繰り返されてきた）。後半、熊本が木島と井畑を起用してきてからのチームとしての守備対応は、議論の余地があるだろう。今季のチームは2点以上取らないと勝つことができていない。混戦Ｊ2を戦い抜くには、1−0で勝ちきる強さを身につけることも必要だ。

以上

2009.06.25 Reported by 伊藤寿学