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【J2:第23節 岐阜 vs 徳島】レポート:選手が、クラブが示してくれた『決意表明』。今日の甘美の瞬間をこれからも味わうために。すべてはここから始まる!(09.06.25)

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6月24日(水) 2009 J2リーグ戦 第23節
岐阜 3 - 0 徳島 (19:03/長良川/3,005人)
得点者:17' 佐藤洸一(岐阜)、33' 菅和範(岐阜)、83' 冨成慎司(岐阜)
スカパー!再放送 Ch185 6/25(木)13:30〜(解説:大野聖吾、実況:加藤義久、リポーター:鈴江晴彦)
勝敗予想ゲーム
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勝利というものはこれほどまでに観客を引き付け、盛り上げてくれるのか。この試合を見て、改めてそう感じた。それと同時に、岐阜というチームの進化をはっきりと感じることが出来た。まさに理想的な試合運びと言っていいだろう。理想的な試合運びで、甘美の時を迎える。このチームを取材していてよかったと、今日改めて思うことが出来た。

この甘美の瞬間を迎えることが出来た要因は、立ち上がり15分に凝縮されていた。これは逆に言えば、徳島の直接的な敗因だったと言っていい。
岐阜は立ち上がり、完全にFW柿谷曜一朗の個人技に翻弄された。柿谷が一旦落ちついてボールを受けると、果敢にドリブルで仕掛け、岐阜守備陣のギャップを果敢に突いてきた。開始2分には、柿谷に左サイドを突破され、センタリングを上げられると、最後のFW羽地登志晃のシュートは、DF秋田英義が身体を張ったディフェンスで何とか凌いだ。さらに10分にはゴール前の混戦からMF徳重隆明に決定的なシュートを打たれるが、これもDFが身体を張ってブロック。14分にはMF青山隼のクロスからMF石田祐樹にヘッドで合わされるが、これはゴール左ポストを叩いた。

押し込まれる苦しい展開。しかし、この日は何かが違った。ピンチこそ招いたが、岐阜の選手たちは気迫がこもっていて、決してピンチでもひるまない躍動感あふれるプレーをみせていた。そして開始15分の劣勢を耐え凌ぐと、17分に得た右CKからFW佐藤洸一がまるでお手本のような高い打点のヘッドを叩き込んで、岐阜がワンチャンスで先制に成功した。

ピンチを凌いでワンチャンスをものにする。これは今まで岐阜が相手にやられてきたことだった。それを自分たちが実践したことで、これがチーム全体のスイッチになった。ここから岐阜の選手の動きに更なる躍動感が生まれてくる。2列目を厚くして攻め込んでくる徳島に対しても、積極果敢にDFラインを押し上げてプレスポイントを高くすると、ボールを奪った瞬間に全員が攻撃のスイッチを入れて、複数の人間が関わった厚みのある攻撃を仕掛けていく。21分にはDF秋田のオーバーラップからのクサビを受けたMF染矢一樹が、反転してシュート。これはゴールポストを叩いた。

一方、ビハインドを背負った徳島は、青山をアンカー気味に残し、MF倉貫一毅を2列目に上げ、柿谷との距離を近づけて岐阜のDFラインにプレッシャーを掛けていく。だが、岐阜も怯むことなく、強気のラインコントロールの前にチャンスを作り出せない。反対に青山の周辺に広大なスペースを生んでしまい、そこを岐阜に徹底して狙われてしまう。

岐阜は特に徳島の左サイドを徹底して狙った。左MF徳重が中へ絞ってプレーするが、そこからの『出し入れ』がなかった。つまり徳重が中に入り込む、左サイドバックの藤田泰成が上がるという形を取るも、そこから徳重や柿谷がサイドに落ちたり、プルアウェイの動きなどで、変化を加えられなかったことで、サイドに大きなスペースが生まれてしまっていた。青山もカバーに行きたくても、カバーに行くと今度は中央がからっぽになってしまうため、ケアし切れなかった。

33分の追加点はまさにそのスペースを突いて生まれたものだった。中央でボールを受けたMF高木和正から、右サイドを駆け上がったDF冨成慎司へ展開。冨成から放たれたピンポイントクロスを、GKの目の前で菅が気迫のダイビングヘッド。これがゴール左隅に吸い込まれ、岐阜が最高の形で追加点を奪う。

後半、美濃部直彦監督は藤田と三木隆司に代え、MF麦田和志、DF三田光を投入。突かれていた左サイドの建て直しを図った。だが、これをもってしても、一度狂った歯車は元には戻らなかった。1トップから2トップにするなど、前線に枚数を掛けても、逆に「ボールの取られ方が非常に悪かった。みんなMFラインから下がってこなかった」と青山が語ったように、攻め急いでしまい、ロングボールが多くなり、さらに攻守の切り替えが遅く、岐阜にボールを奪われてはDFラインの前のスペースを突かれ、カウンターで攻め込まれる悪循環を生んだ。
そして83分にはそのカウンターから、左サイドを駆け上がった秋田の縦パスを受けた高木のセンタリングを、冨成がヘッドで押し込んでダメ押しの3点目。これで勝負あり。

試合後、両チームの選手、監督からは異口同音に「立ち上がり15分」と語った。それほど、『あの15分』がこの試合の行方を左右した。徳島にとっては自分たちのリズムを失わせ、「立ち上がりからチャンス作っても点が入らない。そのうち入るだろうという甘い気持ちがあったのではないか」(美濃部監督)、「決められない、守りきれない。すべてが中途半端」(青山)の状態を招いてしまった。

逆に岐阜は、「立ち上がりは徳島の5位の力を感じたが、その中でセットプレーで先制点、クロスから2点目。意図的な攻撃から点が取れたことが良かった。後半、2−0というスコアはセーフティではない。辛抱の要るゲームになる中でカウンターから3点目。徳島に対し、常に先手を取ることが出来た。第1クールでは逆の形でやられていた」と松永英機監督が語ったように、これまでは立ち上がりから果敢な前線からのプレスで、相手を押し込んで何度もチャンスを作っても決められず、カウンター若しくはセットプレーで失点し、リズムを崩して試合を落としたり、同点に終わるという形が多かった。まさに今日岐阜がやっていたことを、相手にやられてきたのだった。

そういう意味でもこの勝利が持つ意味は大きい。まさに今季のベストゲームの1つに入ることは間違いない。そして何より大きかったのが、平日のナイトゲームにもかかわらず、3005人の観衆が詰め掛けてくれたその中で、岐阜はチームとしてのまとまり、ひたむきさ、そして力強さを見せてくれて、さらに甘美な瞬間を届けてくれた。岐阜を初めて見に来た人にとっても、この日のサッカーは至福のものに写ったに違いない。

今、岐阜はみんなが支えなければいけないほど、大変な時期に来ている。クラブも試合前に緊急記者会見を開き、クラブの現状を説明。今の厳しい経営環境の打開策として、観客動員を増やすプロジェクトをクラブ主導で積極的に仕掛けていくことを宣言した。勝負は7、8月。ここでの大幅な集客アップに向け、その決意表明を行ったクラブに呼応するように、選手たちもその決意表明をプレーで、結果で示してくれた。

このクラブ、選手たちの思いが、サポーターの思いが7、8月を盛り上げるために。この勝利が岐阜が全国に向けた『決意表明』となるように、すべてはここから始まっていく。

以上

2009.06.25 Reported by 安藤隆人
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