☆ヤマザキナビスコカップ特集ページ
----------
改めて、アウェイでの小宮山尊信の同点ゴールの意味は大きいと言わざるを得ない。もし、2−1のまま試合が終わっていたとして、川崎Fが2回戦へと進出するためには、まずは勝つ必要があった。そこから得失点差やアウェイゴールなどの条件が検討されることになるのだが、いずれにしても勝つ必要があったのである。
ところが逆転負け寸前の試合は、後半88分の小宮山の同点ゴールによって2−2の引き分けに。これにより、川崎Fは勝ちさえすれば文句なく、また引き分けでも0−0、1−1であれば勝ち上がれることとなる。( /jsgoal_archive/game/2011/20110020060520110605.html )
精神的に優位な状況で戦えるのは朗報ではあるのだが、その一方で現状の川崎Fは厳しいチーム状況に置かれている。前節の新潟戦に引き続き、主力メンバーの欠場が予想され、チームの大幅な若返りは必至である。
そうしたチーム状況を受けて小宮山は「(選手が入れ替わった前節の新潟との)試合には負けましたが、完敗したわけでもない。新しい選手が出てきたことで、マイナスの部分もあったが逆にできているプレーもあった」と述べ、一定の手応えがあったのだと明かしている。
たとえば、初先発したルーキーの大島僚太は公式戦のプレッシャーを実体験できたことを前向きに捉えるべきであろう。また、4年目の田坂祐介は落ち着きのあるプレーぶりで試合に変化をつけており、その実力を示している。同期の大島に変わり途中交代によってプロ初出場を果たした福森晃斗は、田坂に代わりCKを任されるなどその左足の精度が買われていた。
出場停止となっていた井川祐輔に代わりセンターバックとして先発した、こちらもルーキーの實藤友紀は大卒選手に求められる即戦力としての能力の高さを見せる。3年目の登里享平は、今季ここまで見せてきた彼らしさを思う存分に発揮し、局面での仕掛けによって新潟を押し込んだ。ケガの矢島卓郎に代わり先発したチーム内得点王の小林悠の実力は言わずもがな。多くの若手選手が出場した新潟戦は、図らずも川崎Fの次世代選手の力を示す結果となっていた。
欠場を余儀なくされた主力メンバーの回復具合が気になるところではあるが、仮に彼らが戻れずとも、相馬直樹監督が「誰が出てもやれるようにしてきた」と述べるチーム作りはできている。あとは、第1戦がもたらした精神的な余裕に胡坐をかくことだけは戒める必要がある。「前の試合(アウェイでの第1戦)のことを考えず、目の前の試合を頑張ります。大会は違いますが、(リーグ戦で)新潟に負けているので、勝って喜びたいと思います」と述べる菊地光将のメンタリティで臨むべきだろう。
昨年のファイナリストである広島は、川崎Fがそうであるように決勝で負けた悔しさを心に刻み込んで雪辱を期しているはず。だからこそ、絶対に得点が必要なこの試合では、攻撃に力をそそぐことになるはず。ポゼッションして、丁寧に試合を組み立てる一方、佐藤寿人と李忠成の動き出しに合わせて正確なロングフィードを入れてくる広島の戦いを抑えこむにはチーム全員が一体となったコンパクトな戦いを続けるしかない。そして、一瞬の隙を突かれないよう「集中を切らさない」(菊地)という戦いを続けるしかない。そのためにも、川崎Fにとって相性のいい相手であるという過去の戦績に左右されない緊張感が必要となるだろう。
ヤマザキナビスコカップ2回戦への進出をかけた大事な試合ではあるが、それよりもなによりも、まずは等々力でのホームゲームである。スタジアムを訪れたサポーターの前でしっかりと勝利を手にし、喜びを分かち合える試合を見せてほしいと思う。そしてそれは、結果としてヤマザキナビスコカップの勝ち上がりにつながる。精神的な余裕を持ちつつ、しかし1試合目の結果は忘れて臨みたい試合である。
以上
2011.07.26 Reported by 江藤高志













