スカパー!生中継 Ch181 後04:50〜
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ミックスゾーンに現れた水沼宏太は開口一番、「良かったぁ」と漏らし、リーグ戦9試合ぶりの勝利を心から噛み締め、久々に愛くるしい笑顔を浮かべた。安堵した瞬間に思わず漏れた言葉からは、勝利に見放された約2ヶ月間の地獄のような日々の苦しみが透けて見えた。
ホームのグリスタで0‐1で敗れた熊本に対し、熊本のホームに乗り込んだ一戦で同じスコアでリベンジした栃木。前々節、湘南に屈辱的な敗戦を喫してから短期間で立て直しを図って掴んだ勝点3は、10にまで拡がった3位・札幌との勝点差を7に縮める価値あるものとなった。
「昇格は諦めていないけど、連敗していたので立て直すきっかけを作らないといけない。昇格を見据えるよりも目の前の試合に集中して、いいサッカーをすることを第一に考えたい。そうすれば先に繋がる」と渡部博文が言えば、松田浩監督も「泥臭くても、1‐0でも勝つことを、1試合1試合気持ちを入れてやっていきたい」。依然として栃木は昇格に向けて厳しい状態にあるが、絶望的な状態からは抜け出せた。一方、草津、水戸と北関東勢に2連敗した千葉はどん底に陥り、ついには最終手段である監督交代という“劇薬”を使わざるを得なくなった。昇格争いに再び食い込みたい6位・栃木と、至上命題のJ1昇格に向けて3連敗は是が非でも避けたい5位・千葉。首位を懸けて激突した前回の対戦は2‐2で決着した“イエローダービー”は、今回も白熱必至の好ゲームになるだろう。
「前半に関しては非常に良かった。全てにおいて主導権が取れていた」
前節の熊本戦の前半は、松田監督も納得の内容だった。栃木のコンセプトであるハードワークを体現し、球際で激しく行けたことでセカンドボールを尽く拾えた。セカンドボール奪取率を上げたのは、熊本戦のテーマにしていた「執念」に他ならない。絶対に負けられない勝利への執着心が出足で勝ることと、的確な予測を可能にした。「上手くリアクションと予測ができれば負けないし、また勝てる」と渡部が言い切るのは、千葉戦の勝敗の鍵もセカンドボールが握るからだ。
短期間で戦術を変更するには極めてリスクが高いため、監督が交代しても千葉はやり方を変えずに栃木戦に挑むだろう。今季、貫いてきた1トップにロングボールを当て、そのセカンドボールを2列目が拾い、深井正樹と米倉恒貴の個の力を生かして攻撃を仕掛けるパターンに大幅な変更はないはずだ。それだけに、栃木も千葉も空中戦で競り負けないことに加え、セカンドボールを物にできるかどうかが、主導権争いのポイントになる。草津にも水戸にも運動量で凌駕され、セカンドボールワークで後手に回った千葉。全体をコンパクトに保ち、活動量を増やし、同じ失敗を繰り返さないようにしなければならない。対する栃木は熊本戦と同じ作業を繰り返せれば、コンパクトな陣形を築いて粘り強く戦えれば、勝機は手繰り寄せられるはずだ。
「ここ最近、目指していたアグレッシブさが出ていた」と松田監督が言うように、熊本戦では攻撃に以前の迫力が戻って来た。悪循環に陥っていた時には2トップへのサポートが不足していたが、前節は水沼と河原和寿の両ワイドMFに加えて、ボランチの高木和正も前線に顔を出してサポートした。パウリーニョが負傷離脱してからポジションを一列下げ、中盤の底でボールをさばく役割が多かった高木だが、本来はゴール前で輝く選手。バランス感覚に優れた本橋卓巳がボランチに復帰したことで、高木は安心して攻め上がれるようになり、水沼、河原と3人の関係性で相手を撹乱した。攻撃に割く人数が増えたことで、不振が続くリカルド・ロボへの支援体制は整った。今は誰がゴールを取ってもいいが、エースが取れれば尚いい。異次元の2ゴールを叩き出した前回のように、ロボにゴールが生まれれば千葉からの初勝利も現実味を帯びて来る。
栃木のファン・サポーターは飢えている。8月21日のFC東京戦以来、グリスタで挙げられていないリーグ戦の勝利に、歌えていない「県民の歌」を歌うことに。90分、笛が鳴るまでピッチ内外で誰もサボらずに戦えれば、待ち望んでいる結果は得られるはずだ。「県民の歌」を逆襲の号砲とするために、5連戦の真っただ中だが後先考えずに死に物狂いで千葉戦を取りに行く。
以上
2011.10.22 Reported by 大塚秀毅













