11月19日(土) 2011 J1リーグ戦 第32節
浦和 0 - 0 仙台 (14:03/埼玉/30,891人)
スカパー!再放送 Ch185 11/21(月)前04:20〜
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残留争い一騎打ちの相手、甲府との勝点差は試合前まで2ポイント。負けたら順位をひっくり返される可能性があったが、最低でも勝点1を取っておけば仮に甲府が勝っていても勝点で並ぶだけ。得失点差の勝負になると現実的には“勝点1差”があるような状況だったため、この試合は最低でも引き分けで終えることが責務となっていた。
勝点3を狙いながらも、勝点ゼロだけは是が非でも避けなければいけない。リスクをどこまで負うべきか。この試合はそういう意識のバランス取りが難しい試合だったが、選手たちは共通意識を持って見事に難しいタスクをこなしてみせた。そして、甲府が星を落としたという事実が、この勝点1の価値をさらに高めている。GK加藤順大も「勝つのが一番だったけど、最低限の勝点1を取れたことは、こういう状況では非常に大きかったと思う」と力を込める。
惨敗に終わった磐田戦で浮き彫りになった問題点に対し、改善に取り組んだ跡がしっかりと見られたことも大きい。1つは最終ラインからのビルドアップの部分。磐田戦ではここがネックとなり、苦し紛れのパスを拾われて攻撃を受けるという負のサイクルにはまってしまったが、仙台戦ではスムーズにボールが回っていた。
もちろん磐田との違いは考慮しなければいけない。2トップを中心に前から連動してプレッシャーをかけてきた磐田に対し、仙台はブロックを作って待ち構える傾向が強かった。手倉森誠監督が「勝ちたいというより、負けたくないという思いの方が強いし、負けないためには点を取られたくないというのがこのチームには浸透している」と語るように、仙台はバランスを崩さないという意識が強いため、“ボールを奪いにいく”というよりは“入ってきたところで取る”という形が基本。そのため、後ろで回すだけならそんなに難しくなかったという事実はある。「相手が引いていて、プレッシャーがそんなにかかっていなかったというのはある」と鈴木啓太も語っている。
ただ、それとは別に浦和がビルドアップをスムーズにするための工夫を行っていたことは評価すべきだ。浦和はビルドアップする際に鈴木が最終ラインに落ちることが多かった。そうすることが何が変わるかというと、擬似的に3バックになることで相手の2枚(2トップ)に対して数的優位を生み出し、ボールを回しやすくなる。そして、その動きに合わせて柏木陽介、マルシオ リシャルデスが落ちて擬似ボランチになることで、さらに真ん中の優位性が確保される。そうすると、エスクデロ セルヒオが「啓太さんがバランスよくセンターバックの間に入ったり、陽介が下がってきてくれたりしたのがサイドバックが高い位置を取れた要因だと思う」と振り返ったように、今度は両サイドバックが高い位置を取れるようになって、幅を使ったボール回しができるようになるという具合だった。
ボランチが落ちてビルドアップに幅を持たせるというやり方は広島が得意とする方法で、ヤマザキナビスコカップ決勝では鹿島の柴崎岳がたびたび見せていた。試合後、鈴木にあの動きは意図的だったのかと聞いてみたところ、「それもプレッシャーをかけずらくする1つの方法だった」と力強く肯定していた。今週の練習ではサイドバックにどうやって斜めのパスを通すかというのがポイントの1つになっていたが、練習の成果がしっかりと出たことは、選手たちの自信につながるという意味でも好材料だ。
もう1つの課題、アンカーの両脇を使われた際の対処でも修正の努力が見られた。ここでも磐田と仙台のやり方に違いがあったことは考慮しなければいけないが、ポジショニングを強く意識したリスクマネジメントが改善されていたことは間違いない。とりわけ、鈴木、坪井慶介の存在感が際立っており、最後列からチームを見ていたGK加藤は「今日は坪井さんがチームのバランスを整えて、啓太くんと坪井さんが声を出したり、経験を出したりしてチームがじれないようにしてくれた」とベテランの働きを称えていた。
仙台は「負けたくないメンタリティをみんなが持っているからこそ、守備の意識が高い」(手倉森監督)ので、攻撃でもリスクをあまり冒さなかった。ボール奪取能力が高い富田晋伍、角田誠のレギュラーボランチ2枚を欠いた影響が出たのだろう、ボールを奪った勢いで前にいくという形も少なかった。ボランチのところでボールを捌く場面もあまりなかった。「アウェイで慎重にやった成果が無失点だったと思う。決定機が少なかったのは配給、絡みがもう少しあればということになると思うが」とは指揮官のボランチ評だ。
一方の浦和も思い切った攻撃を仕掛ける場面はそれほどなかった。それは今回が負けられない試合だったことに加え、磐田戦の反省もある。前節は手詰まりになったところでも強引に仕掛けて悪い形でボールを失い、カウンターでピンチを招くというのを繰り返した。今回はその二の舞を避けることを念頭に置いて戦っていたため、真ん中をこじ開けるパワーは物足りなかったかもしれないが、その代わりに相手に付け入る隙も与えなかった。そういう意味ではイメージ通りのプレーができていたと評価していいのではないか。「もう少し工夫があってもよかったかもしれないが、リスクを冒しすぎてカウンターを受けるのは避けたかったので、これを継続できれば」と鈴木も話している。
結果はスコアレスドロー。シュート数は浦和の9本に対し、仙台は5本。この試合をエンターテイメントとして捉えるなら、凡戦だったと言えるかもしれない。水たまりができた後半のピッチコンディションが試合の興を削いだ面もあった。
しかし、互いのプレーの意図するところを汲み取り、1つの局面で何を狙っているのか、何を考えて動いているのかを見ていけば、静かに熱い戦いが繰り広げられていた。両チームとも、ある程度はそれぞれ狙い通りに進められていたという点で言えば、見応えのある試合だった。とりわけ、浦和にとっては内容に手応えを感じ、最低限の結果も残せたという意味でも有意義な一戦となった。
以上
2011.11.20 Reported by 神谷正明
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