11月19日(土) 2011 J2リーグ戦 第36節
鳥取 1 - 5 F東京 (17:03/とりスタ/5,746人)
得点者:23' 森重真人(F東京)、51' ルーカス(F東京)、70' 谷澤達也(F東京)、80' 鈴木達也(F東京)、85' 福井理人(鳥取)、90'+2 上里一将(F東京)
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0‐4から遅まきながらも1点を返し、懸命に食らいついていたが、後半のアディショナルタイムに、力でねじ伏せられるような失点を喫する。二度のシュートをGK小針清允が懸命にセーブしたものの、力及ばず、最後は完全にフリーの上里一将に蹴り込まれた。J2昇格1年目のシーズン終盤、鳥取はあらゆる面で、J1レベルのクラブとの大きな実力差を見せつけられた。
大きな注目を集める一戦で、鳥取は思い切った策を打ってきた。先発メンバーの顔ぶれを見る限りでは、これまで同様の4‐4‐2かと思われたが、実際には、本来ボランチの服部年宏を3バックの一角に配し、中盤を厚くした3‐4‐2‐1。これまで、得点が欲しい後半にスクランブルで何度かやったことのある3バックを、初めてスタートから採用した。天皇杯3回戦から中2日のハードスケジュールで、テストしたのは試合前日、短時間の紅白戦のみ。松田岳夫監督も「リスクのあるチャレンジ」と語った布陣変更だった。
松田監督は布陣変更について、攻撃面では「後ろが3人のぶん、前に人をかけやすく、広くポジションを取ることで、ポゼッションをしやすくなる。両サイドが同時に高い位置を取れるので、より攻撃的にゴールを目指せる」、守備面では「後ろの人数を減らすことで、中盤のプレッシャーを、より強くかけられるようにしたかった」という狙いを持っていた。ボール支配率で圧倒されたため、攻撃に出る時間は限られたが、F東京のパス回しに落ち着いて対応。立ち上がりの出来は、決して悪いわけではなかった。
だがその守備が、試合後に選手が口々に「差があった」と振り返った、個の力によって崩される。23分、梶山陽平のドリブル突破でゴール近くまで侵入され、パスを受けた谷澤達也に対応した水本勝成がファウルで倒し、ゴール正面でFKを与えてしまう。鳥取は7人の人壁をはじめ、全員がペナルティーエリア内に戻って対応したが、森重真人に右スミに蹴り込まれ、先制を許した。
34節で栃木、天皇杯3回戦では清水に、いずれも0‐5で敗れるなど、ここ数試合は大敗が目立っているが、そこまでの過程で先制、あるいは同点として、流れを変えるチャンスはあった。この日も、余裕の出てきたF東京の攻めを食い止めて2点目を防ぐと、42分に吉野智行−美尾敦−実信憲明とつないで左サイドを突破。ビッグチャンスだったが、実信の二度にわたるシュートは、いずれも守備網に阻まれ、同点とはならなかった。
追撃の機会を逸して迎えた後半は、徐々に守備の対応が遅れ始め、失点を重ねていった。51分、ゴール前中央でパスを収めたルーカスに、鋭い反転から蹴り込まれて2−0とされると、70分、80分にも失点。いずれも対応する選手はいたものの、個人技で突破されてゴールを割られた。
またしても大量失点となったが、85分に挙げた1点は、わずかながらもチームに勢いをもたらした。森英次郎がインターセプトから左サイドを破り、2人に囲まれながらも突破。ニアサイドに飛び込んできた岡野雅行のシュートをGK塩田仁史がはじいたところを、詰めていた福井理人が蹴り込んだ。良い判断と正確な技術を発揮した森、がむしゃらにボールを追ってチームを鼓舞した岡野など、交代選手が絡んでの、鳥取のファン・サポーターにとっては救いのゴール。しかし、勝敗の行方を考えれば焼け石に水で、最後は冒頭のように、ダメ押しの5点目を献上した。
松田監督は試合後、「1対1の強さでFC東京に大きく上回られた、そこがすごく表れたゲームだと思います。チームの総合的な力を高めると同時に、個人の力を高める必要がある、それも強く感じた」と振り返った。後半は連戦の疲労が隠せず、チームのベースである前線からの守備、ハードワークがままならなかったことが大きく影響したが、加えて印象的だったのが、強烈な個の力のアドバンテージ。3点目はロベルト セザーの突破に複数の選手がひきつけられ、中央の谷澤への対応が遅れた。4点目はサイドでの1対1、5点目は2対1を破られた末の失点で、個々のレベルの少しずつの綻びが最終的に、組織の大きな乱れにつながっていた。
今季の残り2試合に向けては、一定の収穫もあったが、長期的な視野で見ると痛感させられたのは、組織も、個の力も、それを支えるクラブ全体の力も、もっともっと伸ばしていかなければ、J1昇格を争うレベルに到達することはできない、という事実。昇格の歓喜とともに、1年でJ2を去っていくF東京からの、強烈なレッスンだった。
以上
2011.11.20 Reported by 石倉利英
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