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【J1:第33節 川崎F vs 横浜FM】レポート:等々力でのラストゲームを自ら飾るジュニーニョの2ゴールもあり川崎Fが快勝。涙の惜別試合となる。(11.11.27)

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11月26日(土) 2011 J1リーグ戦 第33節
川崎F 3 - 0 横浜FM (14:03/等々力/19,972人)
得点者:49' オウンゴ−ル(川崎F)、77' ジュニーニョ(川崎F)、84' ジュニーニョ(川崎F)
スカパー!再放送 Ch181 11/30(水)前08:00〜
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美しさとスピード感とを兼ね備えたパスワークの結末として、ゴールネットが揺れたその刹那、思わず声を出してしまった。そして広がっていく喜びの輪を視線で追いながら思った。サッカーの世界で、決めて欲しい時に決めてくれる選手を見た時、いつもそうだったように。「持ってるなぁ」と。

試合後の会見で相馬直樹監督が「これを勝ちたいというゲームをことごとく落としてきている」と自らが率いるチームについて述べる通り、今季の川崎Fは勝負弱かった。8連敗中の4試合連続逆転負けや、ファン感謝祭直後の神戸戦。陸前高田市の子どもたちを迎えての新潟戦などなど。勝ち切れなかった理由は決定力不足で、実際に例年の同時期と比較すると総得点が10点ほど減少している。そしてその原因のひとつがジュニーニョの不振だった。

32節を終えてわずかに6得点。チームワーストの8連敗が始まった7月23日の新潟戦からジュニーニョは6試合連続で無得点試合を記録するなど、夏に強いこれまでの面影は消え去った。全盛期時代のジュニーニョを知るものとして、裏に抜け出したドリブルを追いつかれる姿は、一時代の終わりを感じさせるに十分なものだった。だからこそ、ある程度の覚悟はできていた。しかし、それが現実のものになる事が信じられなかった。

11月24日午前。ジュニーニョとの契約が今季で満了する旨のリリースが出され、この試合の意味が定まる。ジュニーニョに点を取らせ、7月16日以来勝てていないホームでのリーグ戦で勝利する。そしてその相手は横浜FM。0−4の完敗を経験させられたこともある強敵である。恐ろしいほどに舞台は整っており、これほどまでに勝利を渇望する試合はそうなかった。そしてだからこそ、不安に駆られたのである。本当に勝てるのだろうかと。

勝ちたい気持ちがあり、勝てなかった経験を持つ川崎Fにそうした疑念が皆無であるはずがない。そして横浜FMは、0−4のワンサイドゲームと同じ手法で川崎Fに揺さぶりをかけてきた。猛烈なプレスである。

柴崎晃誠が「前半はセカンドボールを拾われていてリズムをつかめませんでした」と話すその理由のひとつは、「前半にタイトに来ていた」(山瀬功治)という横浜FMの激しい運動量にあった。彼らはそうする事で川崎Fの自由を奪おうとした。また川崎Fの守備ブロックに対する研究の成果もあるのか「前半は中村俊輔とか兵藤慎剛とかが自分たち(川崎F)のブロックから出てボールをもらっていて、誰が行くのかがはっきりできていなくて後手を踏んだ所がありました」(田坂祐介)という状況もあったという。そんな前半について田坂と田中裕介が同じような印象を残している。それが「連敗しているときは前半で失点している」(田坂)、「連敗してたときはあそこで点を取られていました」(田中裕介)というもの。つまり彼らは現実感のある危機感の中で戦っていたのである。ただ「ピッチの中では我慢しようという声が出て」(柴崎晃誠)おり、集中を切らすこと無く前半を乗り切る事に成功する。

サッカーとは一方的に殴り続けられることがないスポーツである。どれだけチーム力に差があろうとも、かならず1試合の中でペースを奪い返す時間帯が出てくる。そして川崎Fにそれをもたらしたのが前半の踏ん張りだった。

相馬監督は無失点で前半を折り返せたことを「よく前半を0で抑え、折り返せたなと思います。それでハーフタイムに選手たちも落ち着いて、後半に入れました」と評価。後半からは中村俊輔や兵藤に対する守備を整理し「ボランチが出ていくようになって、守備でもはめられるようになりました」と田坂が指摘する状態へと好転する。ジュニーニョと小林悠のポジションをタテ関係に変更させたことや、前半に横浜FMが足を使いすぎた事を含め、後半は川崎Fがボールを支配する時間帯が増えていく。そしてその結果として、49分の先制点が、オウンゴールではあるが生まれるのである。

相馬監督が「後半はこちらの流れになったのかなと思います。そういう中で、最初のゴール、ラッキーな部分はありましたが、あのゴールが非常に大きかったと思います」と話すこのゴールの効果は、高いリスクを取って行われざるを得ない横浜FMの反撃となって現れる。横浜FMにしてみれば「格下」の川崎Fには負けられない、という思いがあったとしておかしくはない。そして、そんな前掛かりの戦いが川崎Fにチャンスをもたらす。

後半77分。中村憲剛が小林祐三のパスを引っ掛けたボールが小林悠の足元に転がる。中村憲剛は一気に前方のスペースへと飛び出して小林悠からのパスを引き出す。ミスを取り返そうとした小林祐三が意地を見せるが、引っ掛けようとしたボールは再び中村憲剛の足元へ。この間に絶妙な動き出しを見せていた小林悠に中村憲剛から絶妙なスルーパスが出る。エリア内に入り込んだ所でボールを受けた小林悠は、アプローチしてきた中澤佑二を背後に感じながらダイレクトでこれをはたく。小林悠には走りこむジュニーニョが見えていて、狙っていたパスだったのだという。流れるような攻撃の終着点で、大観衆の視線を一心に浴びながら、ジュニーニョが事もなげにゴールを決めた。小林悠が「同じ絵が描けて、気持ちが一致した最高のゴールでした」と自賛するゴールはこうして生まれた。

中澤佑二は「1点目は仕方無い。OGは誰もがするもの。責められないし、責めてはいけないと思う。問題はその後。2失点目が悪かった。みんなで攻めて、誰も戻って来なかった」と悔しがる。しかし、2点目を失ってしまっては後の祭りである。川崎Fにとって、ゴールを取るべき唯一の人であるジュニーニョのゴールで川崎Fのリードは2点へと広がり、等々力の雰囲気は盛り上がりの頂点に。横浜FMは覚悟していたリスクをさらに増やさざるを得なくなる。

84分の川崎Fの3得点目、すなわちジュニーニョの2点目は、リスクテイクしていた横浜FMのCK崩れからのカウンターによって決まる。田坂が、「球際で浮かせてかわそうとしているのがわかったので、少し足を浮かせたらいいところに当たりました」と話すプレーにより中澤からボールを奪取。無人のスペースをドリブルで突き進んだ。小椋祥平がカバーに入っていたこともありやさしいパスではなかったが、浮き球のラストパスをジュニーニョに。ダイレクトで打てなかったジュニーニョはこれをトラップして切り返し、小椋のマークを外すとゴール右隅に流しこむのである。

この日2度目のゴールパフォーマンスのダンスは2人の息子さんに3年ほど前からせがまれていたもの。その約束を果たすべく、きっちりと等々力での最終戦で2ゴールを決めたジュニーニョの活躍もあり、川崎Fが3−0の勝利を手にした。「泣かないんだと繰り返して言い聞かせていたんですが、抑える事ができませんでした」と、ヒーローインタビューで涙をこらえきれなかったジュニーニョの花道を、チームメイトやスタッフ、そしてサポーターの協力も得て川崎Fが見事に飾る事となった。

プロ選手である以上、契約満了はいつか来る道である。ただ、それが「寂しすぎる」と話す小林悠は「今日は一生忘れられない試合になりました」としみじみと述べていた。そして、その想いは、この試合会場に駆けつけた2万人に迫る観客が等しく感じたものだったに違いない。それにしても、である。この試合がジュニーニョにとっての等々力でのラストゲームになる事が、信じられない。もちろんいつかその日が来ることは覚悟はしていたが、まさかその日が本当に、そしてこんなに突然に来ることになるとは思っていなかった。なんとなく、彼はこのクラブに居続けるのだろうと思っていた。同一クラブで9年間を過ごす外国人選手というものの稀有さが、そう思わせるのかもしれなかった。

役者が点を決めるというこれ以上にない勝ち方を見せながら、誰もが心に引っかかるものを感じた、そんなホーム最終戦となった。

以上

2011.11.27 Reported by 江藤高志
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