スカパー!生中継 Ch179 後03:20〜
☆totoリーグ第4ターン開催中!
----------
“大義”なき一戦である。
優勝を争う上位陣は三者三様に3ポイント獲得を目指し、最後の最後までしのぎを削る。(得失点差はともかく)J1残留争いにもまだ終止符は打たれていない。一方、ヤマハスタジアムでは中位同士のカードだ。共に他会場の結果次第では一桁順位、さらには賞金圏内である7位も見えてくるが、仮にこのゲームを落とした場合でも順位に大きく響くことはない。また、試合当日の天気予報は雨。試合後に予定されている磐田のセレモニーも初冬の冷たい雨に台無しにされるかもしれない。
早々にネガティブな要素ばかりを並べてしまったが、この試合が単なる“1/34”かと言えば、それは違う。磐田の今季はこの一戦で幕を閉じ、川崎Fも天皇杯を残しているとは言え、新体制で臨んだ初めてリーグ戦の区切りを迎える。両者にとって今季リーグ戦の総決算となることは間違いない。
もっとも、冒頭には“大義”と挙げたが、サッカーをする上で何らかの“理屈”が必要なのか、と思う。今週、磐田の練習風景を見た際にも改めて感じた。川口能活が顔面でシュートを防ぎ、今節出場停止の前田遼一がビルドアップにもたつくDFラインに厳しい口調でパスを要求する――。両選手のみならず、連係が噛み合わなければインターバルの際に選手同士で話し込む場面も見られた。
『上手くなりたい』という“欲求”を絶えず持っている――。
以前、磐田・コーチングスタッフの一人に、サッカー選手の“本質”をそう聞かされた覚えがある。
繰り返すが、この試合に“大義”はない。
だが、“モチベーション”という空虚な横文字も、“プロとして――”というステレオタイプな“煽り”とも無縁だ。クラブとして、選手個人として、目指すゴールはここではないのだから。それはアウェイチームにも当てはまるだろう。
以上、前置きが長くなったが、両クラブを応援するサポーターにとって観戦を躊躇する理由はどこにもないはずだ。幾多の思いが交錯する節目の試合をスタンドで見届ける価値は十二分にある。
さて、このゲームのみどころは様々ある。磐田でのラスト采配となる柳下正明監督はもちろんではあるが、今季限りでの契約満了が発表されているジウシーニョにもやはり注目が集まる。“ジウ”または“ジウソン”の愛称で親しまれた背番号8にとってこの試合が磐田でのラストマッチだ。08年から4年間在籍し、力強いドリブルとどこまでも献身的なチェイシングで多くのサポーターに愛された特別な存在だった。10年のヤマザキナビスコカップ優勝に貢献した選手に一人でもあることを改めて説明する必要はないだろう(同大会5得点をマーク)。今節ピッチに立てば磐田でのリーグ戦通算試合数が98となり、これまで磐田に在籍した外国籍選手で歴代最多のドゥンガ(※95年〜98年まで在籍)の99に次ぎ、歴代2位となる。また、さらに思い起こせば09年夏に大怪我を負い、長いリハビリを経て臨んだ10年春の復帰戦でいきなりゴールを決めたのもヤマハスタジアムでの川崎F戦だった。
「この4年間、チームメイトやクラブ関係者のみなさん、サポーターのみなさん、そしてメディアのみなさんと様々な思い出を作れました」。クラブが契約満了を正式発表した先月30日、心境をこう語っている。感慨深げだった。4年間声援を送り続けたサポーターへ向けては「感謝の思いに尽きます」と目を潤ませた。最後は報道陣に対し日本語で「アリガトネ」と締め括ると、感傷的な雰囲気となることを制するように、「・・・まだ数日はここにいるんだから!(笑)」と弾けた笑顔を見せた。
前述した通り、前節警告を受けた前田遼一は累積警告により出場停止。先月下旬のロンドンオリンピックアジア最終予選で右もも裏を肉離れし、後日全治3週と診断された山崎亮平も欠場する。前線の駒は限られており、新人最多得点(13得点)にあと1点と迫っている金園英学と共に攻撃のリズムを生み出すことを求められる。強い責任感を持ったブラジル人アタッカーのラストプレーはそのまま勝利への道標となる。
対するアウェイ・川崎Fは前節磐田が落とした神戸戦にヒントを得ているはずだろう。今季リーグ最終戦を勝利で飾るためにはロングボールを交えながら縦への“圧力”で押し切ってしまえばいい。相手は前節、大久保嘉人、ポポら俊敏性に優れた神戸アタッカー陣に手を焼き、1-3と敗戦。ロングパスでスペースを突く+そのセカンドボールを狙う、という徹底したスタンスに序盤から後手に回っている。また、前節右もも裏を痛めて前半途中で交代した加賀健一が後日肉離れ(全治1、2週)と診断され、この試合の欠場することも追い風となるだろう。磐田でも屈指のスピードを持つ加賀の不在はDFライン裏のスペースにリスクが生まれやすくなることを意味する。この試合が川崎Fでの最後の試合となるジュニーニョを中心に、田坂祐介、山瀬功治らで相手の弱みを効果的に突きたい。前節・横浜FM戦と同様に、鋭く、スピーディーな攻撃を展開できれば自ずとゴールに近づけるはずだ。
この試合に“大義”はない。
だが、ピッチの至るところで幾多のドラマを見ることができるはずだ。3月の東日本大震災により、日程の大幅な変更を余儀なくされた異例のリーグ戦が今、フィナーレを迎える。オフシーズンに惜しまぬよう、スタジアムの空気を存分に楽しみ、それぞれの”ラストマッチ”をしかと目に焼きつけようではないか。
以上
2011.12.01 Reported by 南間健治













