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【J2:第38節 鳥栖 vs 熊本】熊本側レポート:勝ちきれず引き分けたものの、見応えのある展開となった最終戦。上のステージへ旅立つ鳥栖を見送った熊本は、この日の気持ちを忘れずに糧として後に続きたい(11.12.04)

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12月3日(土) 2011 J2リーグ戦 第38節
鳥栖 2 - 2 熊本 (12:33/ベアスタ/22,532人)
得点者:19' 大迫希(熊本)、56' 早坂良太(鳥栖)、70' 矢野大輔(熊本)、76' 木谷公亮(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch183 12/4(日)深02:00〜
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鳥栖側レポート

「最終戦だから惰性で行くのではなく、最終戦だからこそ、そしてほぼ(鳥栖の)昇格が決まっているアウェイの状況。そういうテンションの中でやるには、選手たちに危機感を持たせるという狙いがあった」
今シーズン初めて、スタートから3バックの布陣を採用した熊本の高木琢也監督は、試合後の会見でそう意図を説明している。加えて鳥栖の攻撃への対応策と「攻撃では、できるだけ自分たちの色を出せるような形を模索」した末の決断。本来の4−4−2の形でも両サイドバックの攻撃参加がカギを握る熊本にとって、縦への力を持つ片山奨典と市村篤司を最終ラインの1列前に配するというチョイスは、場合によっては5バック気味になる可能性もはらんでいたし、実際にゲームの中ではそうした形に押し込まれる時間帯もあったが、結果的には奏功したと言えるだろう。

19分、原田拓からのスルーパスを受けた片山がドリブルで切れ込み、激しいアプローチを受けながらも粘って切り返し中央へ。これを受けた大迫希が、今季5点目となるゴールを決めて熊本が先制する。この場面を迎える前にも、3分の市村のファーストシュート、11分の大迫のドリブル突破など、大きなサイドチェンジなどを端緒にした攻撃を見せており、熊本は3−4−3を採った狙い通りのワイドな形を作っていた。1点リードしたあとの試合運びについては、今シーズンを振り返れば課題があり、追加点を狙いたい気持ちと追いつかれたくない気持ちの葛藤からバランスを崩すような展開もあったものの、この試合では積極的に追加点を取りに行く姿勢が見て取れた。

だが鳥栖もさすがに昇格をたぐり寄せただけの粘り強さを発揮する。56分、中央から左へと展開したボールを磯崎敬太がワンタッチでゴール前へ送ると、熊本センターバックのちょうど真ん中に飛び込んだ早坂良太が頭で決めて同点。これ以降、鳥栖は藤田直之、岡本知剛の両ボランチがフリーで前を向いてプレーする場面が増え、61分には豊田陽平と金民友が漫画のようなワンツーの繰り返しで持ち込むなど押し込んだ。
しかし熊本も65分頃までの流れの悪い時間帯をしのぐと、70分、左CKの大迫からのボールを矢野が頭で合わせて勝ち越し。これまでセットプレーからの得点が少なかった中、「当たっている感があった」と話した矢野が、古巣の昇格を祝う1発を沈めた。

だが鳥栖もこのままでは終わらない。76分、左CKからの熊本のクリアボールを木谷公亮が右足で強烈なシュート。GK南雄太が出た後のゴールには片山がカバーに入っていたが、右足でクリアしたボールはサイドネットを揺らす。その後、熊本も再度突き放すべく交代出場の齊藤和樹やファビオが抜け出し、またアディショナルタイムの90+1分にも右CKから矢野が合わせるが決まらず、2−2のドロー。結果、勝点1を加えた鳥栖がJ2の2011シーズン2位を確定し、クラブ創設15年目(前身の鳥栖フューチャーズ時代からすれば17年目)にして初のJ1昇格を決めた。

結果としては勝ちきれなかった熊本だが、シーズン最終戦にふさわしい戦いぶりを見せた。スタートから初めて採用した3バックが攻守両面においてある程度機能したのは、オプションとしてゲームの中でも何度か試していたこと、そして選手それぞれが自分の役割を認識してピッチで表現した成果。ただ内容的にはミスも多く、失点場面も含めリスクマネジメントが不十分だったこと、攻撃においてはカウンターから追加点を奪えそうな場面があったにも関わらずゴールに向かう形を作れなかったことが、この試合では顕著だったろう。それでも、中盤でのセカンドボールへの反応や球際での激しいアプローチ、先制点につながったサイドでの崩しなど、昨季からベースとして来た部分と今季取り組んで来た事のエッセンスを出し、また最後の笛が鳴るまで戦う姿勢を表現できた。もっと早い時期に、そして安定してこうした戦いぶりができていれば、という思いもあるが、その点は反省として来季に生かしたい。

さて、鳥栖の選手やスタッフ、関係者、そしてサポーターに対しては、これまでの曲折を乗り越えて長年の夢を実現したことを心からお祝いしたい。シーズンを通しての戦いはもちろん、この試合で見せた粘り強さや、チームとしての戦い方、ゴールへの執念なども、昇格するにふさわしい充実したものだった。熊本がJリーグに加入してからの4年間はもとより、JFL、地域リーグの頃から胸を借りて来た身近なライバルの初の昇格に立ち会えたことを素直にうれしく思うし、九州から3番目のJ1チームを送り出すにあたって素晴らしい雰囲気を作り上げることができたこと、そして気の利いたゴール裏の横断幕でリスペクトの精神を表現した熊本のサポーターをとても誇らしく思う。
ただ、目の前で行われるセレモニーや感涙にあふれたスタンドの様子を見て、昇格への思いがいっそう強くなったのも事実で、ミックスゾーンで話を聞いた選手たちの口からも「次は自分たちが」という言葉が多く聞かれた。高木監督が述べた「鳥栖の歴史」というフレーズ、また矢野も「5位とか6位の位置に何年もいて戦ってきたことが、今年の結果につながったんだと思う」と話したように、鳥栖の昇格の裏にあるのは決して今シーズンの成績だけではなく、現場の編成をはじめとしたクラブの強化方針にしっかりとした芯があったからだと、改めて感じさせられた。シーズンが終わり、これからチームは来季に向けて動き出すことになるが、この日見た光景とわき上がった感情を胸に刻み、熊本も前に進んで行かなくてはならない。そうした意味で12月3日は、Jリーグに迎えられた記念日であると同時に、次のステップに踏み出す決意をもたらした日になったと言っていい。
次は我々が続く番だ。


2011.12.04 Reported by 井芹貴志
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