J1の公式戦初出場が3人、プロ初先発が1人、今季初出場が4人。これが4日前の札幌戦からスタメンが9人入れ替わった清水の顔ぶれで、スタメンの平均年齢は22.91歳という若さ。開始2分の左FKでは、ボールの前にプロデビュー戦となった17歳・石毛秀樹と、プロ初先発の18歳・白崎凌兵が立ち、石毛の鋭いキックに頭で合わせたのは同じくデビュー戦の18歳・犬飼智也。この夜の清水を象徴するようなシーンでスタートしたゲームは、躍動感いっぱいの前線からの守備で、まずは清水が主導権を握った。
GKには山本海人、センターバックは平岡康裕とヨン ア ピン、中盤にも小林大悟、枝村匠馬と、チームの中心には経験豊富な選手が揃っていたため、試合運びは安定し、パスも落ち着いて回すことができた。その中でアンカーに入ったJ1初出場の姜成浩も、プレシーズンの頃よりも落ち着いてボールをキープして前にパスをつなぎ、円滑なボールポゼッションに貢献。今回は左サイドバックを務めた河井陽介の新人とは思えない落ち着き払ったプレーも印象的で、若き“もうひとつのエスパルス”は上々のスタートに成功した。

そして前半16分、白崎の絶妙なワンタッチの落としによって枝村が裏に勢い良く抜け出して決定機を作ると、ゴール前で混戦になってこぼれたボールから石毛がシュート。これは「緊張してガチガチでした」という石毛のキックがボテボテと転がったが、それが運良く小林のところに通り、小林が右足で蹴りこんで、自分たちの時間帯のうちに清水が先制点をゲット。石毛にとっては少ししょっぱい形だったが、初出場でプロ初アシストを実現した。

その後は、「（序盤は）自分たちがバランスを崩した状態があったが、逆に失点して目が覚めたような状況だった」（黒崎久志監督）という新潟が徐々に盛り返し、25分過ぎから押し込む時間帯を作る。だが、29分の三門雄大のシュートをGK山本がファインセーブで防ぐなど清水守備陣が踏ん張り、32分に石毛がミドルシュートを打ったあたりから再び清水が落ち着いてボールを回し始めて流れを取り戻した。

後半は、新潟が田中亜土夢と鈴木武蔵というフレッシュな2人を頭から投入し、こちらも若さの勢いをプラス。「後半は自分たちの戦いが勢いを持ってできたことはひとつの収穫」と黒崎監督は語ったが、カウンター攻撃にも平岡が絶妙な対応を見せる清水の守りをなかなか攻め崩すことができない。後半33分からは温存していたエースのブルーノ・ロペスを投入し、43分には彼の右ポストを叩く惜しいシュートがあったが、結局1点を奪えないままタイムアップ。清水が虎の子の1点を守りきって、勝点3以上の大きな収穫のあるヤマザキナビスコカップ1勝目を飾った。

非常に見どころが多かった清水の中でも、やはりもっとも注目されたのは、先週17歳にして正式なプロ契約を結んだばかりの石毛秀樹。キックの質や精度が非常に高く、まだ高校3年生になったばかりとは思えない物怖じしない積極的なプレーを見せて、右サイドからチャンスメイクする場面を何度も作ったが、やはり夢の初舞台の緊張からか簡単にボールを失う場面が目立ったのは本来の姿ではない。間近でプレーした小林が「今日は僕から見てもあいつはガチガチでした。本当はもっとやれるはずですよ」と語ったように、プロの戦いに慣れて本領を発揮し始めるのが本当に楽しみだ。
もちろん、そのほかにも楽しみな選手がいっぱい。もう1人の注目ルーキー・白崎も、まだ硬さがあったが「もっとやれるという手応えをつかめた試合でした」と語る。犬飼もこれまでより攻撃参加が増え、姜も伊藤翔もいつリーグ戦に出ても問題ないパフォーマンスを見せた。もちろん、小林、枝村、平岡、山本らはベンチスタートにしておくのはもったいないと感じるほどの力を発揮。とくに移籍後初ゴールを決め、ケガから復帰後初めてフル出場した小林は、今後のリーグ戦での働きが期待される。

ACL出場も見据えて「われわれは2つのチームを作ろうとしている」というゴトビ監督の戦略が、着実に形になりつつあることも証明されたゲーム。スタンドから観ていた記者にとっても（あくまで清水寄りの視点ではあるが）、純粋に楽しめてワクワクする試合だったことを最後につけ加えておきたい。

以上

2012.04.05 Reported by 前島芳雄