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【J1:第5節 広島 vs G大阪】レポート:J1通算100得点とJ1初得点。ふたつの記念すべき記録が、広島を3連勝に導く。(12.04.08)

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プレースタイル同様、疾風のごとく決めた佐藤寿人のJ1通算100得点=J1・J2通算150得点だった。
9分、倉田秋のパスをカットした青山敏弘が「寿人さんしか見えていなかった」というスルーパス。銘刀が巻藁を切るかのごとくの切れ味を引き出したのは、ストライカーの抜群の動き出し。青山とのホットラインで完全にG大阪の中央を崩し、通算99得点をエースはゲット。さらに32分、高萩洋次郎のスルーパスに反応した大崎淳矢が飛び出し、藤春廣輝に倒されてPKを獲得する。ボールをプレースするのはもちろん背番号11。PKを勝ち得た選手が蹴るのが広島の不文律ではあるが、ここはさすがに「淳矢にお願いして、蹴らしてもらいました」(佐藤)。同じアテネ世代の藤ヶ谷陽介との駆け引きを制して達成した偉業を祝福し、紫の戦士たちがピッチに「100」の人文字を描いた。

だが、「好事魔多し」とはまさにこのこと。後半開始早々、千葉和彦が足を滑らせてボールを失い佐藤晃大にJ1初得点を許してしまうと、ペースはG大阪に移行。23分、加地亮のクロスに佐藤が競る。落下点には寺田紳一。危険を察知した森崎和幸がアタックにいくも遅れてしまった。PKだ。2009年10月17日、完璧な前半を見せて広島が2−0とリードしながら、後半にあっさりと追い付かれた試合が頭をよぎる。
キッカーは、遠藤保仁でもラフィーニャでもなかった。PKを勝ち得た寺田が自ら志願してボールをセット。決める、という強い決意が立ち上る。だが、対峙した西川周作は冷静に寺田の気持ちを見つめていた。
「技術のある彼は、必ず細工をしてくる。左に蹴ると見せかけて、右だ!」
ゆっくりとした助走のリズムを変え、寺田は蹴る。
西川、飛ぶ。弾いた!
背番号1の気迫がキックを自らの方向に呼び込んだのか。チームを救う守護神のPKストップに、森崎和が飛びつき「マジでありがとう」と叫んだ。
このPK阻止の直後、森保一監督が動く。エースを外し、今季公式戦初出場となる平繁龍一を投入したのだ。後に森保監督は「頭がクラクラすると不調を寿人が訴えていた」とエース交代の理由を説明していたが、一方で「正直、他の選択肢も考えた」と認めている。
それでも平繁を選択したのは、今季の彼がずっと続けてきた不断の努力を見続けていたから。プレシーズンでもほとんど主力組に抜擢されず、第2節以降はベンチからも外れていた若きストライカーが、時に切れそうになる気持ちを必死でつなぎあわせ、じっとチャンスを待っていた。その彼の姿勢が、この重要な場面での抜擢につながったのだ。
83分には「切り札」ミキッチが足をつらせ、石川大徳との交代を余儀なくされた。広島、大ピンチ。だがその2分後、森保監督がキャンプから手塩にかけた若者たちが爆発する。
この日、リーグ初先発を果たしたU-23韓国代表ファン・ソッコが、自陣深くから重戦車のようなドリブルを開始。60mのロングドリブルでDFを引きつけ、石原直樹にスルーパス。シュート。ポスト。こぼれに平繁だ。今野が弾く。だが倒れそうな身体を必死で立て直した背番号18がボールに向かい、想いのたけを込めたシュートをネットに突き刺す。尊敬してやまない佐藤寿人に向かって一目散に走り抱きついた平繁は、さらに結果を出す。
88分、ファンの縦パスを受けた石川のクロスを平繁が落とし、石原のスルーパス。飛びだした石川が「(平繁)リュウが入ってくれる」と信じ、中が見えないままで出したクロス。仲間の信頼に応え、平繁が飛び込む。
ボレー。藤ヶ谷弾く。だが、倒れた状態でもボールから目を離さず、ストライカーはヘッドに当てた。またもゴール!粘るG大阪を撃沈する追加点を生み出したのは、厳しいキャンプを共に過ごした若者たちの躍動だった。

前半早々に訪れたセットプレーの連続、得点を決めた後も含め、G大阪の時間帯も間違いなくあった。だが、それを勝利につなげられなかったのは、自分たちのミスから。松波正信監督に交代したことでチーム内に活力が生まれていることは確かだが、それを勝利に結びつけるためには自らのプレーに責任を持ち、失敗を互いにカバーしあって、ミスをミスでなくさせる一体感以外にない。個々の能力も高く、戦術的なベースも存在するだけに、きっかけ一つで浮上する可能性は、この日もかいま見せた。ただ、その「きっかけ」は勝利以外にない。

偉大な記録をつくった11番を祝うべく、試合後のビッグアーチはサポーターと選手全員が共に歌う勝利の讃歌で包まれた。サポーターの前での胴上げを受けた佐藤寿人は「次の目標は広島でのJ1通算100得点(あと11点)」と宣言。この日、J1初得点をゲットした若者は偉業に感嘆の声をあげつつも、エースから学び続けることを誓っていた。「自分もいつか」の決意を胸に抱きながら。

以上

2012.04.08 Reported by 中野和也
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