過去は、繰り返された。F東京が味の素スタジアムで鹿島と対戦し、1−2で敗れた。引いて構える鹿島の守備を攻略することができず、F東京は順位をJ1リーグ5位に落とした。鹿島は今季初勝利で長いトンネルを抜け出して最下位を脱出した。
F東京のランコ・ポポヴィッチ監督は試合前から危惧していた。「私は不安を感じていた。それは、自分たちの力が鹿島に劣っているという意味ではない」と言った。
試合が始まり、その不安は的中する。鹿島は、やはり鹿島だったからだ。試合後、ジョルジーニョ監督に代わって指揮したアイルトンコーチが誇らしく語った言葉がすべてを物語る。「これが鹿島というサッカーだった。献身的で、伝統の全員でハードワークする守備ができた。クラブの歴史を振り返っても、4−0、5−0のスコアで勝つチームではないことを皆さんもわかっている。堅い守備で1点差を勝ちきるのが鹿島の伝統。それがサポーターや、メディアの皆さんが知っている鹿島。その鹿島が戻り始めた、あるいは戻ってきたと感じてもらえる試合だったと思います」
ゲーム開始直後から、前線と中盤をコンパクトに縮めて中盤のスペースを消した。ボールを奪うと、少ない手数でゴールへと迫る。明快なゲームプランが手に取るようにわかる。自陣で奪ったボールの逃げ場所になるために、2トップの一方が開き直して起点を作る。そこに、中盤の選手がフォローしてF東京のDFラインと駆け引きするもう一方のFWへとボールを送った。無駄をそぎ落として最も有効な策を仕掛け続ける。それに徹するのが、鹿島の強さだ。
後半に入ってゲームが動き出す。鹿島が66分、F東京のパスミスから右サイドを崩し、最後はゴール前で興梠慎三が合わせて先制点を挙げる。1点を追うF東京は田邉草民、大竹洋平をピッチに送り込んで地上戦で勝負を仕掛けた。
81分に、ラッキーな形で得たゴール前の間接FKをルーカスが蹴り込む。それを阻まれてこぼれ球を拾ったルーカスがもう一度狙ったが、再び鹿島がゴールを防いだ。しかし、転がったボールの先にいた田邉が左足でゴールへと突き刺して同点に追いつく。その後も、鹿島陣内で多くの時間を費やしたが、逆転ゴールを奪えず。耐え抜いた鹿島は試合終了間際に、またもパスミスを奪って途中出場のFWジュニーニョがゴール前へとボールを運ぶ。シュートはGK塩田仁史が阻んだが、遠藤康に詰められて万事休す。鹿島がプランどおりのカウンター2発でゲームを制した。
ただし、F東京は事もなく敗れたわけではない。実際に、ゲーム開始から主導権を握ってボールを動かし続けていた。鹿島に縦パスの行き場所を絞らせない攻撃もできていた。スペースの空いた後半は、ボールを広い場所へと逃がしてそこから何度かペナルティエリアの中へと進入している。
ただ、鹿島が人数をかけて守るアタッキングサードに入ってからが問題だった。スペースの少ない場所では技術が求められる。そこでミスが続いた。ラストパスや落としたボールがわずかにずれてシュート動作にワントラップが加わる。そのため、フィニッシュまでいけずに攻撃をやり直す悪循環を繰り返した。それが時間を追うごとに目立つようにもなった。
羽生直剛は言う。「今は、崩しきったという成功体験が必要なのかもしれない。それに、終盤に刻める選手を置いたのは監督の意思表示だとも思う。ポリシーとプライドを持ってやり続けているし、信念を持ってそれに答えを出さなければいけない」
この2敗が、直面した課題を如実にする。引いて守りに徹する相手を崩しきれていない。これをどう考えるかでチームが進む方向は変わっていく。もしも、カウンターのリスクを恐れるなら同じようにボールを手放してリスクを回避すればいい。攻撃を貫くのであれば、ずれないパス技術を磨き、ワントラップしてでも一人で守備を剥がしていく勇気ある選手と、それを後押しする周囲の選手を増やしていくしかない。MF梶山陽平と、長谷川アーリアジャスールは不在だった。しかし、いつも味スタのピッチには、変わらぬサッカーと、変わらぬ気概を持った選手が立つべき場所にしなければいけない。鹿島には鹿島のサッカーがある。ではFC東京は? そう考えれば、自ずと答えは決まっている。
以上
2012.04.15 Reported by 馬場康平













