名古屋が優勝した2010年、広島はそのチャンピオンチームにホームで勝利した。その時、広島はACLの中国遠征を含む連戦のさなかで中2日、名古屋も中3日での闘いで、名古屋のエース・ケネディが負傷していたことも現在の状況と似ている。
だが、だからといって「広島が優位にたつのでは」などという甘い観測は通用しない。現在3位の名古屋だが、実力では間違いなく優勝候補の筆頭。タレント力の総和、戦術の浸透、経験。攻守の総合力で言えば、頭一つ抜けた存在と見ていい。
広島は前述した試合以降、名古屋とは3試合闘って全敗している。特に昨年は2試合連続しての3失点。しかも、守備の組織が崩されたというよりも、セットプレーでやられた感が強い。藤本淳吾の素晴らしいプレースキックに、田中マルクス闘莉王や増川隆洋ら高さと強さを誇るタレントにヘッドで苦しめられる。「そこは名古屋のストロングポイント」と森保一監督も認めているところだ。
かつてペトロヴィッチ監督(現浦和)がセットプレーについて「いいキッカーから精度の高いボールが入ってきて、高さのある選手にピタリとあえば、守備陣としてはどうしようもない部分もある」と語ったことがある。しっかりと身体を寄せること。相手に自由にさせないこと。マークを外さないこと。守備に関して外してはならない要素はたくさんあるが、それでも決めてくるのが名古屋のセットプレー。「サッカーの場合、1失点は仕方がないと思っている。もちろん完封できればいいが、それほどうまくはいかない。そこを気にするよりも、しっかりと攻撃を創り、点をとって勝つことが重要」と森保監督は表情を引き締める。
といっても、名古屋は守備も強力。センターバックの闘莉王・増川に加え、ボランチのダニルソンが固める中央の守備は強力。広島が得意とするコンビネーションによる中央突破は難しいと考えるのが妥当だろう。
そうなると、ポイントはやはりサイドだ。だが、単純にアーリークロスを中央に入れても弾き返されるのがオチ。名古屋の両サイド=田中隼磨と阿部翔平も能力は高い。
「今のウチの場合、サイドでは単独の突破が多くなっている。そうではなくて、もっと人数をかけてもいいのではないか」
ここ最近、怪我や体調不良でピッチ外からチームを見ることが多くなっている山岸智は、そう指摘する。
考えてみれば、2年前に勝利した時も、左サイドで人数をかけたことが決勝点につながった。槙野智章(現浦和)と服部公太(現岡山)が左サイドで絡んで基点をつくり、そこに李忠成(現サウサンプトン)が顔を出してボールを受け、彼のループパスで裏をとった佐藤寿人が決める。李がボールを持った時、槙野が大外を回ったことで田中隼の周囲をひき付けたことも、ゴールの要因となった。
森脇良太も「サイドで数的優位をつくるのがウチの形」と語る。
「パスで打開することも大切だけど、後ろから持ち上がってサイドを分厚く攻めることもバリエーションの一つ。確かに後ろから持ち上がるのは勇気がいるが、そこは怖がらず、勇気を持ってやっていきたい」
森保監督は「まだ明日のメンバーを決めてはいない」と言う。誰が、どういうポジションで出場するのか、それはまだわからない。だが、誰が出ても広島らしい「攻撃を主体に考える」サッカーで、優勝候補に挑む。その考え方に揺らぎはない。守備を固めるサッカーをしたところで守りきれる相手ではないわけで、それなら広島の攻撃サッカーを存分に発揮する方を選ぶのが、チームとしてのコンセンサス。その一つのキーワードが「サイド」となるだろう。
名古屋はACLの対天津戦で痛恨の引き分け。試合内容も低調で、ストイコビッチ監督も「選手に疲れを感じた」と語るほど。だが「そういう試合の後は、選手は必ず頑張ってくる。危険だと思う」と森保監督は警戒心をほどかないが、一方で「思いきって攻撃してほしい。チャンスはつくれると信じているし、決めてくれると思っている」と挑戦者としての気概を前面に出している。
名古屋の強さは、広島の選手たち誰もが、肌身で感じている。しかし、そこに臆することなく、立ち向かう決意もできている。
「名古屋は相手に合わせるのではなく、名古屋の攻撃的なサッカーをやってくるだろう。僕らも、ボールを動かして相手を引き出す自分たちのサッカーをやるだけ」
6試合で5得点、絶好調の佐藤寿人が語るように、明日は攻撃対攻撃の闘いになるだろう。エンターテイメントとしても見応えのある試合になること、請け合いだ。
以上
2012.04.20 Reported by 中野和也
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