タイムアップの瞬間、スタジアムは大歓声に包まれた。札幌がC大阪を1−0のスコアで破っての今シーズンのリーグ戦初勝利。開幕戦から8戦未勝利で、しかも7連敗中。そうした苦しい状況で得た勝利とあって、地元ファンを大いに喜ばせたはずだ。もちろん、選手たちにも笑顔が溢れていた。
試合は立ち上がりからスピーディに攻守が入れ替わる展開となった。ホームの札幌もアウェイのC大阪も、ともに高い位置から積極的にボールを奪いにいくチーム。好守の入れ替わりが多いとバタバタした印象も受けてしまうが、十分にアグレッシブな序盤戦だったと言えるだろう。特に札幌は1トップの前田俊介が相手のパスコースを限定し、2列目以降の選手が素早くボール保持者を囲いこむ。奪えそうな時は一気にいくし、難しいと見れば素早く引く。それら一連の動きは組織立っており、試合を見ただけでは札幌が最下位のチームとは思えないほどしっかりした戦いをしていた。
「前半は本来やるべきことがほとんど出せない、非常に内容の悪い前半となってしまった」
そう話すのはC大阪のセルジオソアレス監督だ。試合開始直後はアグレッシブだったが、時計の針が進むごとにC大阪の動きは徐々に重くなっていた。
それは札幌の守備、特にアウトサイドの守備に苦しめられていたからだ。C大阪は右MFのキム・ボギョン、左MFの清武弘嗣のマンパワーを生かしてチャンスを作っていくスタイルだが、札幌はここをしっかりと封じてきた。「相手のサイドMFが上手いのはわかっていた。前を向かせないように気をつけながら、それでいて飛び込み過ぎないように、うまく距離を保ちながら守備ができた」と左サイドバック岩沼俊介が振り返るように、札幌はサイドMFとサイドバックが連係をとって、C大阪のキーマンを徹底して見張り続けた。
するとC大阪の攻撃の組み立て役である守備的MF扇原貴宏、山口螢はマークの厳しいアウトサイドにボールをつけるのではなく、縦パスで活路を見出そうとするのだが、これも札幌の理想通りの流れ。読みの良い宮澤裕樹、櫛引一紀がタイミングの良いアプローチでそれを潰し、そこから幾度もカウンターを繰り出していった。
札幌が1点をリードして後半に突入してからも展開はさほど変わらない。キーマンである清武とキム・ボギョンが厳しいマークを受けるC大阪は攻撃がノッキングしがち。ブランキーニョを退け永井龍を投入し、この選手の決定力から活路を見出そうとするも、チャンスを作りきれず。
だが、セルジオソアレス監督が68分に打った一手は非常に有効だった。右サイドに柿谷曜一朗を投入し、キム・ボギョンを内側にスライドさせたのである。サイドでの厳しいマークから解放されたキム・ボギョンが何度もボールに触れるようになり、ここから前線へ鋭いパスが配球されるようになっていった。そうすると札幌の両サイドバックも内側に絞る場面が多くなり、必然的にサイドのマークはそれまでよりも緩くなる。このベンチワークが試合の流れを変えそうな気配もあった。
だが、それを上回ったのが札幌の粘り強い守備だった。石崎信弘監督は中盤の底に守備の強いハードワーカー、芳賀博信を投入することでバイタルエリア近辺の守備強化を図る。キム・ボギョンから前線へのパスコースを封じる狙いもあっただろう。さらにDFの奈良竜樹も投入。ペナルティエリア周辺の危険なエリアを完全に埋めてしまうと同時に、チームに対しても明確な「逃げ切り」のメッセージも送ったということだ。そうやって徐々に守備のパワーバランスを高め、決定的なピンチを招かないまま、札幌はタイムアップの笛を聞くことに成功した。
リーグ戦初勝利を挙げた札幌は「選手の『勝ちたい』という気持ちが出たゲームだった」と石崎監督が言うように、タフな試合を見せた。だが、ゲームの質という部分で言えば、これまでの8戦とそう大きく変わったようには感じない。つまりディテールに差異あれど、未勝利だったここまでも、ある程度のゲームが出来ていたということなのだろう。こうして結果を得たことで自分達のパフォーマンスに明確な自信が得られたのではないだろうか。そして戦術的な観点でここまでと異なる部分を探し出すならば、やはりバックアップの充実だろう。この試合では内村圭宏、芳賀、奈良と特徴と実力のある選手が途中出場で活躍を見せたように、怪我人の復調もあり選手層に厚みが出てきたことも、初勝利につながったと見ていいだろう。
そしてC大阪のほうは、キーマンを封じられた際にどのように相手守備をこじ開けていくのかという課題があらためて突き付けられた格好だ。今後はロンドン五輪の絡みで清武、キム・ボギョンを欠くシチュエーションも出てくるだろうし、その彼らが封じられた際にどのようにチャンスを作るのかという部分も気になるところだ。
さて、札幌が勝利したことで、すべてのチームがリーグ戦で勝利得たことになる。札幌がこの勝利をどう生かすのか、今後のリーグ展開にどういった影響を与える存在となるのか、非常に興味深い部分である。
札幌は次節(5/6)、横浜FMと。C大阪は神戸と対戦する。
以上
2012.05.04 Reported by 斉藤宏則















