リーグ戦の折り返し、大宮はホームに神戸を迎えて戦う。大宮はリーグ前半を終えて勝点19の15位。『勝点50、それ以上』を目標に掲げた今シーズンだったが、ケガ人やグラウンド不良、代表招集によるキャンプでの準備不足が響いて勝点を伸ばせず、5月末で鈴木淳前監督を解任。ベルデニック体制に移行したものの、ここまでリーグ戦を4試合戦って1勝1分2敗と、チーム再建はいまだ途上にある。
ベルデニック監督が最重要課題として挙げた『失点数の多さ』については、素早く自陣に引いてのコンパクトな4-4-2の3ラインディフェンスが浸透しつつあり、リーグ戦ここ3試合を1失点に抑えている。ただしここ3試合で計59本ものシュートを浴びており、組織的に相手の攻撃を抑えているというよりも、DF陣の「最後のところで身体を張った守備」(深谷友基)と、GK江角浩司のビッグセーブに助けられている。その江角の言葉を借りれば「攻めさせている状況と、攻められている状況は違う」わけで、『堅守』と讃えるには少々危なっかしい。また、「攻められている」ためにボールを奪う位置が低く、良い形で攻撃に移ることも難しく、ここ3試合で1得点しか奪えていない。その1得点をアシストしたラファエルは、ボタフォゴ移籍のため前節からチームを離れ、移籍の正式発表もリリースされた。2009年の夏以来、攻撃の大黒柱であったナンバー10を喪失した穴は限りなく大きい。
「彼の不在を補うことは不可能。他の全員で攻守においていかにコレクティブにプレーしていくかが重要」と指揮官が語るように、スペシャルな選手がいないなら、人数をかけていくしかない。前節の鹿島戦では、前線の長谷川 悠、チョ ヨンチョルの2トップに加え、右サイドハーフの東 慶悟に、カルリーニョス、青木拓矢の両ボランチもからんで、前半の30分までは主導権を握って3度のビッグチャンスを作っている。ここで得点が奪えていれば、『ラファエル後』に大きな希望が見えたところだが、残念ながら曽ヶ端 準のセーブに阻まれた。さらに前半の残り1/3で、カウンターから一発で裏を取られピンチを招いたことから、ベルデニック監督は「攻撃に人数をかけすぎず、リスクを負わないように」と指示を出したことで、「攻撃は僕と悠君(長谷川)の2人で何とかしなきゃいけなくなった」(チョ ヨンチョル)。結果、後半はほとんど守備練習といってもいいくらい、一方的に攻められっぱなしになった。
ただし鹿島戦での後半の戦い方は、「前がかりになりすぎるなとは言ったが、絶対に前に行くなと言ったつもりはない」と、ベルデニック監督にとっても本意ではなかったようだ。「その理解に私と選手とで相違があった。状況によっては前に行かないとゲームにならない。『大きなリスクをかけすぎるな』と言われて、まったく行けなくなる選手と、行ける選手と、そこは経験が左右するものだ」という。
危なっかしいながらも、確かに失点は減ってきている。ただし攻撃を犠牲にして守っていても、得点を奪って勝点3を取らなければ、目標の勝点50はおろか残留すらおぼつかない。人数をかけて得点を奪いにいけば、そのぶん防御力は下がる。リーグ後半戦は、攻撃と守備のバランスをどう取っていくのかを探りながらの戦いが続くことになる。
そのリーグ後半戦の最初の対戦相手が神戸というのも、何か運命的なものを感じなくもない。神戸も同様に、『ACL出場圏内』という目標を達成するため監督を解任している。その解任直後の5月3日の第9節にホームで大宮と戦い、3-0で勝利した。その後6月6日のヤマザキナビスコカップで再戦した際には、大宮が監督解任直後の試合で1-0の勝利と、互いに重要な局面で対戦し、より切実なほうが勝利を収めている。
神戸は西野 朗監督就任以来、なかなか勝星を挙げられず苦しんだが、第14節・磐田戦で初勝利を挙げるとその後3連勝。前節・仙台戦は0−1で落としたが、内容では上回り仙台の倍近い19本のシュートも放っている。神戸の代名詞である前線からのハイプレス+ショートカウンターに、西野監督の得意とするポゼッションの融合が進んでいる。特にボランチにG大阪時代からの愛弟子である橋本英郎がケガから復帰したことは大きい。大久保嘉人はケガのために欠場の見込みだが、小川慶治朗は5月の対戦で大宮からゴールを奪っているし、前線に田代有三も復帰してくる。
チーム再建に内容も結果も出ている神戸と、再建途上で攻守のバランスに苦しむ大宮。構図としては攻める神戸、守る大宮ということにはなるだろう。大宮は前々節の清水戦では、前半は一方的に攻められながらもDF陣とGKの身体を張った守りでゴールを許さず、後半にラファエルを投入して流れを引き寄せたが、そのラファエルは既にいない。点を奪うには鹿島戦の30分までと同様に人数をかけて攻めるしかなく、特にこの試合を最後にロンドンオリンピックのためチームを離れる東にかかる期待は大きい。「神戸は以前に比べ、試合のイニシアチブを取ろうと、攻撃参加の人数を多くして敵陣でのプレーが増えており、そこを突くことを考えている」とベルデニック監督。自陣に引き込んで組織でボールを奪い、神戸のハイプレスを避けてDFラインから早くボールを前に運び、2トップに東がからんでさらにボランチが一枚サポートする攻撃ができるかどうか。「相手はSBも高い位置を取ってくるので、そのスペースを使って攻撃出来ればチャンスになる」と、まさにその形から清水戦で決勝点を決めた渡邉大剛。自陣で粘り強く守り、前線とサイドハーフ、飛び出すボランチへ負担は大きいが、それでもやってもらわねばならない。逆に神戸としては、どれだけ大宮のサイドハーフを守備に奔走させられるかがカギになるだろう。
ともに監督解任を経て、リーグ後半戦の巻き返しを誓うチーム同士。「ここで勝って勢いに乗りたい」(深谷)という思いを、両チーム・両監督ともに心の底から感じているはず。特に大宮は、『ラファエル後』の攻撃を、しっかり結果として見せる必要がある。神戸にしても、ここで大宮に結果を出させると、仙台に続いて堅守からの速攻に屈することになり、今後の戦いに影響してくる。互いにリーグ後半戦の戦い方を占う重要な一戦、緊張感のあるゲームになりそうだ。
以上
2012.07.13 Reported by 芥川和久
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