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【J1:第18節 清水 vs 柏】レポート:1試合の中で本当に多くのドラマが生まれた壮絶な死闘。最後は9人の清水が柏の猛攻に耐えきれず、無念のホーム初黒星(12.07.15)

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PK3回、イエローカード7枚、レッドカード3枚。非常に荒れた試合になってしまったが、ドラマチックさという意味では、それ以上に劇的で衝撃的な結末が待っていた。

前半44分までは、11人対11人の真っ向勝負でどちらも自分たちの持ち味を出し、非常に見応えのある戦いが繰り広げられた。
3試合ぶりのゴールと8試合ぶりの勝利を目指す清水は、立ち上がりから積極的な仕掛けを見せ、開始1分も経たないうちに岩下敬輔の右アーリークロスが絶妙なコースに入って惜しいチャンスを作る。試合前から「守備の選手から攻撃のスイッチを入れていきたい」と語っていた岩下は、その言葉通り長短の好パスを連発し、チームの攻撃をリード。左右からのクロスに入っていく人数も多く、守備も前線からアグレッシブにボールを奪いに行って、チーム全体として攻撃の意識を存分に表現していた。
柏のほうも、序盤は押され気味ながらも、ボールを奪ってから相手サイドバックの裏に素早くボールを入れて起点を作ったり、カウンターのチャンスではしっかりとパスをつないでボールを前に運んだりという形で清水ゴールに迫っていく。そして8分にはジョルジ ワグネルのFKから決定機を作るなど、セットプレーではワグネルとレアンドロ ドミンゲスからつねに良いボールが入り、清水にとって90分間脅威になり続けた。
そんな見応えのある展開の中で、12分に清水が幸運な形でPKを獲得。これが決まればチーム通算1,000ゴール目となり、清水が一気に勢いづきそうな状況だったが、PKを任されたキャプテンの小野伸二が左に外してしまい、まさかのPK失敗。
その後も、30分の大前元紀のシュートや、35分の河井陽介の左ポストに当たったヘッド、40分の高原直泰のダイビングヘッドなど、清水はこれは決めなければいけないという場面を何度も作ったが、それを決めきれないのは相変わらず。

また柏のほうも、けっして押されっぱなしにはならず、18分に澤昌克が決定機を迎え、セットプレーでも惜しい場面を作って対抗。そして、32分に清水のミスに乗じて攻め込み、岩下のハンドを誘ってPKを獲得。これをドミンゲスが落ち着き払って左に決め(33分)、抜け目なく先制点を奪ったのは、昨年の王者らしさを見せた部分だった。
しかし、清水はそれでも下を向くことなく攻め続け、前述35分のチャンスの2次攻撃でPKを獲得。今度は大前がキッカーを務めたが、大きなプレッシャーがかかる中、大前はGKに読まれても関係ないという強いキックを左隅に叩き込み、ようやく記念の通算1,000ゴールを決めて、同点に追いついた。
しかし、それだけで前半は終わらない。44分の柏のカウンターに対して、岩下が遅れたスライディングで澤のドリブルを止めてイエローカード。これが2枚目となって、岩下は前半のうちに退場になってしまった。すでに1枚カードをもらっている岩下としては、ここは無理をする必要のなかったタックル。それによって、清水は後半丸々10人で戦うことになってしまった。

後半は、立ち上がりから数的有利の柏が押し込む時間が多くなったが、清水も岩下の代わりにDFを補充することなく、村松大輔をセンターバックに、河井を守備的MFに下げる形で攻撃の姿勢を維持。そして、後半8分に得た右サイドでのFK。李記帝の精度の高い左足のキックを、ニアの高原が頭でわずかにコースを変えてゴール左に流し込む。高原本人にとっても待望の今季初ゴールで、10人の清水が逆転に成功した。
さらに後半17分には、ドミンゲスの信じられないパスミスからアレックスが裏に抜け出し、GKとの1対1から冷静に右に決めて3点目をゲット。清水にとっては、これが7試合ぶりのセットプレー以外によるゴールだった。
それにしても、サッカーというのはつくづく不思議なものだ。あれだけ点が取れずに苦しんでいた清水が、10人になってから2得点。本当にムードやメンタルに大きな影響を受けるスポーツだということを実感させられた10分間だった。

しかし、その4分後にも大きなドラマが待っていた。柏の左スローインを競り合った場面で、ワグネルと吉田豊がぶつかり合い、ワグネルに一発レッド、吉田に2枚目のイエローが出されて、2人が一気に退場。それでも、今季は退場者が出て数的不利になった試合でも1点を守り切れていた清水だけに、9人対10人で2点のリードは大きなアドバンテージかと思われた。だが、今回は相手が一枚上手だったのかもしれない。
「途中から入った工藤(壮人)と(水野)晃樹も非常に生産性を上げてくれて、辛抱強く、焦らず、崩れず点を取りにいくという形を見せてくれた」とネルシーニョ監督が選手たちを称えたように、柏はけっして攻め急ぐことなく、押しては引き、スキあれば裏にという巧みな攻めを見せる。セカンドボールもほとんど拾って、精度の高いクロスボールを何本も入れ、蒸し暑さとも戦う清水の選手たちを消耗させていった。
清水のほうは、平岡康裕(後半14分〜)と杉山浩太(後半38分〜)を投入したことは、守備のバランスを整えるだけでなく、ボールをキープする時間を増やすという意味でも有効なはずだったが、選手たちは“守れ”というサインだと受け止めてしまったのかもしれない。本来ならもう少し自分たちがボールをキープし、攻める時間も作れたはずだが、「ゴール前で(攻められるのを)待っているだけになってしまった」(河井)というのは、ひとつ悔やまれる部分だ。
そんな中で、後半29分に右クロスの折り返しから工藤がまず1点を返し、後半43分には那須大亮のシュート性のクロスがバーに当たった跳ね返りを橋本和が頭で押し込み、柏がついに3-3に追いつくことに成功。こうした戦い方ができるあたり、柏はさすがに勝ち慣れているチームという印象を受けた。

しかし、この後にもドラマは続く。その後は、何としても勝ちたい清水が、残されたわずかな力を振り絞って捨て身の攻撃に出る。そしてアディショナルタイムに入った47分、強引な中央突破で杉山が裏に抜け出し、決定的なシュートを放ったが、これはGK菅野孝憲がスーパーセーブ。さらに、そのこぼれを柏が拾ってカウンターで攻め込み、最後は短くなったDFのクリアボールを水野が押し込んで再逆転の4点目をゲット。
この場面、清水の前線の選手は守備に戻る力がなく、柏の選手たちは全員が押し上げて、こぼれ球を拾うという面で完全に優位に立った。そうした余力の差が最終的に勝負を分け、終了間際にも工藤が1点を追加して、激闘にピリオドを打った。

柏にとっては、今後に勢いをつける意味でも本当に大きな勝利。逆に清水にとっては、本当に悔しい今季ホーム初黒星。ただ、両チームの選手たちの頑張りや、最後まで試合をあきらめずに闘い抜いた姿は、両サポーターの感動を呼び、敗れた清水にもオレンジサポーターから暖かく大きな拍手が送られた。
また、試合内容や3点取ったことを振り返ると、清水にとっても次につながる要素は大いにあった試合。「3歩進んで2歩下がる」とは違うが、3歩下がって、4歩、5歩進むということはできるはず。清水の選手たちには、この結果に自信を失うことなく、次への力に変えてくれることを期待したい。

以上

2012.07.15 Reported by 前島芳雄
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