とりぎんバードスタジアムに、今季最多となる6629人の観客が詰めかけた陰陽ダービー。岡山の影山雅永監督が「非常に素晴らしい、サッカー選手、サッカー関係者にはたまらない雰囲気を作ってもらえるダービー」と振り返ったとおり、専用スタジアムが醸し出す“密集感”と相まって、大きな盛り上がりを見せた一戦は、チャンスを確実に決めた岡山が2―0で勝利を収め、陰陽ダービーの通算成績を3勝1分として、ライバル相手の無敗を守った。
立ち上がりから攻撃の良い形を作っていたのは鳥取だった。セーフティーな選択から前線に送り込まれるロングボールを、FW久保裕一の踏ん張りや、こぼれ球への反応の良さで物にしてチャンスを広げる。7分には久保が混戦内でのボールキープから左足で狙ったが、岡山GK中林洋次が好セーブ。その後に岡山もカウンターでチャンスを作ったが、影山監督が「鳥取が前へ、前へと徹底してゴールを目指す戦いをしてきて、なかなか対応できず、苦しい戦いを強いられた」と振り返ったとおり、その後も鳥取の時間帯が続いた。
しかし29分、先制したのは岡山。鳥取陣内でのルーズボールの競り合いから、自分たちにボールがこぼれた瞬間の攻撃への切り替えで鳥取を上回った。金民均―石原崇兆とつないで、右サイドの澤口雅彦が守備ラインの背後を突いてスルーパスを受け、最後はゴール前でフリーとなっていた川又堅碁が難なく押し込んだ。
スコアが動いた後も、主導権を握っていたのは鳥取で、最近数試合に比べて多くのチャンスを作り、同点を狙う。しかし、40分に美尾敦、久保が立て続けに放ったシュートは、いずれも中林が鋭い反応でブロック。44分にはゴール前の混戦から吉野智行が狙ったが決まらず、アディショナルタイムにフリーで抜け出した美尾のシュートもゴール右へ外れて、前半は岡山の1点リードで終了した。
ハーフタイムに影山監督は「セカンドボールの拾い合いで後手を踏まず、厳しい中盤をもう一度立て直すこと」と指示を送ったが、後半も流れは変わらず、鳥取が前への圧力を強めてゴールに迫った。だが、52分に尾崎瑛一郎のセンタリングを森英次郎がヘッドで狙ったシュートは、わずかに右に外れ、54分にも森が強烈な右足ミドルを放ったが、クロスバーの上に外れる。59分には久保が狙ったがGKの正面を突き、どうしてもゴールを割ることができない。
次第に膠着状態となった中で迎えた終盤の79分、先にスコアを動かしたのは前半同様、少ないチャンスを生かした岡山だった。田所諒の蹴った右CKがニアサイドを抜けると、中央で待っていた竹田忠嗣が混戦から蹴り込んで追加点。岡山にとっては待望の、鳥取にとっては大きなダメージが残るゴールだった。
その後も鳥取は何度もゴール前に迫ったが、この日の攻撃の出来を象徴するように、86分の久保のヘッド、88分の奥山泰裕のヘッド、アディショナルタイムの藤本修司の左足シュート、奥山のヘッドが、いずれも枠外。結局、そのまま岡山が2―0で完封勝利を収めた。
鳥取は、久保が「こっちが決められなかったときに、向こうが決めて、向こうのリズムになった」と語ったように、前後半とも良い形で攻めていた時間帯に失点し、流れを引き寄せることができなかった。吉澤英生監督は「最後のところで岡山の選手は1対1で体を投げ出しますし、あと一歩、前に出る。攻撃でも、最後の一歩、半歩が、われわれがこの順位、岡山がこの順位にいる差だと思います」と語ったが、わずかながらも大きな差を見せつけられて2連敗。最下位の町田が勝利を収めたため、下の2チームとの勝点差は2に縮まった。
逆に岡山は2連勝とし、7試合未勝利だった前々節までの悪い流れを断ち切った感がある。この日の完封勝利は、鳥取のシュート精度の低さにも助けられたが、出色の出来を見せたのはGK中林で、決定機でのシュートストップだけでなく、ハイボール処理の安定感も素晴らしかった。影山監督は「守備範囲の広さが本当に遺憾なく発揮されたゲーム」と評価しつつ、「そのようにフリーな選手が浮いてしまっているということでもある。中林が活躍するということは、守備陣に何か問題があるということですから、彼の健闘を称える一方で、反省する材料にしなければいけない」と語ったが、それも勝利を収めたがゆえの前向きな改善につながるはず。J1昇格プレーオフ圏内の6位との勝点差を8に縮め、今後の巻き返しにはずみをつける勝利となった。
以上
2012.08.13 Reported by 石倉利英













