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【J2:第28節 熊本 vs 栃木】レポート:原点に立ち返ってアグレッシブさを取り戻した熊本。好調の栃木を3ゴールで圧倒し、5試合ぶりの勝利。(12.08.13)

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残りの14試合を戦い終えて今シーズンを振り返るとき、結果がどうなるにせよ、「何かが変わった」と思える分岐点となりそうな一戦だった。7試合負けなしと好調の栃木を4連敗中の状況で迎えた熊本は、5試合ぶりの、しかも今季最多タイとなる6節岐阜戦以来の3ゴールで一蹴。シーズン終盤に向けて「1歩を踏み出す」(高木琢也監督)ことに成功した。
この試合、「負けている中では何かを変えないといけない。ひとつには気持ちをリフレッシュすること」という理由で、高木監督は4-4-2の布陣を選択。前節の岡山戦で頻発した自陣でのつなぎのミスをなくし、逆にあまり見られなかった相手の守備ラインの背後への飛び出し、そして攻撃においてはシュートやクロスで「やりきること」をテーマに掲げ、そしてそれを実践した。
まず開始2分に左サイドの片山奨典のふわりとしたパスから武富孝介が飛び出してコーナーキックを得ると、3分には北嶋秀朗の落としを片山がミドルで狙うなど、序盤から熊本が主導権を握った。これに対して栃木は全体的にボールへのプレッシャーが緩く、熊本の攻勢を前に整ったブロックが機能しない状況。そして迎えた15分、ハーフウェイラインを僅かに越えたあたりから根占真伍が思い切ったミドルシュートを放つと、「トラップしようと思った」北嶋の足に当たったボールは「跳ね返りもあるかもしれない」と詰めた武富の足元へ。前節の試合後、「もっと自分がシュートを狙いにいかないといけない」と話していた武富は落ち着いてGK武田博行の逆をつき、左足で流し込んだ。
「先制されたことで、(熊本が)非常に引いた」と栃木の松田浩監督は振り返っているが、先制点を奪う前から熊本の守備でポイントとなっていたのは、栃木のボールの動かし方に対して選手間の距離を保ちながらスライドし、特に中央へクサビを打ち込むコースをほとんど遮断した点だ。最終ラインの4枚もさることながら、養父雄仁と根占の両ボランチがバランスを取って中を締め、片山、藤本主税も栃木のサイドからの攻撃をケア。一度寄せてボールを奪えなくても、次へ展開された段階で再び形を整えるクイックな対応で、栃木に攻撃の形を作らせていない。
後半、栃木は動きが悪くうまくボールを引き出せなかったサビアに替え、前期の対戦でJ初ゴールを挙げている棗佑喜を投入。「シンプルにプレーしよう」というハーフタイムの指示を受け、前半と比べて長いボールを早めに前線に送る場面が増えていく。しかし熊本も矢野大輔、廣井友信らが身体を張って跳ね返し続け、逆に栃木の前後が伸びたことによって広がったスペースでも的確なポジションを取って、セカンドボール争いでも優位に立った。60分過ぎから右サイドバックの市村篤司が中盤を追い越す動きで再び流れを掴むと、リスタートからの流れで71分に得たコーナーキックを矢野が頭で決め、2−0と突き放した。
栃木は75分、赤井秀行に替えて西澤代志也を入れ、熊本も71分に北嶋から高橋祐太郎、藤本から齊藤和樹、75分に根占から筑城和人と、お互いの指揮官は15分を残した状態で3枚のカード全てを使いきるが、ゲームの流れは変わらず。終盤には大和田真史を前線に上げるなど栃木もパワープレーに出たものの、アディショナルタイムを凌いだ熊本は逆に90+6分、ロングボールに競った高橋の落としを、勢い良く落下点に走り込んだ片山がダイレクトで左足を振り抜き、とどめの3点目。約1ヶ月ぶりに、ホームでの勝利をたぐり寄せたのである。
栃木にとっての8試合ぶりの敗戦は「立ち上がりが全て」(松田監督)ではあったが、ゲーム中に修正できる余地がなかったわけではない。気温はともかく、80%を超えた湿度がコンディションに全く影響しなかったとも言えないが、この試合においてはゲームへの入り方、失点後の試合の運び方、また1つひとつのプレーの判断の正確さや、パス、シュートの精度も欠き、菊岡拓朗のミドルがクロスバーを叩いた80分、右からのクロスの折り返しを高木和正がシュートに持ち込んだ84分の場面以外、ほとんどチャンスを作れずにシュートはわずか5本に終わっている。勝ち続けることは容易ではないが、松田監督が述べたようにこの敗戦を「いいクスリ」にして、プレーオフ圏内へ浮上したい。
一方の熊本。5試合ぶりの勝利が今までとどこか違う印象を受けるのは、先週の岡山で見せつけられた“スタンドも含めた一体感”を感じることができたからではないかと思う。選手たちが「勝ったらやろう」と計画して実現したという、試合後のゴール裏でのチャントに合わせた踊りもそのひとつなのだが、たとえば1−0の状況で迎えた前半終了間際、藤本や北嶋が自陣に戻ってなりふり構わず相手のシュートをクリアするシーンに、彼らのこのチームへの思いを垣間見た気がする。
久々の快勝でも順位は変わらず、プレーオフ圏内への進出も依然厳しい状況であることには変わりない。今後に向けて目に見えない何かを掴めた実感もある一方で、先制点が取れるかどうかでゲームの展開が大きく変わることも感じさせられた一戦。「まだ手放しで喜べる状況ではないんで、チームとしてやるべきプレーを1人1人が責任もって、気持ちを引き締めてやっていきたい」と藤本。シーズンの残り1/3を駆け抜けるため、そして前期に味わったあの敗戦の雪辱を果たすべく、次節松本に乗り込む。

以上

2012.08.13 Reported by 井芹貴志
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