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【J1:第22節 鳥栖 vs 清水】レポート:形は出せたが、得点を奪えず敗れた鳥栖。形は出せずとも、セットプレーから得点を奪えた清水。決勝点が生まれたセットプレーに悲喜を見た。(12.08.19)

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「残ったのは結果だけ」(呂成海/鳥栖)
この一言に、すべてが含まれている気がする。
試合の入りから失点するまでは、鳥栖らしく戦えていた。終了間際には、CBキム クナンを最前線にあげてゴールを狙ったが実らなかった。
「選手たちは最後まで90分間あきらめずに最善を尽くしたというところに関しては及第点をつけたい。」と鳥栖らしさを出せたことに尹晶煥監督も一定の評価を下している。
だからこそ、悔しさが余計に伝わってくる。

対して、「なかなかボールをつなぐことが出来なかったし、空中戦が多い試合になった。」と高木俊幸(清水)は、清水らしい攻撃ができなかったことを認めた。
それでも、得点を挙げることができ勝点を上積みしたことで、最低限の結果を残せたことと次の試合への課題を明確にした清水。悔しさの中にも安堵の気持ちが伝わってくる。

キックオフ直後からペースをつかんだのはホームの鳥栖だった。
19試合ぶりの先発となった高橋義希と藤田直之が中盤でのバランスをうまく取って、コンパクトな陣形とセカンドボールを拾って試合を優位に進めることができた。
金民友が積極的にボールを前に運ぶと、逆サイドからは水沼宏太が中央のスペースに飛び込んでは得点の機会を狙っていた。
豊田陽平を狙ったロングボールのこぼれにもよく反応し、連動したボール運びを見せることができていた。
文字通り、鳥栖らしい試合展開を行うことができていた。
願わくは、この時間帯で得点をあげることができていれば、結果は大きく変わっていたに違いない。

清水は、チームに合流して4日しか時間が経っていない金賢聖をワントップで起用した。
若きトップ下の攻撃陣は、前節でも積極的に動いてゴールを奪っていたので、最前線で高さと強さを彼に求めたのだろう。
連携には不安はあっただろうが、高い技術とサッカー観を持った清水の選手たちである。時間経過とともに、修正することが可能だと、アフシン ゴトビ監督は判断したのだろう。
しかし、高さのある金賢聖に合わせようとする意識が高く、清水らしい前線での動きと突破を出す機会は少なかった。
この時間帯を耐え、無失点でハーフタイムを迎えることができたことが、大きな結果につながった。

前半に起きていたことは、ハーフタイムの両チームの監督コメントを読めばご理解いただけると思う。
尹晶煥監督(鳥栖)の、「前半悪くないが最後まで集中すること」の一文に、鳥栖の状況は見て取れる。
アフシン ゴトビ監督(清水)の、「ボールを持ったら落ち着こう!」も同様である。
前半の手ごたえに、両監督の感じ方は対照的だったようだ。
しかし、尹晶煥監督(鳥栖)は、「こんな展開のときが一番危ない」と選手に注意を促していたそうだ。
百戦錬磨の尹晶煥監督が、肌で感じていた試合の流れが的中する時間が訪れた。
65分の清水のCKである。
大前元紀は、ゾーンで守る鳥栖の選手たちの最後尾を狙ってボールを入れたし、決めた村松大輔は「自分の入ってくるところにボールも来たので、ジャンプして当てるだけ・・・」と、スカウティングと精度のあるボールをたたえた。
この得点からは清水にも流れが出てきて、鳥栖の攻撃機会が減ってきた。
このCKを導き出すために、58分にアレックスをトップ下にいれたことも加えておかないと決勝点の説明は不完全である。
アレックスがトップ下に入ったことで、ボールを引き出すアイデア増え、鳥栖のボランチが守備に回る時間が増えたのである。
精度あるキックにスカウティング通りに飛び込んだ選手、そして単調になりつつあった攻撃に変化をつけた選手交代が連動して生まれた得点といえる。

途中までは完璧ともいえる試合運びを見せていた鳥栖だけに、冒頭に紹介した「残ったのは結果だけ」という言葉の響きは耳に痛い。
しかし、このやり方で今季を戦ってきているし、結果はついてきているのである。
下を向く必要もなければ、やり方を変える必要もない。
試合後の尹晶煥監督の「強い意欲と勝ちに対するものを見せてくれたのに・・・(中略)・・・今日のゲームで終わりではないので、早く次のゲームに切り替えてしっかりと準備していきたいと思う」だけである。
勝者の清水も、敗者の鳥栖も、結果以上に得たものが大きな試合だったように感じた。

相手を追い詰めるには、ストロングポイントを消して攻めるのが常套手段である。
攻め手を欠けば、判断が鈍り実力を発揮できなくなる。サッカーにおいて、ポゼッションの優位性はここにある。
相手の戦意も徐々に消失していくだろうし、余裕をもって攻めることもできる。
しかし、カウンターやセットプレーなど、ワンチャンスを得点に結びつけると相手に与えるダメージは、得点以上のものがある。口で言うほど、切り替えはたやすいものではない。
テクニックだけでなく、強いメンタリティーもアスリートに求められる大事な要素である。
得点は得るパワーも大きいが、相手に与えるダメージも大きいものである。
サッカーは、得点に一番力を必要とするスポーツなのだから。

以上

2012.08.19 Reported by サカクラゲン
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