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【J2:第29節 北九州 vs 福岡】レポート:北九州が福岡に初勝利。ダービーに新たな歴史刻む。(12.08.20)

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歴史の1ページ目に、北九州は確かな足跡を刻んだ。スコアは4−2。2点差での勝利だったが、得たものは勝点3にとどまらない。

過去3回のダービーで、北九州は試合に完封負けを喫し続けただけでなく、試合内容は自分たちのサッカーを出し切れず、ホームの本城陸上競技場で行われた2年前のダービーでも福岡サポーターにジャックされ、試合の勝敗、内容、雰囲気などのあらゆる部分で負けていた。
その北九州が、もちろん北九州がホームで、福岡がアウェイという条件の違いはあるにしても、サポーターが作り出す雰囲気で比肩し、選手たちは北九州らしいアグレッシブなフットボールを展開していった。「Jリーグの大先輩であるアビスパに追いつこうとするのではなく、アビスパさんとは違う道を進んでいかなければ彼らの上にいくことはない」と三浦泰年監督。北九州は北九州らしく。その思いが繋がりあい、結びつき、ダービーがダービーになる最初の一歩を確かに刻んだ。

試合を振り返ろう。

8分、相手のミスから得たボールを端戸仁が左サイドをドリブルで突破。GKをかわして深い位置から折り返すと、中に走り込んだ池元友樹が右足でゴールネットを揺らし、北九州が先制した。「中でタイミング良く入ってくれたのがイケさん」と端戸が話せば、池元も「最高のパスを仁が出してくれたので、落ち着いて決めるだけだった」と応じる息ぴったりのゴール。これが北九州にとっては福岡戦で初めての得点にもなった。
さらには15分。低い位置からのFKを起点に、今度は左サイドを池元が突破してセンタリング。これに端戸が頭で合わせて北九州が2点目を入れた。このゴールは北九州のホームゲーム通算50点目というメモリアルゴールだった。

このまま試合が北九州のペースで進むかに思われたが、前半のアディショナルタイムに城後寿がこぼれ球を押し込んで福岡が追撃点。前半を2−1で折り返す。

後半に入ると福岡が猛攻を仕掛ける。それは試合を通じたシュート数が北九州の7に対して福岡が15だということからも分かるが、クロスボールが正確性を欠いたり、相手のハードワークにはじき返されるシーンばかりが目立って決めきれない。そういう状態の中、56分には再び端戸がミドルシュートを決めて再び北九州が2点差に広げる。

追いつきたい福岡は58分、FWオズマールを投入。オズマールは前からのプレッシャーでボールを奪い、2度、GKと1対1となるなど見せ場は作ったが、いずれも三浦監督が「彼が今日のMVPではないかな」と評価した佐藤優也の好セーブに阻まれてしまう。

福岡の波状攻撃を北九州が耐えるという時間が続いたまま、試合は4分のアディショナルタイムに入っていく。それはダービーのエッセンスを凝縮したようなドラマチックな4分だった。
まずは90+2分、つまり、時計の針は46分台。ここで右からのCKを得た福岡・鈴木惇が、鋭い弾道のプレースキックをゴールに向かって振り抜くと、そのままゴールネットにぐさり。技ありの得点で再び1点差に詰め寄る。
これで試合はまだ分からなくなったが、その直後の90+4分。時計は48分台で残り時間がごくわずかになったところで、途中出場の北九州の常盤聡が相手GKが前のめりになっているとみるや、躊躇いなくロングシュート。これがゴールへと吸い込まれていって、北九州が試合を決定づける4点目を手にした。

手元の時計が49分10秒を差したところで、長いホイッスルが響き渡った。
4−2。最後は4分の間に2得点が入り、勝敗の行方さえ分からなくなったが、終わってみれば北九州のゲームとなった。

完封していた相手に4失点を喫した福岡には課題が残ったと言わざるを得ないだろう。「一瞬パニックになることで連続した失点を招く」と前田浩二監督。福岡はこの試合でも簡単なミスでボールを失い、相手の速攻や裏へのケアが後手に回った。パニック状態と言えばその通りなのかもしれないが、メンタルの持ち方はもちろん、距離感やマークの受け渡しなど修正すべきところは多い。もっとも、後半は2点差を追う時間が長かったが、決定機を決められずカウンターを食らった。「決めるところを決めないと今日みたいな試合になる」と鈴木惇。攻守両面でチームがやるべきことは少なくない。

北九州については4得点全てをFWが挙げたことは今後に向けても大きな大きなプラス材料だ。「いいチームはFWが点を決めるのが一番だと思うし、やっぱりこうやってFWの選手が結果を残すと競争も激しくなる」とは池元の話だが、その言葉の通りFW陣が切磋琢磨しながら高め合うことで、北九州の得点力は向上していく。前後半ともにアディショナルタイムで失点したことは反省点ではあるものの今日は目をつぶっていいだろう。失点を上回る得点を挙げたことを手放しで喜びたい。

プレビューで私は、このダービーが日本に世界に轟くものになるには、私たちもまた責任を負うと書き、さらにはターニングポイントにもなると書いた。
――果たして今日はターニングポイントになった。
ホイッスルの瞬間の歓喜と静寂の入り交じるスタジアム。この独特の空気感が、ダービーというものだろう。福岡に雰囲気から負けていた過去3戦にはない、真のぶつかり合いの結果だ。ダービーはピッチ上のものから、スタジアムを包み込むものへと変わりつつある。

ダービーを作るのは、選手であり、監督であり、応援し支え続ける私たちの役目。どちらにも胸を張れる試合だった。いずれは世界へと轟かすダービーへ、私たちは今宵、重い扉を開けた。

以上

2012.08.20 Reported by 上田真之介
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