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【J2:第30節 栃木 vs 愛媛】レポート:エースのゴラッソな一撃で栃木が愛媛を寄り切る。4試合ぶりの勝利で上位に肉薄。(12.08.23)

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予想通りのクロスゲーム。難しいゲームを勝ち切ったのは、ホームの栃木。実に4試合ぶりのゴールを、4試合ぶりの勝利に繋げた。貴重な決勝弾はエースの右足から叩き出されたが、その過程で栃木らしさが存分に発揮されていたことも見逃せない。

クロスのルーズボールに対して素早く反応し、マイボールにしたのは佐々木竜太。どこかチームにフィットしきれていかなった佐々木だが、この日は攻守にハードワークし、チームの約束事を粛々と遂行。そのハードワークが報われたのが、後半開始5分の得点シーンだった。佐々木は回収したボールを後方に構える菅和範に託し、菅は右サイドからファーサイド目掛けてクロスを上げる。落下地点に待ち構えていた宇佐美宏和がDF2枚を引き付けたことが結果的に奏功する。宇佐美のひとつ外側にいた廣瀬浩二がフリーになれたからだ。味方が繋いだボールを、エースは迷うことなく右足で捉えた。浮き球を下からインパクトしたことでドライブがかかったボールは、GK秋元陽太が伸ばした手の先を通過しゴールへと吸い込まれた。「間違いなく自分の人生の中で一番のゴール」と廣瀬は自画自賛。一方、決められた秋元は「素晴らしい、の一言」と脱帽するしかなかった。いい守備からのいい攻撃。まさに栃木のチームコンセプトが生んだゴールだった。

話はこれで終わらない。いい攻撃はいい守備にも繋がった。「凄いシュートに味方として勇気をもらった。絶対に守ってやろうと思った」と話すGK武田博行は同級生の廣瀬のゴールに触発され、後半8分、そしてアディショナルタイムの絶体絶命の窮地を事も無げに処理した。粘り強く戦いながら先制し、勝点3を得る。栃木スタイルの貫徹が3戦未勝利の悪循環を断ち切った。

「前半を抑えればなんとかなると今日は思っていた」
そう試合のポイントを話したのは宇佐美。序盤に強みを持つ愛媛に対し、栃木は最低でも前半を0―0で折り返すことを念頭に試合を進めようとした。だが、立ち上がりからCKを立て続けに3本も取られ、あっさり主導権を握られてしまう。ここ2試合の課題である試合の入り方を修正しきれなかったが、赤井秀行が内田健太とのサイドの綱引きで攻勢に回ると、徐々に栃木がリズムを掴んだ。それでも、互いに似た者同士、コンパクトな陣形は崩れず。つまり、チャンスは数えるほどしかなかった。

ある程度思惑通りに試合を運んだ栃木は、後半開始早々に先制点を奪うことに成功。ビハインドを負った愛媛も伊東俊の崩しから加藤大が53分にゴールを脅かす。反撃態勢を整えた愛媛だが、65分に内田がこの日2枚目の警告で退場に追い込まれる。俄然、優位に立った栃木だがアドバンテージを活かせない。有田光希には決定機を作られ、数的優位を加点に繋げられないもどかしい展開が繰り返される。カウンターは打つが致命的なダメージとはならずに、息の根を止め損なったことで最終盤にどっぷり冷や汗をかかされる、紙一重の勝利だった。

栃木も愛媛も臨機応変な対応が出来ず、課題が残った。抜群の入り方をした愛媛だが、栃木のブロックを揺さぶるような攻撃の工夫が足りなかった。「相手のDFも割と守り易かったと思う」と内田が言うように、足下、足下になっていまい、栃木にしてみれば潰し所がはっきりしていたことで比較的対処は容易だった。次節の岐阜戦では本来の横幅を使った攻撃を繰り出すことで相手に的を絞らせることなく、多彩な攻撃から複数得点を狙いたい。

栃木は数的優位に立ってからの工夫に乏しかった。相手には穴があった。4‐3‐2ならば中盤に、3‐4‐2ならば最終ラインに。そこを上手く突けたのは、菊岡拓朗のサイドチェンジから赤井が仕掛け、クロスを小野寺達也に送ったシーンくらい。相手の弱みにつけ込み加点できなかったことが、胃がキリキリするような展開を招いてしまった。今後は得失点差もプレーオフ進出の重要な要素となる。取れるチャンスがあるならば、惜しみなく取り切れるようにしなければならない。

前節の草津戦では前々節の熊本戦で喪失した栃木本来の姿を取り戻し、愛媛戦ではこれまで築き上げて来た栃木スタイルで勝星を得た。復調したところで湘南とのビッグマッチに挑む。3位・湘南との勝点差は5。直接対決ほど差を縮めるのに打ってつけのチャンスはない。ここでにじり寄り、トップ6にプレッシャーをかけたい。そのために、湘南に負けないハートとハードワークが求められる。中3日とタイトだが、条件は同じ。そこで負けるわけにはいかないし、負けられない。必ず勝点3を持ち帰る。

以上

2012.08.23 Reported by 大塚秀毅
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