「真夏の西京極決戦」、３連勝で大団円を迎えたかった京都だが、松本のたくましい戦いの前に苦杯を舐める幕切れとなった。

メンバーは、松本が前節の先発メンバーから弦巻健人を楠瀬章仁に代え、京都は福村貴幸が出場停止から戻ったほか、駒井善成を下げてチョン ウヨンを先発に起用した。

試合は、松本のロングボールから幕が開けた。これを起点に一気に京都陣内に押し込むと、京都ディフェンスが不安定さを露呈し、付け込まれた。
落ち着き始めたのは20分過ぎ。工藤浩平がオフサイドになったものの飛び出す姿勢をみせる。さらに25分、中村充孝が相手ＤＦからボールを奪うとＧＫと１対１に。だが、これを松本ＧＫ白井裕人が左足で防ぐ。その後も中山博貴が中央を走り込んでチャンスを作る。一方の松本も、34分に、左サイドのスローインから京都ゴール前へ押し込み、迫力ある場面を作った。

スコアが動いたのは39分。直前に迎えた京都のＣＫを跳ね返すと、松本が一気にカウンターを仕掛ける。京都もこれはクリアするも、それによって得たＣＫを松本・塩沢勝吾がニアで頭で合わせて先制。前回対戦ではスコアレスだったので、松本がこのカード最初のゴールを決める。

後半に入り、京都は秋本倫孝を下げ駒井善成を投入。後半早々は松本のサイド攻撃にゴール前に迫られるシーンもあったが、京都が盛り返す。得点の欲しい京都はチョン ウヨンを下げて久保裕也を投入。４バックの前に中山と工藤が陣取る隊形をとる。これに対し松本は小松憲太を投入しユン ソンヨルを真ん中にして３ボランチを敷く。そんな中でも後半24分に、中山が中央を割って入りシュートに持ち込むなど、京都は攻め立てる。そして、終了間際、中村充孝が相手ＤＦの背中をとるパスを出し、これに久保が倒されＰＫを得る。しかし、このＰＫを松本ＧＫ・白井に止められ、万事休す。

１−０のままタイムアップ。京都の連勝を６で止めると共に、松本は６試合負けなしとした。

試合後、松本・反町康治監督は、京都に対し「距離感が遠く」「逆への展開が多くて」裏切られたと評した。そこで、小松を入れて対応をしたことを明かした。サイドに逃げさせ、３バックで真ん中を固めて、外で時間をかけさせればセンターバックが引き出されないやり方をとったが、それは前回対戦でも見た様な風景で、結局京都はそこを破り切れなかった。

京都は、何よりも試合の入りで押込まれた。演芸の言葉で、舞台への出でいきなり観客の興を呼ぶ「つかみ」というのがあるが、松本の「つかみ」をずっと引きずっている感じだった。塩沢の高さは松本の武器だが、正直、跳ね返す場面も多かったし、そこから厚みのある攻撃はなかった。だが、セカンドの反応、その後のＧＫとＤＦの間に入れてくるクロス対応にきゅうきゅうとしていた。

今節、上位陣が軒並み勝点を取りこぼしている。そこで、京都も助かったという向きもあるかもしれないが、リードされてからの攻撃で動きが無かった点はこれからも尾を引きそうで、勝点、順位ばかりに目を向けるよりも内容の磨き上げに目を向けるべきだ。

いつもならば中盤の膠着で工藤が飛び出したりしていたがそれも少なく、中山が飛び出してチャンスを作ったが、他の選手からもそうした「動きのあるプレー」は欲しいところだろう。第２２節の岡山戦のゴールは中村のワンツーで、シンプルだがきれいな崩しだった。次節はアウェイでの草津戦だが、先にゴールを奪われれば同じことを繰り返す可能性もある、ということである。

個人的に今節の見どころは二つ。中山、工藤がボランチに入り、久保、原川といった若い選手が切り込む態勢となった点。混沌とワクワクが入り混じる、高揚のある時間帯となった。出来ればこれで勝点をもぎ取って自信をつけて欲しかったが、そこは中々上手くいかない。

そして、ＰＫのシーンで久保が志願して蹴ったこと。同点か負けかの場面で、自分でかたをつけようとした気概は高く評価したい。それで失敗したのだが、勝負を背負う気持ちは強く持たなければならない。「勝利を手繰り寄せるのも自分、負けるのも自分のせい」という気持ちである。その気持ちがなくてはチームの中心になどなれないと思う。

そして、中村はゲームの中でも久保に向けて、なんとか打開点を見出そうとしていた様に見え、そしてＰＫも譲った。優しすぎるという気もした。久保はそうした仲間の思いも背負う、ということである。ＰＫ失敗はショックだろうが、価値のある経験となるはずだ。

以上

2012.08.23 Reported by 武田賢宗