町田、鳥取と下位に2連敗を喫した千葉は、この試合、これまで実戦で試したことがなかった3バックを採用。【4-4-2】から【3-6-1】にシフトチェンジをし、この一戦に臨んできた。対する岐阜も李漢宰の出場停止を受けて、服部年宏をワンボランチに置き、2シャドーにけがから復帰したアブダと井上平を置く、【4-1-4-1】を採用。

共にいつものフォーメーションを変化させての試合。その影響もあってか、前半はどっちつかずの試合展開となった。ともに活路を見いだせない状況下でのこう着状態。ここから脱するには、いかにフォーメーションの特性を生かせるか。岐阜は相手の3バックの両サイドのスペースを効率よくついて、相手のウィングバックを下げさせることで、いかにバイタルエリアの人数を生かして、細かくパス交換と人の出入りでDFラインを切り崩せるか。千葉はいかに相手のワンボランチ周辺のスペースを有効活用して、兵働昭弘と荒田智之の2シャドーにボールを当てて、そこからウィングバックの押上げを絡めて攻撃を展開できるか。ここが勝負のポイントとなった。

前半終了間際の千葉のFK。MF伊藤大介のキックがバーをたたき、岐阜のCKからのFW佐藤洸一のヘッドはバーをかすめ、前半終了。妥当な結果といえる0-0で前半を折り返し、勝負は後半戦へ。

先に動いたのは岐阜だった。行徳浩二監督は、「トップ下にアブダを入れたが、ここでボールが入っても失ってしまい、攻撃の切り替えが遅くなり、ほかの選手の負担が大きいので、橋本を入れた」と、アブダに代えて橋本卓を投入。中盤でボールを握れず、4シャドーを生かせなかった反省から、展開力とキープ力のある橋本にその部分の修正を託した。さらに「相手の縦パスを入れさせたくなかったので、卓にそこをつぶしてくれと言いました」と、彼に守備的なタスクを課したことで、結果的に本来の【4-2-3-1】に近い戦い方に戻してきた。

それに対し、千葉は下手に動かず、立ち上がり15分をしのぐと、60分、攻撃にアクセントを加えるべく、1トップのリカルド ロボに代えてMF谷澤達也を投入。荒田を1トップに、谷澤をシャドーに置いてきた。さらに67分には左ウィングバックの坂本將貴に代え、FW深井正樹を投入。フォーメーションも右ウィングバックの高橋峻希を左サイドバックに、3バック右の大岩一貴を右サイドバックに置き、前線も4シャドーから、左から深井、兵働、谷澤を並べた【4-2-3-1】にシステムチェンジ。
「岐阜に左サイドを突かれていたので、ケアをすべく峻希を左に移した」（木山隆之監督）と岐阜の右サイド攻撃をケアしながらも、両サイドに谷澤と深井のドリブラーを配置し、両サイドバックももともと攻撃的に仕掛ける戦いにしてきた千葉が、ここから流れをつかむ。

しかし、この日の岐阜はこれに対し、間延びはしたが、ボールを奪った後の運動量が高かった。攻撃のスイッチが入ると全体が前への意識を見せ、染矢一樹のドリブル、井上の仕掛けなど、いつも以上に攻撃への迫力を見せてくれた。70分を過ぎると、拙攻を繰り返す千葉の隙をついて、服部や橋本にボールを集め、そこからの展開からチャンスを作り出した。特に残り10分は完全にペースを握り、何度もゴールに迫った。しかし、決定機らしい決定機は作り出せず。試合は0-0のドローに終わった。

共に現状打破を狙ったフォーメーションチェンジは、0-0という結果をもたらした。その中で前半は岐阜にシステムエラーが生じ、後半は千葉に生じた。それぞれのエラーが生じたときに、ゴールを奪えなかったことが、この必然のスコアレスドローを導き出した。言わば、お互いが分け合った勝点1だ。

岐阜は1つでも勝点がほしい状況下で、負けなかったことを良しとすべきか。千葉も3連敗しなかったことを良しとすべきか。両チームの状況を考えると、これをポジティブに捉えた方がいい。つかんだ勝点1をつなげるべく、中3日の次節へポジティブに臨むことで、双方の状況に光が差し込んでくるかもしれない。

以上

2012.08.23 Reported by 安藤隆人