今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第30節 熊本 vs 草津】レポート:リードを守れなかった熊本と、なんとか追いついて勝点1をもぎとった草津。ともに順位を1つずつ上げたが、前節に続く引き分けは消化不良の印象。(12.08.23)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
勝ちきることの難しさを改めて感じさせられる一戦だったと言えよう。前半35分に根占真伍のミドルシュートで先制し、1点のリードを守ってゲームの終盤を迎えた熊本はしかし、77分に同点弾を許して痛恨の引き分け。内容的には決して悪くなかっただけに、勝点1を加えたとは言え物足りなさが残る。この日手にできなかった2ポイントは決して安くない授業料と捉え、残りの12試合で取り返さなくてはならない。

それにしても、「フィニッシュの精度とか、ひとつ手前のシーンで慌ててしまう」(高木琢也監督)、「気の抜けた凡ミスに近いプレーがあったり、ワンプレーから失点してしまってリズムが変わってしまった」(副島博志監督)と両指揮官が振り返っている通り、技術面でのミスや集中を保てない精神面の弛みが、お互いを現在の順位たらしめていることがうかがえる内容だった。双方とも結果として順位を1つずつ上げたが、これからプレーオフ圏内へ浮上し、また将来J1のカテゴリーに定着、あるいはそれにふさわしいチームになるには、そうしたディテールをより磨いていくことが求められるだろう。

前半は熊本のゲームだった。立ち上がりから齊藤和樹と武富孝介の追い込みで始まるプレスが機能し、草津に攻撃の形を作らせない展開に持ち込む。特に、それぞれ2試合ぶり、5試合ぶりの先発となった根占と原田拓のボランチ2人がバランスを取って中盤をケアし、草津に中盤への縦パスを入れさせない。高さのある土井良太へのロングボール、また時折見られた遠藤敬佑からのスペースへのパスも、最終ラインの廣井友信と矢野大輔が身体を張って寸断。セカンドボール争いでも優位に立つと、タッチライン際でボールを動かしながら草津を片方へ寄せ、逆にスペースができれば原田が展開するなど、サイドから攻撃の形を作っていく。さらに、松本戦で課題のひとつとして浮かび上がった前線のコンビネーションもスムーズで、FWに当てて3人目が追い越すような場面を何度も演出。草津の守備陣もきっちりとラインを保って最後の部分は防いでいたが、やはり前節からの修正点のひとつとして選手らが口にしていた通り、根占の思い切ったミドルシュートで熊本が均衡を破ったのである。

ただ、草津としても守備が破綻していたわけではなかった。逆にじっくり守りながらカウンターやリスタートからチャンスを見いだそうと、手数をかけずシンプルにやりきる姿勢は見せていて、例えば熊林親吾から遠藤へとつないだ30分、コーナーキックからのクリアミスを中村英之がボレーで叩いた31分など、決定機と呼べるシーンは迎えている。裏返すと、そうした一瞬の隙を突かれて失点しそうな危うい雰囲気は、主導権を握って押し込んだ前半にあっても熊本には漂っていたのだ。

迎えた後半、流れは一転して草津のペースとなる。リードされたことで草津の前への圧力が増した背景もあるが、全体的な運動量と精度が低下した熊本は攻撃を最終局面まで持ち込めず、守備においても少しずつルーズになってきた影響で、草津の中盤に自由が生まれた側面もあった。加えて、松下裕樹らがサイドでボールを受けると意図的にアーリー気味のクロスをダイレクトで入れ、やむを得ず後ろ向きでの対応が増えた熊本のDF陣がラインを押し上げられずにスペースが広がることにもつながり、徐々に草津が押し込んでいる。66分、副島監督が永田拓也に替えて横山翔平を左サイドへ入れ、櫻田和樹をサイドバックへ下げるという手を打つと、その11分後、コーナーキックのこぼれから横山が決めて遂に草津が追いついた。前半の終わり頃から見て取れた懸念を、熊本は払拭できなかったことになる。

その後の81分、短い試合間隔も考慮して高木監督としてはできれば休ませたかった(あるいはリードした状態で時間を使うためにカードを切りたかった)であろう藤本主税がピッチに入り、熊本もアディショナルタイムにかけてチャンスは作ったが、結局勝ち越し点は奪えず。最後のチャンスとなった左からのコーナーキックをクリアされた時点で、終了の笛が鳴った。

草津にとっては、アウェイでこぼしかけた勝点を拾い、次につながる最低限の結果を得たと言える。もちろん、松下や横山も口にしている通り、ゴール前の工夫は今後も課題であり、副島監督が指摘した細かい部分でのミスはなくしていきたいところ。12本のシュートを受けてミドル1本からの1失点に抑えた守備意識は継続した上で、アレックス ラファエルの離脱等で苦しい状況にある攻撃の質を高めることが不可欠だ。

一方の熊本も攻守に同様の課題を残したが、ともかくここまで取り組んできたことがここへ来て少しずつ形になり始めている手応えはある。高木監督が言うように短期間で劇的には向上しないが、最後まで継続して貫き通すしかない。中3日で迎える次節の相手は最下位にいる富山だが、やるべきことはこれまでと何も変わらない。

以上

2012.08.23 Reported by 井芹貴志
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/19(金) 12:00 Jリーグ審判レポート(シンレポ!)#19『現役選手が本音で語る!2025年のレフェリング総括!』