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【J2:第30節 横浜FC vs 水戸】レポート:10人になりながら極限までファイトした水戸が作り出した「難しい試合」を、横浜FCが冷静に制し、勝点50到達。(12.08.23)

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サッカーでは、有利な状況であったにも関わらず「難しい試合だった」というコメントを耳にすることがよくある。それは、シンプルな戦い方であっても、それを徹底されると打ち崩すのは難しいという一面を持っているからだ。この試合の水戸は、柱谷哲二監督だけでなく、敵将の山口素弘監督までが「10人になってもあれだけのハードワーク、ファイトした水戸というチームに対して敬意を表したい」と述べたように、水戸が横浜FCにとって難しい状況を演出しつづけた。

ここ数試合、試合の入り方から良さが失われていた横浜FCは、この試合では試合開始から積極的に仕掛けのパスを入れていく。そして、7分早くもゲームは動く。距離のある横浜FCのFKの場面で、渡邉将基が単純に放り込むのではなく、阿部巧にパスを出し、水戸の守備陣がブロックを上げようとした瞬間に阿部が長いボールを入れると、ゴール前は2対2の状況に。そこで、武岡優斗がつぶれてフリーになった田原豊が豪快にボレーを叩き込み、横浜FCが先制する。そして、その直後の10分に水戸の吉本一謙が負傷交代するアクシデントに見舞われると、試合は横浜FCのペースになるが、逆に横浜FCにも余裕が出過ぎてしまい、水戸が横浜FCのボランチへの圧力を強めたこともあり、追加点を奪うことはできない。そして43分、尾本敬が2枚目のイエローカードで退場して、さらに横浜FCに心理的余裕が出たところを、水戸が逆に積極的に攻撃を仕掛け、45+1分に星原健太のゴールで同点に。10人の水戸が執念を見せる。ハーフタイムの山口監督のコメントが「もう一度ネジを締め直せ!」だけだったことからも、有利な状況がもたらす心理的な難しい状況があったことがわかる。

水戸にとってアウェイ、10人、同点という状況は、守備ブロックを作りながらカウンターをしたたかに狙うという戦い方をはっきりさせやすい状況。「(相手は)4-4-1でブロックを作ってくるでしょうし、1-1というスコアを保ってやってくる」(山口監督)という狙いを忠実に実行する水戸に対して、なかなか数的有利を感じさせる場面を作り出すことができなかった。しかし、ネジを締め直して攻撃にパワーを割く横浜FCが冷静にゴールを奪う。62分、12本のパスを左右につないだ横浜FCが、佐藤謙介のクサビのパスを武岡が裏に流し込み、スペースに飛び込んだ高地系治が冷静に決める。ブロックを作られて、それをこじ開けるのが難しい状況で、冷静にもぎとった1点だった。しかし、1点を取りにいくしかなくなった水戸は、鈴木隆行が前線で体を張り、攻撃のチャンスを作り出す。アディショナルタイムのセットプレーでは、2度、GKの本間幸司が敵陣ゴール前まで行く執念を見せるが、最後は横浜FCが冷静に守り切ることに成功。しかし、水戸が状況に対して戦い方を定めて全力を出してきたことで、水戸にも十分にチャンスがあった試合だった。

横浜FCは、これで勝点50に到達。6位まで勝点差2、2位までの勝点差を5に縮めることに成功した。前半アディショナルタイムの失点は大きな反省点だが、一方でブロックを作る相手から、パスをつないで冷静にゴールを奪うプレーを見せたことは、チームとしての成長を感じさせた。さらに、この日は渡邉将基、井手口正昭、阿部巧が久々に出場し、役割を十分に果たした。残り12試合の厳しい総力戦に向けて、さらにベースを上げることができたのではないだろうか。

一方の水戸は、負傷交代と退場というアクシデントの中、持てる力を出してファイトしつづけたことは、今後に十分につながる試合だったと言える。負けはしたものの、柱谷監督が鍛え上げた水戸らしいサッカーを、いつでも臆せずに表現できることは十分に示せたと言える。今後も上位への対戦も残っているが、この戦いを続ければ柱谷監督の言う「上位いじめ」だけでなく、自らが上位に上っていくことは十分に可能であることを感じさせた。

過去のどの対戦も、アディショナルタイムタイムまで目が離せない展開となるこのカード。今回も、前半のアディショナルタイムに10人の水戸が同点に追いつき、5分と長めの後半のアディショナルタイムにはGKまで動員した水戸があわやのシーンを作り出した。水戸のファイトが、このカードに相応しい熱戦を演出した試合だった。

以上

2012.08.23 Reported by 松尾真一郎
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