盛り上がりのあるゲームだった。岡山のディフェンダー・竹田忠嗣は「お互いボールを握っている時は、相手のイヤなことをやり合ったゲーム」と話した。激しいぶつかり合いにも、1点ずつ決まったゴールにも、両チームの「らしさ」が出ていた。もちろん、4日後の次節に生かすべき修正点もあった。

岡山の3-4-3に対して、北九州は中盤をダイヤモンド型にした4-4-2のフォーメーションを採用し、主導権を奪う意図を見せた。開始早々、左SH・鈴木慎吾の抜け出しから、トップ下に入った端戸仁がファーストシュートを放ち攻める姿勢を見せた。同時にボールが岡山に渡った瞬間、自陣に7人のフィールドプレーヤーが揃った。効いていたのはアンカー・新井涼平の判断の良さ。状況を見てサイドを変えるなど、攻撃の起点となっていた。

しかし序盤は徐々に、岡山がペナルティーエリアに近づくシーンを増やす。両ワイドを起点に仕掛けていくことには成功したが、ボールの出し手と受け手のイメージが合わないことも多かった。決定機は前半17分の、シャドー・金民均が放った枠上に外れたシュート。「前線の選手はゴールへの気持ちが強すぎたかもしれないですね」と岡山のボランチ・仙石廉は振り返る。フィニッシュにいたるまでに、もう1人、もうひと段階が必要だった。

岡山が主導権を握っているように見えた流れの中で、先制点が北九州に生まれた。前半19分、北九州が細かくパスを繋いで新井から端戸へ。再び後方でボールを受けた新井がハーフウェイライン付近からロングシュートを放つ。無回転の柔らかな軌道のシュートは、GK中林洋次の伸ばした指先を越えてカーブを描いて落ち、岡山のゴールを鮮やかに突き刺した。プロ4年目でリーグ戦初ゴールを決めた新井は、「思いきり打つだけだった」と話す。

岡山にとって、前半の早い時間帯の失点はそれほど大きなダメージではなく、勢いを保つことが出来ていた。そして前半42分、DF竹田忠嗣と後藤圭太でボールを奪って、右サイドでボランチ千明聖典、金民均と繋いだボールを、澤口雅彦が大きくサイドを変えるパス。受けた左の田所諒から石原崇兆、仙石、さらに石原とのワンツーで、相手DFに当たって角度が少し逸れたボールを仙石がトラップしてシュート。これが決まった。繋ぎながらサイドを変えてフィニッシュに至ったこのゴールは、仙石の今季初ゴールであった第5節ホーム山形戦でのゴールを思い出させる。

前半に追いつくことの出来た岡山の後半は、北九州の鋭利なカウンターとの戦いでもあった。関戸健二、チアゴ、三村真と攻撃的カードを使ったが、イメージ、呼吸が今ひとつ合わなかったことが次節への課題だ。一方、北九州は明確な狙いを持って組み立てながら、繋いでゴールに迫ったが、追加点を決めることが出来なかった。

ディフェンダーの戦う気持ちも印象に残るゲームだった。岡山の竹田はここ４試合、あわやというシュートを毎回放ち、前々節は得点しているが、前半終了間際の、奪ってドリブルで上がり、FW川又堅碁につけたシーンなども、ゲームの展望を明るくする力がある。北九州も同様で、後半４分にはCB金鐘必が奪ってエンドラインまで上がり、端戸にマイナスのクロスを送って決定機を作った。北九州は20歳のCBコンビと21歳のアンカー・新井という若い守備の軸がこのチームのゲームをさらに面白くしている。

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2012.08.23 Reported by 尾原千明