前節の富山戦でオズマールと石津大介が挙げた清々しい3ゴールは、これまでレベルファイブスタジアムに漂っていた閉塞感を一気に払拭してしまったかのようなイメージが残る。しかし、福岡が置かれている状況に変化があったわけではない。城後寿は話す。
「この前の試合は勝って当たり前の試合。それに満足しているようでは次は負けてしまう。この前の試合は忘れて、自分たちが置かれている立場と状況をしっかりと把握して次の試合に臨みたい」
ディテールに目をやれば、喫した2失点は、これまで繰り返されてきた失点と同じ種類のもの。福岡の攻撃が活性化したのは、富山がラインを下げたことに助けられた部分は多く、自らが意図して崩したシーンは少なかった。「自分たちよりも下位のチームに対しても、ああいう勝ち方しかできないのは歯がゆいが、これが今の状況」(坂田大輔)であり、チームが抱えている問題点は依然として残っている。そうしたものと向き合いながら、残る12試合を勝ち続けなければならないのが福岡の立場。非常に難しい状況に追い込まれていることに変わりはなく、相当な覚悟を伴って戦わなければ事態が変化することはない。福岡に余裕を持って戦える試合は、もうひとつもない。
そして迎える相手は、後半戦に入って4勝4分1敗と好調を維持する松本山雅。現在は6戦負けなしで、昇格争いの真っただ中にいる甲府、京都、湘南、東京Vとの後半戦の対戦は2勝1分1敗と互角以上の成績を残している。福岡にとって、もはや松本は新規参入チームではなく、勝点4差を付けられている紛れもない上位チーム。侮れない相手と言うよりも、力を出し切らなければ勝つことが難しい相手だ。
その松本の戦い方はシンプル且つアグレッシブ。豊富な運動量とスピードをベースにして戦うスタイルは開幕以来変わらない。攻撃はロングボールが主体。まず、1トップの塩沢勝吾をターゲットにロングボールを送り、落としたボールに2列目、両サイド、さらにはボランチの選手までもが積極的に押し上げて、人数をかけてゴールを目指す。守備は全員守備が原則。攻から守へ素早く切り替えて全員が自陣内に戻り、ボールホルダーに対して激しくプレッシャーをかけながら、体を張って泥臭くゴールを守る。上下動の激しい、どちらかと言えば慌ただしくも感じるサッカーだが、それこそが松本のリズム。そして、それを90分間やり通すフィジカルの強さを併せ持つ。前節の対戦相手である京都は、このリズムに巻き込まれて敗戦。そして福岡も、前回の対戦時には同じように松本のリズムに引き込まれて引き分けた。
勝敗を分ける最大にして唯一の鍵は、どんなところからでも大きく前へ蹴り出してくるボールに対して、いかに対応するかということ。ここまで26得点(J2で16位)、30失点(同6位)という数字を見れば、松本は守備型のチームに見えるが、前にスピードのある選手を揃えており、ロングボール一発で形成を逆転してしまう力を持つ。前節の京都戦で決勝ゴールを生んだCKは、自陣ゴール前に押し込まれながらも、まさに、ロングボール1本とスピードだけで手に入れたもの。福岡も、前回対戦時に同じ形から先制点を奪われている。そしてまた、直接ゴールにつながらなくても、徹底して長いボールを蹴り続けるスタイルは、相手の陣形を間延びさせ、相手に攻撃のリズムを作らせないという側面も併せ持っている。そんな松本との戦いは、自由に蹴らせないようにボールホルダーに対してプレッシャーがかけられるか、セカンドボールの処理で優位に立てるか、相手のプレスをはがしてボールをポゼッションできるかの3つが大きなポイントになる。攻め急いで、お互いのゴール前を行ったり来たりする展開だけは避けなければいけない。
加えて、どれだけ勝ちにこだわった試合ができるかも大きな鍵を握る。残り試合が12となったいま、勝ち続けることだけが生き残る術となった福岡にとって、チームが抱える問題点の全てを修正する時間も、余裕も残されていない。問題点を抱えたまま、それと上手く付き合いながら、徹底的に勝つことだけにこだわる気持ちが必要だ。
「自分たちは後がない状態。必要なものは勝点3を積み重ねていくことだけで、引き分けもいらないし、ここまできたら内容云々ではない。前節は雨の中、サポーターが試合前から最後まで熱い声援を送ってくれた。あの試合はサポーターが勝たせてくれた。次は自分たちの力で勝ってサポーターに挨拶に行きたい」(城後)
まずは目の前の1試合。全ての力を結集して勝利の雄たけびを挙げるだけだ。
以上
2012.08.25 Reported by 中倉一志
J’s GOALニュース
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