前半の清水は「どうしちゃったの?」と思うぐらい不甲斐ない戦いぶりだった。そこには公式戦4連勝中の自信は見えなかった。そんな状態では、浦和の術中にはまってしまうのも当然のことだ。
ただし、清水が立ち上がりからおかしかったわけではない。DFラインのレギュラーを3人欠いている(カルフィン ヨン ア ピンと李記帝が出場停止、吉田豊がケガ)中で、いつも通り最後尾からきっちりつないで自分たちのリズムを作っていこうとしていた。これがリーグ戦初出場・初先発となった右サイドバックの犬飼智也も、ときおり思い切った裏へのダッシュを見せるなど、堂々とした入り方を見せた。速いパス回しや個の突破で浦和ゴールに迫る場面も少しずつ作れていた。
しかし、11分に浦和が虎視眈々と狙っていたカウンターで突破口を開く。マルシオ リシャルデスがボールを奪って起点になり、左で受けた梅崎司が大きくサイドチェンジ。これをフリーで平川忠亮が受けて右クロスを入れると、パスを出した梅崎が走り込み、ハーフボレーのシュートでゴールネットを揺らせた。
清水の側から見れば、石毛秀樹がボールを奪われた場面も含めて「何人かのミスが重なった」(ゴトビ監督)というもったいない失点。そして、これ機に清水は一気にリズムを崩していく。とくに失点シーンで梅崎のマークを外してしまった犬飼は、その後冷静さを失い、パスミスなども増えてしまう。また、他の選手にも余裕がなくなり、ミスからカウンターを食らうことを恐れたのか、「ボールに顔を出さない、パスコースに足を運ばない感じが目立った」(山本海人)という悪循環。思い切った動きや仕掛け、パスが出なければ、浦和の5バックを崩すのは難しい。
そんな中で、またもミスからPKを与え、早い時間(20分)に2失点目を喫してしまっては、ますます清水にとっては難しく、浦和にとっては戦いやすい展開になってしまう。
一方、浦和のほうは、「相手の前線のストロングポイントは消しつつ、あとは自分たちがここまで積み上げてきたことをやるだけだと思っていた」(鈴木啓太)と、得点前も得点後も自分たちの戦い方に徹していただけ。また、「相手に若い選手がたくさんいる中で、とにかく相手よりも走って、闘うことが、うちのチームには大事だった」(槙野智章)という言葉通り、ボールに対する出足や球際の厳しさで優位に立っていたことも、ゲームを支配するうえで非常に有効だった。
2点をリードした後は、当然リスクを冒さずにカウンターを狙うという傾向が強くなるが、DFラインはある程度高く保ち、高い位置でのボール奪取も狙っていく。けっして守りを固めるだけの戦い方ではなく、清水が1点を返すよりも、浦和が3点目を決めそうな気配のほうが濃いまま、前半45分は終わった。
後半は、ゴトビ監督の強烈な檄を受け、さらに犬飼に代えて高原直泰を投入して、システムを4-4-2に近い形(見方によっては4-2-4)に変えた清水が一気に反撃モードに。高原と金賢聖の2トップで前線にタメを作り、周りの選手も運動量を上げて球際の強さも出し、攻撃の厚みと迫力を増して浦和ゴールに迫った。
そして、後半9分には高木俊幸が惜しいFKを放ち、その後の左CKでも惜しい形を作る。11分にもアレックスがうまく突破してチャンスを作るなど、点が入りそうな匂いがかなり漂い始めていた。
この時間帯に清水が1点でも取っていれば、さらに清水が自信をつけて勢いづき、結果もどう転ぶかわからなくなっていただろう。しかし、そこで浦和が踏ん張ったことが、勝敗を左右した2つめの大きなポイントになった。
ペトロヴィッチ監督のハーフタイムの指示は、「後半最初の15分、とくに集中すること」。浦和の選手たちも指揮官の指示を忠実に遂行し、危ない場面でも複数の選手がボールとゴールの間に身体を投げ出してシュートをブロック。GK加藤順大まで簡単にはボールを通させなかった。
そうして攻めきれない展開が続く中、後半20分を過ぎたあたりから攻める清水の運動量も落ち始め、そうなるとDFライン5枚、中盤4枚で堅固なブロックを作る浦和の守備を崩すのは再び難しくなってしまう。後半36分にアレックスに代えて白崎凌兵、41分に大前元紀に代えて伊藤翔を入れるという交代策も効果を発揮せず、結局2-0のままタイムアップ。清水は今季初のリーグ戦4連勝を逃し、浦和はようやく4月以来の連勝を飾って、首位・広島に勝点2差に迫った。
浦和としては、カウンターのビッグチャンスがいくつかあった中で3点目が取れなかったことは課題となるが、後半の展開は想定内。そこで失点しなかったことは非常に大きく、チームの成長を実感できる価値ある完勝となった。
逆に、ホームで非常に悔しい完敗となった清水のほうは、急造DFラインのハンディキャップが試合の流れと結果に影響したことは認めざるをえないところ。だが、それ以上に残念だったのは、悪い方向に傾く流れに、選手たち自身の力で歯止めをかけられなかったこと。後半のようにリスクを恐れずに攻める能力はあるだけに、自力で立て直す強さを身につけていくことが、J1でもっとも若いチームには求められる。
以上
2012.08.26 Reported by 前島芳雄
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