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【J2:第31節 甲府 vs 横浜FC】レポート:やっぱり強かった横浜FC。でもでもでも、ダヴィ×2ゴールで甲府が逆転勝利。見える人には見える、見たくない人には見えない進化を伴った勝利で甲府が首位キープ(12.08.27)

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0−1と横浜FCにリードを許して入ったハーフタイム、記者室に戻って甲府担当の記者や山梨のテレビやスチールのカメラマンと顔を合わせるとみんな一様に(流れが悪い・・・)、(負けパターンか?)みたいな表情だった。トイレに行ったり他会場のスコアをチェックするなどそれぞれ後半に向けた準備などでバタバタしているからゆっくり話す時間はないのだが、括弧内を声にしないのは――言霊が宿るをの恐れているからかどうかは知らないが――なんとなくそうした方がいいという感覚で共通する人が多かった・・・と思う。去年だったらどうだったか判らないが、後半45分間でどう状況が変わるのか、(まぁ後半だね・・・)という感じで視線を外してバタバタとそれぞれのポジションに戻っていった。2度の昇格と2度の降格を経験して身につけた微妙な感覚と予感。甲府のロッカールームで、「人生をかけてプレーしろ」という言葉を城福浩監督が選手に話していたことは当然知らない。

試合を見る眼を曇らせる一因は、「甲府に勝ってほしい」と思って見ているからで、ピンチはより大きく感じがちになり、甲府のチャンスを過小評価する傾向になりやすい。愛ゆえに真実が見えなくなることもあるのだ。もちろん、結果主義でサッカーを語ればコッチが正しいこともあるが、そうでなくても、それぞれの性格やサッカーを見る眼やサッカー観の違いなどもズレを生む。「勝ってほしい」という思いは、「勝ちたい」と思っているピッチやベンチの選手やコーチングスタッフとも認識のズレにつながることがある。ただ、立ち位置と目的が同じなので(話せば分かる)のだ・・・大抵の場合は。

試合後の会見で横浜FCの山口素弘監督は「(簡単に言うと)ダヴィにやられた感じ」と話したし、横浜FCの担当のある記者も試合前はフレンドリーに話をしてくれたのに、終わった瞬間は2人の間に領土問題か女性問題でもあるかのように関係が冷え込んだ。「ダヴィっていいチームですね」と、(甲府というチームに負けたのではなく、ダヴィに負けたという意味の)皮肉を言って少しはスッキリしたのかこっちの関係はすぐに修復できたが、ダヴィの2ゴールで勝った甲府を、記者は総括しないと原稿が書けない試合内容だったと思う。甲府が勝って首位を守ったことは文句なしに嬉しいのだが、横浜FC側の人たちが言うことを全否定できない印象は持っていたので、後々大変なことにならないように言動を慎重にすることに決めた。会見後のぶら下がりで城福監督に、「山口監督は会見で『ダヴィにやられた』という趣旨の発言をされていましたが・・・ダヴィが点を取って勝つ(課題は日本人選手や2列目の選手がいかに点を取るか)というところまでは(2分けを挟んで)戻った感じですか?」、と山口監督を盾にして質問した。

「え〜、最後はダヴィが点を取ったが、そこに至るまでの2点目の崩しもあるし、井澤惇の決定的シーンとか(あった)。ただ、相手が「ダヴィに負けた」というなら、『そうですね』という感じですね。そう思っているならそうでしょうね。それ以外の何物でもない」との答え。語気は荒くなかったが、答えているうちに少し怒りに点火された感じだった。質問の後半は山口監督の後ろに隠れきれていなかったようなので、認識を城福監督寄りにするために、「(結果的に)ダヴィが点を取って勝ったが、日本人選手が点を取る流れも作りながら、ダヴィのゴールで勝った試合ですね」といった感じで日和見ってみる。ダヴィが2ゴールを決めたけれど、井澤や柏好文のシュートや佐々木翔の名誉挽回ヘッドなどの決定機が鮮明な記憶になってきた。これらの決められなかったシーンだけでなく、彼らの献身的なプレーもちゃんと思い出して評価すべきだという気にもなる。

「自分たちの特徴を如何に出すためにビルドアップをするのか。如何に攻撃を組み立てるのかという我々の普段の努力があるから、『ダヴィで負けた』という言葉を聞いても気にもしない。ダヴィを如何に活かすか、ダヴィ以外の選手を如何に活かすかという努力をやり続けるだけ。周りの方や相手チームがどう思うかは全く興味がない」(城福監督)

「周りの方」に自分が入っていないことを祈っていると、別の記者が「(後半良くなるのなら)フェルナンジーニョを前半から使うアイディアはなかったのか」という趣旨の質問をしてくれたので、山口監督の背中に隠れる必要がなくなった。この質問の答えは「いろいろな状況を見極めて判断するので、横浜FCの積極的な守備(最初の約20分)に対して前半からフェルナンジーニョが機能するかどうかは別問題。彼を最大活かすための配置やタイミングは考えるので、(後半に出て)働けて当然。働ける状況で投入しているからあれだけやって当然」という要約になる。

つまり、結論としては、もっとサッカーを観ないと肯定も否定も自信を持ってできないということ。結果として首位は守ったが、サポーターが掲げた「優勝」のビッグフラッグに応えるための戦いは終盤戦に向けて更に厳しくなっていく。横浜FCは第5節のチームとは比べようもないほどボールを失わない・運べるチームに進化し、選手もサポーターも自信を持ってゲームに臨んでいたが、甲府は先制点を取るような戦いができなければ混戦の昇格レースから抜け出すことは難しい。

横浜FCは成功体験を積み重ねて選手に自信を持たせたことによっていい流れにいるが、ここから先がひとつの壁になるのではないだろうか。ディフェンスラインから縦パス1本でダヴィに出され、堀之内聖が1対1で競り勝てずに許した52分の同点ゴール。保坂がキックフェイントから出した柔らかいパスをダヴィにバチーンと決められた甲府の勝ち越しゴール(73分)が、どれだけのショックを与えたのか、自信を揺るがすには至らなかったのかは判らないが、負けは負け。28分の堀之内の先制ゴールを勝利に繋げることができなかったのは現実。これから対戦するチームにはダヴィのようなゴリゴリFWはいないだろうから、自信を失うことはないのかもしれないが、上位のチームに勝たないと順位を上げることは難しい。 

勢いや自信も必要だがそれを前面に出して最後まで突き進むことは難しく、精度や正確性などをより向上させないと少ないチャンスはモノにできないはず。「諦めが悪いんで諦めない。これからの楽しみが増えた」という言葉で記者会見を締めくくった山口監督。プレーオフ圏内入りと、その先の自動昇格圏内入りに向けて、日常の積み重ね以外に何かをやってくるのか。どんな目算があるのか興味深い。次のホーム栃木戦は大サポーターの声援を受けてプレーオフ圏内入りのライバルを倒して前進したい。一方甲府は、一難去ってまた一難。次はアウェイで3位・大分戦。自動昇格圏内入りを巡る激戦になることは必至。今節は横浜FCの重FW田原豊に手を焼いたが、次節は大分の重FW森島康仁を抑え込まないといけない。ゴール裏の人数では勝てなくても「優勝」を目標にする自信と覚悟で勝点3をもぎ取ろう。

以上

2012.08.27 Reported by 松尾潤
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