「結果を出さないといけない戦いだと認識して戦うこと。前回は負けて悔しかったけど、見に来てくれたサポーターもそういう気持ちにさせてしまった」(坪井慶介)
ダービーが他の試合とは違うものだということは選手たちも理解している。前回、浦和は大宮に0−2で敗れた。ミハイロ ペトロヴィッチ監督が就任してからまだ7試合目、チームの完成度などまだ望めない時期に喫したまだ2つ目の黒星。それまで4勝1分と結果を出していたなかでの1つの躓きであり、敗れはしたものの内容的にもそこまで悲観するものでもなかった。
しかし、試合後には一部サポーターから敗戦という結果に厳しい反応があった。柏木陽介は「自分たちのサッカーが出せなくて負けたなら仕方ない。(サポーターの厳しい反応に)分からない部分もあったけれど、それだけダービーの重要性を改めて感じた試合だった」と振り返る。監督、選手たちがダービーの持つ意味を思い知らされた出来事だった。
ダービーには必勝態勢で挑む。チームが動き出したばかりのあの時とは違うという思いもある。「前回戦った時はまだチームの完成度が高くなかったし、自分も力になれていなかった。でも、今はあの時とは違うし、仕上がりも全然異なる」。槙野智章はチームが成長したところを見せつけると意気込んでいる。
現在3位と優勝も狙える位置にいる浦和とは対照的に、大宮は17位と苦しんでいる。シーズン途中で監督も変わり、「守備からカウンターを狙ってくるのはわかっている」と槙野が話すようにリスクを抑えた戦い方で勝点を稼ごうとしているが、ここ10試合で2勝2分6敗と思うような結果は出ていない。
しかし、ことダービーに関しては、そういった現状など関係ないということを浦和はこれまでも見せつけられてきた。大宮は毎年のように残留争いに巻き込まれる苦しい戦いを強いられているが、浦和戦では別チームに変身する。J1での対戦成績では大宮が6勝4分5敗と勝ち越している事実からも、そのことは窺える。
柏木が「大宮はダービーになると力が倍増する」と話すように、大宮は浦和戦になると潜在能力を引き出して挑んでくる。「直近のデータは関係ない。もしかしたら、18チームのなかで一番危険なチームだと思うくらいでないといけない」と槙野も警戒を強めている。
これまで“レッズキラー”としてダービーで何度もゴールを決めてきたラファエルの移籍は、浦和にとっては朗報だ。ラファエルはその名の通り、大宮にとっては癒しの大天使だったはずだ。宿敵の浦和が毎回のように困っている姿を見て、サポーターが日々のリーグ戦で溜まった鬱憤を晴らしていた部分もあるだろう。
だが、浦和には悪魔に映ったラファエルがいなくなったからといって油断は禁物だ。新加入ノヴァコヴィッチの存在。「Jリーグでは近年まれに見るポテンシャルの高い、とても怖い選手が来た。日本の暑さはキツイかもしれないけど、レベルはちょっと抜けている。ストロングポイントは足元の技術。ボールのないところの動き出し、ドリブル、シュート、1つではなくすべてのポテンシャルが非常に高い。リーチもある。なおかつケルンではFKも蹴っていた」。1.FCケルン時代、ともにプレーしていた槙野の口からは次々と賛辞が飛び出してくる。
大宮はカウンター狙いで挑むにしても、あるいは積極的に攻勢に出るにしても、ノヴァコヴィッチの力を生かそうとしてくるはずだ。「時間とスペースを与えてはいけない」とは槙野。浦和は新たな天敵を生み出さないためにも、初顔合わせの時に嫌なイメージを植えつけておきたい。
浦和は今シーズン初の3連勝がかかっており、勝てば首位浮上の可能性もある。大宮はこれから熾烈になっていく残留争いに向け、とにかく勝点が欲しい状況だ。ダービーということを抜きにしても、両者にとって非常に重要な一戦。今回も激しい戦いになりそうだ。
以上
2012.08.31 Reported by 神谷正明
J’s GOALニュース
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