C大阪が新潟を1-0で下した。後半36分、ゴールキックからつないだボールを、FW柿谷曜一朗が決めた。新潟は立ち上がりからボールを保持するが、ゴール前での精度を欠き、シュート6本に終わった。
柿谷が誇らしげにガッツポーズを作ると、アウェイ側スタンドのC大阪サポーターからはこの日一番の歓声が上がった。
「走る距離が長かったが、うまくシュートできた」。後半36分、キム ジンヒョンからのGKを途中出場のFW杉本健勇が相手DFと競りながらそらす。それを拾った柿谷は一気にゴール前に迫った。
リスタートの隙を突き、シンプルに縦を狙った。「裏を狙う意識がなかったらできなかった」。自画自賛するプレーで、最後はロンドン五輪代表の新潟・鈴木大輔のブロックを交わしてたたき込んだ。
ゴールは狙っていた。その前段階の準備も怠らなかった。ツートップを組むケンペスよりも、やや下がり気味に位置してボールをさばく。出し入れ、キープをしては常に飛び出しを狙った。「真ん中で回せば、サイドが空く」。自らが起点になることでチームを活性化させることを重視した。
決勝点はその形とは違った。ただ、アシストした杉本健勇が「柿谷さんがいいところにいてくれた」言うように、組織的に動いていた積み重ねが、チームメートとの好連係を生んだ。その結果の得点だった。
この試合はレヴィー・クルピ監督の復帰初戦。勝利をプレゼントすることになった。プロ入り2年目から昨季まで師事した指揮官には、ときには厳しく指導された。恩師不在になった今季、6月からスタメンに定着すると、ここまで6得点。7得点目は「一皮むけた」と目を細めさせるゴールだった。
「監督が復帰してうれしい。これからも得点して、信頼されたい」。自信とともに、チームの上昇にも手応えを感じていた。
新潟は一発に泣いた。リスタートの場面、足が止まったところをあっさりとゴール前に運ばれた。「ロングキック一本でやられた。ああいうのが一番ダメ。自分もはっきり指示しなければならなかった」。GK東口順昭が強い口調で言う。「追いつけたが、ボールを巻き込んでしまった。クリアできた」。柿谷とゴール前で競り合い、交わされた鈴木も厳しい表情だ。
立ち上がりからC大阪の攻撃は寸断していた。中盤、最終ラインでボールを奪うと、前線にスムーズにつないだ。クロスはきっちりはね返した。「やられたのはあの場面だけ」(東口)。リスタート時の反応、ゴール前での明確な連係。細部のほんのわずかなあいまいさが致命傷になった。
「もったいない試合をしてしまった」。柳下正明監督が言うように、勝機は十分にあった。ゴール前で形は作った。ただ、そこからの一本がでない。ラストパスをカットされては、カウンターにつなげられた。「ゴール前でのミスが多い。そこからリズムを失った」(柳下監督)。攻めても得点につながらない。その繰り返しが、精神的、体力的なダメージの蓄積となった。
新潟は勝点24で16位のまま。C大阪も14位と順位は変わらなが、勝点29で降格圏内からは一歩離れた。新潟は気持ちを切り替えて立て直しを図り、C大阪は勢いをつなぐ。天皇杯をはさんで迎える次節は、両者にとって大きな意味を持つものになる。
以上
2012.09.02 Reported by 斎藤慎一郎(ニューズ・ライン)
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