「この先、上位に行くか、下位に下がるかが決まるぐらい大事な試合だと思う」
浦和レッズ戦について聞くと、栗原勇蔵は開口一番そう言った。リーグ戦２連敗中の10位・横浜Ｆ・マリノスは、「天国と地獄」の岐路に立っていると言えなくもない。それほど重要度の高い一戦だ。

横浜FMの不調の原因は明快。リーグ戦で続く５試合連続２失点以上の数字が物語る。鉄壁を誇っていた守備にできた綻びが、なかなか修復できていない。ただし、その要因は把握している。
「単純なミスをしないというところと、前掛かりの時にクロスからの失点をしてしまうところを、もう少しケアしたい」（中澤佑二）。
前者については、個々が注意を喚起するしかない。より問題なのは後者の方。リスクマネジメントの曖昧さが気になる。サイドバックが攻め上がった裏を突かれ、センターバックがサイドに引っ張られ、中央が手薄になるケースが多い。前節、Ｆ東京のルーカスに決められた２失点目などが、その最たる例だ。浦和戦では、左サイドの梅崎司、右サイドの平川忠亮に裏を取られないことが、失点防止の第一関門となるだろう。

３位・浦和にとってこの一戦は、ペトロヴィッチ監督が指標とする攻撃サッカーの成長度を示す試金石だと言えるのではないか。前回の対戦では、低い位置でコンパクトなスリーラインを保ち続けたトリコロールの堅城の前でもがき、１−２で沈んだ。あれから約４か月、進化を確認するには絶好の相手だろう。
ただし直近、１日の大宮アルディージャ戦、久々の黒星を喫した８月11日のヴィッセル神戸戦（０−１）をフィーチャーすると、守備でハードワークを課す相手が苦手な印象は拭い切れていない。粘る相手をどう引き剥がして攻め切るかが、当面の課題である。
「浦和のウィークポイントは把握している」（栗原）という横浜FMも、前回同様、守備重視の姿勢で臨むはず。まして相手は、失点がかさむ現状を打破しようと、より慎重にディフェンス包囲網を張るに違いない。その網を切り刻むことができれば、結果以上に優勝へ向け、大きいな一歩が踏み出せそうだ。

それらを踏まえて、今節イチオシのマッチアップは、兵藤慎剛と柏木陽介によるバイタルエリアでの攻防。５月の対戦時では、ボランチ兵藤のバックプレスが秀逸だった。それでセンターバックと上手くサンドし、相手２シャドーに仕事をさせず、相手の攻撃を無力化した。片や当時の柏木は足をケガしており、万全な状態ではなかったとはいえ、兵藤らの守備に手を焼き、沈黙。前半のみでピッチを退き、「結果を出せなかった自分が悪い」とキッパリ。今節、トリコロールの相手を前にして、燃えないはずがなかろう。加えて兵藤は「浦和のキーマンは柏木選手」と警戒。お互いの主軸２人が繰り広げるバトルが、主導権争いを左右する！

以上

2012.09.14 Reported by 小林智明（インサイド）