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【J1:第25節 広島 vs 仙台】プレビュー:史上初となるビッグアーチでの首位決戦。今季の優勝戦線を左右する闘いは、熱戦必至。(12.09.15)

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今日の広島ビッグアーチは、静かだった。時折、会場設営のための作業車がトラックの端を行き交い、取材に訪れた報道陣の声を落とした言葉が聞こえるくらい。広島の選手や監督が練習しているピッチ付近を除き、ビッグアーチは静かだった。

前日練習に特別なメニューはなかった。和やかなムードでの鳥かご(円になったパス回し)からアジリティを高めるトレーニング。セットプレーにミニゲーム。1時間あまりの間、いつものように時間はよどみなく流れた。ミニゲームでゴールを決めたのは、青山敏弘・高萩洋次郎・森崎浩司・森崎和幸・大崎淳矢。コンビネーションからの得点もあれば、強烈なミドルシュートもあった。だが、それもまた、特筆すべきことではない。

ただ今週、広島が過ごしてきた1週間は、やはり特別だった。それは首位決戦ということもあり、連日多数のメディアが取材に訪れたという意味で一つ。さらに先週、四国リーグのFC今治に敗れるという恥辱を受けた選手たちが、週明けのトレーニングから激しい闘志をピッチにぶつけたことが、特別な雰囲気をさらに加速させた。
これまでも広島は質の高いトレーニングを続けてきたし、今季の順位がそれを象徴している。だが今週は、いつもよりもさらに、激烈だった。強烈なスライディングで足下を狙い、身体と身体をぶつけあってボールを奪い合う。闘志をむき出しにして走り、厳しい言葉をかわしあった。「仙台戦で自分たちの闘いをしっかりと見せないと、サポーターにはもちろん、試合に出られなかった若手にも示しがつかない」。火曜日時点における森脇良太の言葉である。
広島は練習時、半分よりも少し広い程度の感覚でコートを設定している。それは常にプレッシャーがかかった状況をつくりだすための工夫だが、そんな中でも選手たちは縦横にコンビネーションを駆使してゴールを割った。特に、シーズン得点のクラブ記録(19点・ハシェック)まであと1点と迫った佐藤寿人の動きは、まさにキレッキレ。あっという間に相手のマークを振り切る動きだしの速さと質は、コートの狭さやマークのタイトさも全く問題にしない。「ヒサは必ず得点をとってくれる」(森崎和幸)「相手にとって一番怖い選手が、ウチにはいるから」(青山敏弘)。チームメイトから絶対的な信頼を受けるエースが7月以降の8試合で6得点を積み上げている好調ぶりこそ、広島の支えだ。

今季、対仙台の戦績は、カップ戦を含めて1分1敗。アウェイでのリーグ戦では今季最高の死闘を演じ、「これぞサッカー」という魅力を満天下に知らしめた。だが、それでも彼らに勝てなかったことは事実。広島の対仙台戦の戦績は1勝6分3敗(リーグ戦)と分が悪く、最近は3試合連続の引き分け。分析に長けた手倉森誠監督によって広島のストロングポイントが消され、ロースコアの闘いに持ちこまれる。過去3年間・5試合で記録した得点は、広島が4で仙台が3。それが、このカードの歴史である。
もちろん、総得点数で3位(広島)と4位(仙台)を維持しているチーム同士となれば、互いに攻撃的な持ち味を存分に発揮しあったユアスタでの死闘の再現も十分に期待できよう。広島には佐藤の他にも高萩洋次郎・森崎浩司・石原直樹というタレントがいるし、仙台にもウイルソン・赤嶺真吾・梁勇基・太田吉彰と危険な選手をそろえている。ただ、広島はともかく、首位・仙台の立場からすれば、「アウェイで負けなければいい」という発想もありえるわけだ。もちろん、持ち味のプレッシングは仕掛けるだろうが、リスクを冒してまで前に出ることは考えにくい。広島に「佐藤寿人」という裏取り名人がいることもあり、「スペースを消す」守備の構築を知将・手倉森監督がプランしても、戦術的な柔軟性の高い仙台ならやり遂げられるだろう。それに仙台には、総得点の40%に迫る「セットプレー」に加え、「カウンター」という伝家の宝刀がある。「攻撃に出ないといけないのは広島。出てきたところをついていきたい」と赤嶺が語る速攻がはまれば、守備を重視した闘いからでも十分に広島を窮地に追いつめることができるはずだ。

クラブ創設20周年にして史上初となる「J1首位決戦」を迎える広島ビッグアーチは、今はまだ、静かだ。選手たちも帰路につき、美しいピッチは休息に入った。しかし明日の夜は間違いなく、スタジアムは大歓声で包まれる。すでにサポーターズシートが売り切れとなり、2万5000人の大観衆が詰めかけることも予想される明日の大一番を控え、今季ここまで11アシストとJリーグ最多の数字を誇る高萩洋次郎は、静かに語った。
「まず、試合に勝つこと。そして終わってからの帰り道、たとえ時間がかかったとしても、試合の話を楽しく振り返ることができるようなゲームをお見せしたい」
1994年チャンピオンシップ以来の大一番は熱戦必至。歴史の目撃者として、ぜひ現場で参戦してほしい。

以上

2012.09.14 Reported by 中野和也
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