福岡がレベルファイブスタジアムで戦える試合も残り５試合。３月４日に熊本との「バトル・オブ・九州」で始まった2012年シーズンも、いよいよ終盤を迎えている。

福岡は、ここまでホームゲームを16試合戦って５勝７分４敗。熱い声援を送り続けるサポーターに、志向する「攻守に渡って主導権を握るサッカー」を披露できず、今も開幕当初からの課題を抱えたままでいる。昨シーズンまでのカウンターサッカーから、ボールをポゼッションしてゲームをコントロールするサッカーへの転換期にあるチームは、少しずつ自らを変えようとはしているが、正直に言えば、その進捗状況は順調とは言い難く、１年でＪ１に復帰するという目標もかなり厳しい状況にある。しかし、このままではシーズンは終えられない。「2012年シーズンが、どういうシーズンだったのかというインパクトを残さなければいけない。これからは、今までやってきたことをパワーアップする時期。粘り強く戦い、諦めないことを示す試合にしたい」と前田浩二監督は話す。

プロであろうと、アマチュアであろうと、残されている可能性の一番高いところを目指すのは、アスリートとして当たり前のこと。それを実践するだけではなく、自分たちが目指していたサッカーがどのようなものであるのか、それをサポーターの前に形と結果で示すこと。それが、残された試合で福岡に求められていることだ。
ここまで、攻守に渡って起点を務めていた鈴木惇が出場停止であることに加え、左サイドで攻撃のアクセントとなるキム ミンジェも出場停止。成岡翔が前節の東京Ｖ戦でコンディション不良で出場を回避するなど、福岡にとっては難しい状況もあるが、それでも、変わらぬ力を発揮してこそチーム。スタジアムに集う人たちは、内容と結果を求めている。

結果を求められているという意味では、対戦相手の町田も同じだ。第33節を終えて５勝８分20敗の成績は最下位。今シーズンからJFLとの入れ替えが行われる状況の中、残留に向けての厳しい戦いが続いている。
志向するサッカーは福岡同様にボールポゼッションサッカー。しかし、パスをつなぐ精度は高まりつつあるが、それがゴールという結果に結びついていない。前節の松本戦では、先制点を奪ってカウンター狙いの松本に対し、ボール支配率では上回ったが、相手の守備を崩す効果的な攻撃を組み立てられず、逆に、松本の狙い通りに失点を重ねた。「取られた瞬間の向こうの切り替えの早さに負けた。ちょっとみんなの判断が遅かったのかなと思う」と藤田泰成（町田）は振り返る。攻守の切り替え、ボールを持っている時のリスク管理、ゴール前でやりきること等々、基本的な部分での課題を整理しきれずにいる。

さて、そんな両チームの対戦でポイントとなるのは、いかに守れるかということ。総失点数ではＪ２ワースト２位の福岡（52）と、ワースト３位の町田（50）の戦いだが、後半戦だけを見れば、27失点の福岡はＪ２ワーストで、町田の18失点を大きく上回る。その数字からは、相手云々ではなく自分たち側の問題として守備の課題が存在していることがわかる。一方の町田は総得点数でＪ２ワースト（15）。失点数は減少傾向にあるものの、１試合当たりの得点数は１点に達しておらず、勝利を手にするためには無失点が必要な状況にある。我慢強く戦いながら、どこまで無失点の時間帯を伸ばせるか。それが勝敗の行方を左右しそうだ。

そして、いつものことだが、福岡はスタンドも含めて、監督、スタッフ、選手、そしてサポーターがひとつになって戦いたい。中２日、しかも前節をアウェイで戦い東京からの移動を伴っての試合では、疲労の蓄積は否めない。また課題を整理する時間は与えられておらず、戦術的に上積みすることも難しい。そのような状況下で勝利を得るためには、自分たちの現状を真正面から受け入れた上で、足りない部分を総力戦でカバーすることが必要だ。
福岡がホームのサポーターとともに戦えるのは、時間にしてあと450分。無駄に過ごせば、あっという間の時間。しかし、何かを起こすだけの時間は残されている。どのような試合展開になろうとも、勝利の想い、Ｊ１昇格への想い、そしてチームへの想いをピッチとボールにぶつけて戦いたい。レベルファイブスタジアムは福岡の聖地。その場所で、自らの存在を示すことが、今の福岡に求められている。

以上

2012.09.16 Reported by 中倉一志