水戸に乗り込んだ33節、熊本は2点を失って敗れた。天皇杯2回戦で岐阜を降して3回戦にコマを進めたが、リーグ戦は北九州戦に続いて連敗。延長まで戦ったとは言え天皇杯も含めた直近の3試合で7失点と、守備の問題が浮かび上がっている。高木琢也監督は15日の練習後に前節について触れ、「気迫でも、ボールへの執着心でも相手が上回っていた」と述べた。立ち上がりから再三クロスを許す場面が目についたが、これについても「寄せきれていない」と話す。

順位表に目をやれば、プレーオフ圏内の6位・京都との勝点差は18。現実的には、残りの9試合を戦い終える前に上位のクラブが勝点を積み上げていけば、試合数から算出できる最大勝点を加えても6位に届かない事態になりうる。そうした状況を抜きにしても自らが勝点を加えていくことが大前提。連敗を止めること、『バトル・オブ・九州』での今季初勝利を挙げることも結果としては大事だが、それはあくまで目の前の相手に――それが実際に昇格争いをしている、しかも過去には日本一のタイトルを取ったことがあるクラブであろうと――勝ってこそ。迎えるのは大分だ。

その大分、天皇杯では熊本同様に延長、さらにPK戦を戦って水戸に敗れたが、前節は京都に対して2−0と快勝して3位に浮上。内容的には決して圧倒していたわけではなく、シュートやコーナーキックの数にも表れている通り、むしろ押し込まれている。それでも守備で踏ん張って無失点に抑え、決めるべきところでしっかりと決めた。西弘則のシュートのこぼれを為田大貴、そしてカウンターからチェ・ジョンハンと、大分の2得点は熊本が水戸に喫した失点の形とほぼ同じ。この勝負強さこそ、大分の現在の順位を裏付ける要因と言える。つまりは今節も、そうしたミスが勝敗を左右する可能性は低くない。

もちろん、トップの森島康仁や高松大樹の高さと強さ、さらには西、為田らのモビリティなど、警戒すべきキャラクターが大分には揃い、当然、彼らは抑えなくてはならない。しかし熊本にとってそれ以前に鍵となるのは、前節の水戸戦、さらに前々節の北九州戦でも発揮できなかった、原点の部分でしっかりと戦えるかどうか。すなわち、球際のボディコンタクトで負けないことであり、セカンドボール争いで少しでも先んじることであり、攻守の切り替えで相手を上回ること。
「サッカーは局面の積み重ね」と高木監督が話すのも、そうした意味を含んでいると思うが、たとえば誰かがミスした時には、別の誰かがフォローし、リカバーする。そのための準備、判断を整える。その積み重ねがまた、先に触れた“勝敗を左右しかねないミス”によるダメージを減らすことにつながっていく。
熊本にとって具体的なポイントとなるのは、水戸戦でうまくいかなかったサイドの守備。大分のシステムを考えれば3バックの両脇のスペースを狙うのは定石で、タッチライン際の攻防で主導権を握った方に試合の流れは傾く。前節については「選手間の距離が悪かった」との声も聞かれたが、できるだけ高い位置でボールを奪い、数的優位を作って押し込むためにも、前後だけでなくボランチも含めた距離感やポジションバランスが重要になる。ボールを奪い、いい距離感を保って攻撃に転じれば「二重、三重と厚みが出せる」（大迫希）反面、プレッシャーもはまらずにずるずると押し込まれれば「深い所まで運ばれて、クリアしても拾われてまた守備という流れになってしまう」（南雄太）。大分に攻撃の起点を作らせず、自分たちの攻撃の質を上げるためにも、サイドの主導権は譲れない。ボールへのクイックなアプローチとそれに伴ったディフェンスの連動が求められる。

もうひとつ注目したいのは、ゲームの流れや場面に応じた判断ができるかどうかだ。前節出場停止だった藤本主税は、「画面で見る印象とピッチでの感じ方は違うけど」と前置きした上で、こう話している。
「そこでその判断はどうかなっていう場面はあったね。ミドルも悪くないんだけど、むやみに打って取られれば、守備の時間が増えて失点のリスクが増す。逆にやり直せば攻撃の回数を増やせる。ボールを持っている時は（点は）取られないんだから、もうちょっと落ち着いてもいい。0−2っていうスコアは確かに大きいけど、いい場面もあったから、大丈夫。だいじょうぶ」

中2日という日程も考慮し、高木監督も一部先発を入れ替える可能性について示唆していたが、いずれにしても、ダービーはチーム、クラブ、そして地域同士の総力戦。台風が接近しているなか、大分サポーターも大勢訪れるだろうが、ホームの力を見せつけたい。

以上

2012.09.16 Reported by 井芹貴志