こっち(甲府側ミックスゾーン)で聞いたことを、あっち(鳥取側ミックスゾーン)でも聞いて、そしてまたこっちに戻って確かめに聞きに行ったけれど、どうも噛み合わない。あっちで美尾敦との話が長くなってしまい・・・というか、甲府で愛された選手だったから、いろんな人が美尾に話しかけなかなか話が進まなかった。
記者「久々に小瀬(山梨中銀スタジアム)でやってどう感じた?」
美尾「ずっと鳥肌だったし、感謝しても感謝しきれないクラブなんで・・・」
外野A「お〜美尾、お前が頑張るから勝てなかったよ〜」
美尾「しぶとく頑張りましたよ」
記者「ずっと4−4−2でやってきて、前節から4−3−3?」
美尾「4−3−3気味の4−4−2もあったし、FWを縦の関係にして、ワイドが高い位置取るのもあったけど・・・」
外野B「美尾!ハーフタイムに戻って来るときにテレビに歯をアップで撮られてなかった?」
美尾「そればっかりやん」
美尾「それで、最近はトップ下が2枚気味で、(相手の)ボランチにトップ下2枚がついて・・・」
多少、会話を脚色しているが、こんな感じでみんなが美尾と話したがるから諦めて甲府のミックスゾーンに向かおうとすると、「エエように書いとってよ。俺の話多めにね〜」と美尾。やっぱり今も愛されキャラ。神奈川県横浜市出身(湘南ユース出身)とは思えない関西人キャラ全開だった。
で、こっちに戻ってきた時には甲府の選手はほとんどバスの中で、こっちのミックスゾーンはガラガラ。バスの近くで盛田剛平と話すも「なんとなく全体の(試合の)入りがボーとした感じが少しあったかもしれない。相手のFWがフレッシュだったことは関係ない。自分たちの問題」などと、あっちの話とは合わないし、悔しい気持ちが強いのかいつものような会話にはならない。「はぁ〜」「はぁ〜」「はぁ〜」と、ため息は出てもアイディアは出てこない。鳥取戦は一体何だったのか。どう評価すればいいのか。選手の話でも結論が出ないし、自分で出すのも難しい。こっちの頭はボンヤリしたまま。
試合前の記者室は、千葉が北九州にホームで0−3で負けたことと湘南がアウェイで岡山に前半だけで0−3でリードされていることを知って、「どうなってるの今節?」という雰囲気だった。
前半のキックオフ時に虹が架かっていたので吉兆を感じていたし、その後の内容も甲府の主導権でゲームが進んだし、甲府のミスに対して鳥取もミスで助けてくれるなど甲府ペース。視野の広い美尾からのラストパスだけは怖かったけれど、勝てそうな気分でいた。
しかし、城福浩監督が言うように首位に対するモチベーションと、降格に対する強い危機感を持って挑んでくるチームと戦う難しさはある。今節はその両方。そして、甲府は首位にいるといっても去年のF東京や一昨年の柏のように絶対的な戦力で首位に君臨しているのではないという現実もある。「ダヴィと(途中加入の)フェルナンジーニョがいるじゃないか」という声が県外から聞こえてきそうだが、2人ともチームに来れば自動的に活躍してくれる選手ではなく、彼らを活かすための工夫をしているから今があるわけで、ダヴィを活かせなかった去年の甲府がどうだったか思い出してもらいたい。リーグは違うけれど。
25分の小井手翔太の先制ゴールは冨田大介のイージーミス。鳥取の前線からのプレスにチームとして耐え切れずに招いた失点だとは思わない。迷いなくワンチャンスをモノにした小井手が素晴らしかった。甲府の守備は8月後半あたりから安定感が高まっていたが、それゆえに徐々に研究もされてきているのかもしれない。今節なら、鳥取の3トップの中央には久保裕一というポイントを作れる選手がいたし、サブの福井理人も同じ。ヘッドもフィジカルも強い1トップへの対処が今後の守備のポイントになるかもしれない。
ミスからの失点が重くのしかかるかと思ったが、43分に山本英臣がダヴィとのワンツーで同点ゴールを決めたので、25分の失点のショックは大分薄らいだまま後半を迎えることができた。
前半の攻撃がフィットしなかった甲府は、4−2−3−1から4−4−2に立ち位置を変えて臨み、セカンドボールを拾えるようになり攻撃に連続性も出てきた。対して、鳥取は前からのプレスを掛け続けて自分たちのスタイルで戦い続けていたが、ボールを前に運ぶ力はなかなか出せなかった。終盤に奥山泰裕ら攻撃的な選手を投入するも、カバーリングの連携がいい甲府の守備を崩すまでは至らない。特にサイドバックの佐々木翔は、ヘッドは恐ろしく強いし粘っこくやる守備も試合に出れば出るだけ向上しているから、奥山も切り返しのスピードだけでは抜けないしクロスも入れにくい。クロスの精度が高くなればインテルの長友佑都のような選手になるかもしれない。甲府がJ1に行きたい理由はいくつもあるが、J1のアタッカー相手に佐々木が成長する姿を見たいということもその一つ。6位・京都と7位・東京Vより上位のチームが負けていただけに、甲府はJ1昇格を加速するチャンスだったのだが、鳥取の我慢強い守備を最後まで崩すことができなかった。2位湘南との勝点差を4から5に広げたことを受け入れよう。
前日練習後にある選手が、「監督から鳥取の4人を相手にするか、8人を相手にするか〜という話があって」という感じのことを言ったので、それを城福監督に「何のことですか?」と聞いたものの、ICレコーダーがいっぱいで後半部分が録音されておらず、録音しているという安心感から記憶もあやふや。試合後の囲み取材で「鳥取が4−3−3ではなく、4−4−2で来ると想定しての話だったのですか」と、もう一度聞いた。「鳥取はフィールド10人のうち、2トップ以外でも8人でものすごく献身的に守る。ただし最終ラインに関して言うと守れないのではなく、裏のケアもしないといけないので、そうしないといけないところにボールを運べば、もっと我々の個性が出せると思っていた。そうするためにどういうポゼッションをするのか。みんなで意識したがウチの最終ラインのポジショニングの取り直しは良くなかった。〜〜中略〜〜。ただ、相手も死に物狂い。(この難しさは)首位に立ったチームにしか分からない」という答えで「???」。やっぱり数字を合わせられない。4は4バックのことだと思うが、8は未だに謎。ともかく、大事なのは次。勝っても負けても引き分けても次が大事。これは鳥取も同じで、この勝点1の価値を高めるのが次節。甲府は謙虚でありつつも、首位にいる自信と覚悟を持って次節に臨む。
以上
2012.09.18 Reported by 松尾潤













