ともに惜しみない拍手を選手に贈った。鳥栖はリーグ3連敗となったが、スタンドからは大きな声援と拍手が贈られた。名古屋は3試合ぶりの勝利となり大挙して詰めかけたサポーターから声援と拍手が贈られた。結果と内容には、それぞれ違うものを感じながらも、佐賀県総合運動場陸上競技場の試合後は、大きな拍手と声援が贈られた。
この試合の結果と内容を分けたのは“空中戦”への対応。鳥栖も名古屋も、高さには自信があるし、これまで幾度となくその高さを使って結果と内容を出してきた。
FW豊田陽平(鳥栖)とDF増川隆洋とDFダニエル(ともに名古屋)は、最後までボールを得ようと身体を張り合った。FW田中マルクス闘莉王(名古屋)とDF小林久晃とキムクナン(ともに鳥栖)も同様である。そこには、数センチの身長差とジャンプ力の戦いだけではない駆け引きが行われていた。相手よりも一瞬早く飛ぶことで、相手より早くボールに触れることができる。相手に身体を預けながら飛ぶことで、相手のジャンプ力を抑え込むことができる。相手よりも前に身体を入れることで、相手のタイミングを奪うことができる。こんな状況を、鳥栖陣内でも名古屋陣内でも90分間行い続けるのである。そこで得た優位な状況から、味方がセカンドボールを拾って攻撃へとつなげていく。この状態を続けることで、相手の守備ラインを下げ、体力を奪い、主導権を徐々に得ることができる。まるでボディブローのように…。
前半7分に、名古屋は最初のCKを得た。ここから、13分までの間に5本のCKから鳥栖のゴールを脅かしていた。ゴールこそ得ることはできなかったが、鳥栖の全選手を自陣ゴール前に集結させクリアボールを2次攻撃につなげることはできた。24分と25分にも連続してCKを得て、鳥栖ゴールを脅かした。そして、CKが結果になったのは、45+2分のCK。
左CKからFW小川佳純がゴールに向かって放物線を描くボールをゴール前に入れた。ここにヘディングに自信がある選手が集中する。GK赤星拓も手を伸ばしてジャンプをするが、密集となってボールは混戦の中で弾んだ。これをFW永井謙佑が右足で蹴り込んでの先制点だった。高さを生かし、永井謙佑のストライカーとしての反応で奪ったものだった。
追加点も同様に、名古屋の選手の“個”の能力の高さを見せつけた。67分、右サイドで永井が一瞬のスピードで鳥栖DFをかわし、鳥栖ゴール奥にクロスボールを送った。闘莉王が胸でボールをコントロールし、中央に走り込んだMFダニルソンが冷静に決めて鳥栖を突き放した。3点目もFW玉田圭司のパスから、闘莉王が技ありのゴールだった。それぞれの選手が、それぞれのフィジカルとテクニックを駆使しての得点だった。
鳥栖がペースをつかむチャンスは、後半に入ってだった。「前回の対戦で、思ったよりも飛んだし正確だったので特に気を付けた」(増川隆洋/名古屋)と言わしめたMF藤田直之のロングスロー。54分から連続して入れたボールで名古屋ゴールを脅かしたが、追撃の火ぶたを切ることにはならなかった。しかし、後半だけで入れたロングスローは8本、CKを得ることができなかった鳥栖にしてみれば、反撃の武器とはなっていた。
そして、鳥栖らしい得点が生まれたのは90+5分のこと。途中出場のFW野田隆之介のプレスからボールを奪い、MF水沼宏太とDF金民友を経由して、最後は野田のヘディングで奪ったものである。連動した守備と攻撃を最後の最後に見せてくれたことで、次の試合への期待と変えることができた得点だった。
終わってみると、1-3と名古屋の快勝ともいえるスコア。そこには、3試合ぶりの勝利を願う名古屋サポーターの想いも通じていた。「この試合で重要だったのは結果」と、試合後にGK楢崎正剛が代弁してくれた。
敗れた鳥栖のサポーターも、悔しさをかみしめて選手たちに拍手を送った。「僕たちは、どこと戦っても格上が相手。初心に戻って…」という小林久晃の言葉は、サポーターへ通じている。初めてのJ1リーグでの戦いで、前節まで連敗がなかったことを考えると大健闘ともいえるはず。残り5試合で、選手もサポーターもまだまだ学ぶことができるのである。「やろうとしている所はできているし、下を向く必要はない」と試合後にMF高橋義希が語った言葉は、次節への選手の決意とサポーターの想いである。
末尾ではあるが、鳥栖のサポーターに少しだけ触れておきたい。
今節は、佐賀県総合運動場陸上競技場での試合だった。前回の開催(第7節・新潟戦)では、5432人しか入らなかった。しかし、今節は11851人ものサポーターが駆けつけた。クラブも様々なイベントを用意し、少しでも楽しんでもらおうとの配慮が見えた。試合には負けてしまったが、それでも試合後には大きな拍手で選手をいたわった。試合前には、名古屋のサポーターにスタジアム一体で大きな拍手でエールを送り、試合中には常に選手を鼓舞し続けた。
「初めて佐賀に来たけど、温かく迎えてくれていい思い出になりました。鳥栖も、最後まで頑張ってください」とご年配の名古屋サポーターからお礼を言われた。「そう感じられたのは、スタジアムに駆け付けた鳥栖のサポーターの誠意が伝わったからです。そのお気持ちを鳥栖のサポーターに伝えます」と言ってお別れした。サポーター同士はつながっているし、サッカーファミリーは確実に広がっている。サッカーを通して、人の優しさに触れた瞬間であった。サッカーは、万人が楽しむことができるスポーツである。
以上
2012.10.21 Reported by サカクラゲン













