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【祝J2優勝!】特別寄稿:3回目のJ1昇格を初のJ2優勝で決めた甲府。ギリギリでクタクタのゲームだったが、これが今年の甲府の戦い方(12.10.22)

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今、松本や岡山が真っ只中にいるJリーグの青春時代は過ぎ去ったけれど、甲府は3回目のJ1昇格を、初めてのJ2優勝で決めたことで、新しいステージに進むことができそうな気がする。それがどんなものになるのかはわからないけれど、現場の選手・スタッフとフロントだけでなく、スポンサー、地域と行政、そしてサポーターが一体になって来季を創らないと、今回の優勝はいい想い出として過去のものとなってしまって、ずっと先の未来には影響しないのではないだろうか。過去にJ2で優勝してもJ1に定着できていないクラブの今を見れば――それぞれの環境や置かれた状況は違うが――危機感を感じることはできる。ハードでもソフトでも地盤を強化しないと高い理想を持つことは許されないだろう。

でも、優勝はうれしい。J1昇格を勝ち取ったのは3度目だから、6回も月に行ったアメリカのアポロ計画同様に3〜4回目あたりからは新鮮味がなくなってしまうことは仕方がないが、優勝というタイトルが3回目の昇格の鮮度を良くしてくれた。城福浩という発信力のある監督の下で成し遂げたことが期待も大きくしてくれる。前半戦の福岡との対戦(第11節)は甲府にとってかなり悔しい引き分けだったので、今節の対戦については少し前までは「リベンジ」という思いもあった。だが、前節を終えて「福岡戦に勝てば、自力での優勝決定」という条件で乗り込んだ今節にそうした思いはなくなっていた。自分たちの運命を自分たちで決めることができる幸せが、選手を真っ当にサッカーに向き合わせたのではないだろうか。とっくにそういう次元ではなかったのかもしれない。何人かの選手に話を聞いても、必要以上のプレッシャーを感じたという選手はいなかった。優勝、無敗記録の更新と、目標があることは幸せだ。

ダヴィが得点王レースを独走するなかで、他のFW陣は複雑な思いでプレーをしていたと思うが、福岡戦で永里源気が3ゴール全てに絡んだことはJFK甲府がやろうとしてきたことの象徴でもあった。甲府に負けたチームから「ダヴィに負けた」と言われることは少なくなかったが、ダヴィ頼りでよしとはしておらず、ダヴィを活かして2列目の選手が点を取ることにも取り組んできた。最初の頃はダヴィにボールが渡ればダヴィがドリブルしてシュートを打つか、ボールを奪われて終わりになるケースが多かったが、ダヴィを活かして相手のマークが薄いエリアを作ることも狙いになった。今節は福岡のマークが少し甘かったからそれがわかりやすく結実したのかもしれない。ダヴィの2点目は、永里がスクリーンプレーでダヴィを活かした。永里が決めた3点目はサイドバック・福田健介との「自転車通勤コンビ」の信頼関係と、永里の思い切りの良さがプラスに出たスーパーゴール。福岡、F東京、甲府と3年連続の昇格請負人というか、永里が乗る船は昇格するというか、ともかく縁起のいいジンクスを、自らのスーパーゴールで飾った。

(福・津・盛・冨)×田=泥臭いディフェンスライン(福田健介・津田琢磨・盛田剛平・冨田大介)は平均年齢が33歳に近く、予測とラインコントロールをウリにした4人だが、みんな身体を張って終盤の福岡の攻勢を耐えてくれた。2点を取れてギリギリの勝利になったけれど、1点差で勝ちきる自信はあった。ディフェンスラインの軸になるはずのドウグラスがポジションを失った後、サブだった津田琢磨ら30代の選手たちが経験を活かして、守備を安定させてくれたが、これも城福イズム。どんな時でもベストの準備をしている選手が結果を残せば使うという公平な姿勢と視線が、サブのモチベーションを上げてリーグ戦終盤のチームの第3ロケット点火成功に繋がった。ドウグラスもクサることなくやり続けて信頼を取り戻しつつあり、最後までチーム内が健全な競争で満たされていることを証明している。

隅から隅まで満たされているわけではないが、個々の個性という特別な部分を除けばものすごく真っ当に進んだ1年だった。まだシーズンは終わっていないが残り3試合も勝って、無敗記録を24に伸ばしたい。比較的地味な記録だけれど、いつかJ2に降格したビッグクラブが無敗試合を積み重ねて、「ところでJ2リーグ記録は?」と調べたときに「これは無理」と思うような偉大な記録に育て上げてシーズンを終えたい。

以上

2012.10.22 Reported by 松尾潤
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