もったいない試合だった。浦和はC大阪とスコアレスドローに終わったが、敵将レヴィークルピ監督が「内容を考えればこの引き分けはC大阪に運があったし、浦和には残念な結果になったと思う」と振り返ったように、浦和としては勝っておかなければならない一戦だった。
ともにリスクを恐れず攻撃的なサッカーを志向する指揮官に率いられているだけあって、試合は立ち上がりからオープンな展開になった。両者ともボールを奪ってからの攻守の切り替えが鋭く、コンビネーションプレーの迫力も十分。後方からつなごうとしたところでミスが出て、相手に高い位置でボールを取られてピンチを招くというのも似ていた。
相手の攻撃を受け切ったところで素早く前に出て勝負を仕掛けるが、今度は逆に相手の守備に引っかかって反撃を受ける。山田暢久が「互いにそういう感じで、最後のところで外していた。向こうにもチャンスがあって、こっちにもあって、お互い様だった」と話したように、序盤からカウンターの応酬でどちらに先制点が入っていてもおかしくない流れだった。
しかし、時間の経過とともに徐々に浦和が主導権を握っていく。C大阪は簡単にボールを失いすぎた。足元の技術に自信があるのかもしれないが、C大阪は個々の選手が難しい状況でもボールをキープしようとしすぎて中途半端な形で奪われることが多く、それでリズムを失っていった。クルピ監督も「今日は簡単に失いすぎた。それで何度もカウンターを受けたのが悪かった」と肩を落とすほど、C大阪は軽率なボールロストが多かった。
浦和は前からボールを奪ってショートカウンターというパターンがハマり始め、カウンター合戦で優位に立っていった。そんななか、前半アディショナルタイムには宇賀神友弥のクロスからマルシオ・リシャルデスが決定機を迎えたが、シュートは惜しくもクロスバーに嫌われた。
後半に入ると浦和の速攻はさらに鋭さを増していく。C大阪はボールをキープして前に出ていこうとしたところでカットされていたので、攻守が切り替わった際に置き去りにされることが多かった。前に勢いを持った状態でボールを奪えていた浦和はカウンターから何度も相手ゴールに迫った。
「セレッソからボールを取ったあとはチャンスだと思っていたし、そのあと前に出ていくことは心がけていた。その部分ではうまくいったと思う」(柏木陽介)
57分には槙野智章の持ち運びから原口元気が決定的なシュートを見舞い、その3分後にも槙野のドリブルから原口が相手GKをかわそうとするところまでもっていったが、いずれも守護神の壁を越えられなかった。
C大阪は浦和がたまにビルドアップでミスを犯した時に攻め込むぐらいで、後半は完全に浦和のゲーム。カウンターから次々とゴール前までボールを運び、77分には連動したパスワークから柏木が裏に抜け出てゴールネットを揺らしたが、これはオフサイドの判定で認められなかった。
後半アディショナルタイムに入るとC大阪が突如目を覚まし、カウンターから杉本健勇がビッグチャンスを迎えたが、ここはGK加藤順大がファインセーブ。「もしあれがゴールになって勝っていたら、それは妥当な結果ではなかったと思う」とクルピ監督が語ったように、後半のC大阪の決定機はこれくらいだった。
「3ポイント以上に、今日の1ポイントは価値があると思う」。試合後、ペトロヴィッチ監督はそう言って選手たちの奮闘を称えたが、やはり勝点+2を取れなかったのは痛すぎる。C大阪の守備陣が執念の粘りを見せたのは確かだが、あれだけチャンスを作ったのなら1つは決めておかなければいけなかった。
「可能性がある限りは一番上を取るために戦いたいが、現実的な目標は3位で終えることだと思う」(ペトロヴィッチ監督)
残り4試合で上位2チームとの勝点差は6ポイントのまま。広島、仙台との得失点差を考えれば、最低でも4試合中3試合で両チームよりもいい結果が必要という絶望的な状況となった。そして気がつけば4位との勝点差はわずかに1ポイント。これからはACL出場圏内確保を目標に戦っていくことになりそうだ。
以上
2012.10.28 Reported by 神谷正明
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