J2の2位の自動昇格争い、そしてプレーオフ圏内を巡る争いは非常に混沌としている。18時キックオフのこの試合は、京都、東京Vの敗戦と湘南、大分、千葉の勝利を聞いてからの戦いとなった。勝点1、得失点差1がシビアにのしかかり、大きなプレッシャーが掛かる状況だが、横浜FCの選手は他会場の結果を意識することなく、冷静に目の前の敵に集中し、そして退けることに成功した。ゲーム全体を振り返れば、前半終了間際のアレックス ラファエル(草津)の一発退場が、試合の結果を大きく分ける分水嶺であったと言える試合だが、それ以上に横浜FCの冷静なゲーム運びが光る試合だった。
試合開始前から強くなった雨の中にも関わらず、前半の立ち上がりは、お互いに中盤でのボールの奪い合いが激しくハイテンポに入る。もちろん草津は前節岡山を破った勢いをもって試合に臨むが、それ以上に横浜FCが試合の流れを引き寄せるべく強い気持ちで臨む。その象徴が4分の武岡優斗のドリブル突破。中央でボールを持つと、回りの味方をおとりに使いながらも自分で敵陣を切り裂いていく。草津もアレックス ラファエルの裏への動きだしを利用した攻撃や、小林竜樹のドリブルで仕掛けるが、最初の「どつきあい」で優位に立ったのは横浜FCだった。20分をすぎると一転して試合は落ち着き、ボールを保持する横浜FCに対して、ブロックを作る草津の構図になるが、精神面を含むコントロールの点では横浜FCの方が一歩上手だった。そして、草津のクリアミスがコーナーキックになってしまった動揺を見逃さず、42分にファーサイドでフリーになった堀之内聖がゴールゲット。「キーパーは前に出ていて、先読みしている感じが思い切りしていたので、1回ファーに振ろうと思っていた」(高地系治)と相手ゴールキーパーの動きを冷静に読み切ったプレーで先制に成功。そのすぐ後に、ルーズボールの争いで井手口正昭の顔に足裏を見せてしまったアレックス ラファエルが一発退場。試合の流れが、横浜FCに傾いた状態でハーフタイムを迎える。
攻撃の核を失った草津は、後半最初から櫻田和樹に代えて熊林親吾を投入。4-4-1のフォーメーションで臨み、少ないチャンスでのカウンターとロングボールのこぼれ球を狙いとする。この守備から入る狙いが功を奏し、後半開始の20分間はどちらかと言えば数的には不利だった草津が横浜FCの攻撃を封じることに成功。すると、横浜FCは中盤に厚みを加えるべく、68分に大久保哲哉に永井雄一郎に交代し4-5-1のフォーメーションに変更。逆にペースを掴んでいた草津も74分に遠藤敬佑を投入し3-4-2のフォーメーションに変更し勝負に出る。しかし、この草津の勝負を逆に利用できたのは横浜FCだった。4分後の78分、左サイドで持ち味のドリブル突破を見せた永井が、追い越す動きを見せた野崎陽介にスルーパスを出すと、野崎はファーサイドでフリーになっていたカイオにワンタッチでパスを出し、カイオが追加点を冷静に決める。そして、88分には、堀之内のクリアボールを執拗に追った武岡が草津GK北一真のミスを誘い、奪ったボールをカイオに預けると、再びカイオが冷静に無人のゴールに流し3-0とゲームを決めることに成功した。
冒頭に書いたように、終わってみれば退場による数的優位を横浜FCが生かしたゲームだったが、試合全体のペースをコントロールしながら、相手の見せた隙を冷静に突いていく勝ち方は、昇格争いのプレッシャーをものともしない、最下位から一歩ずつ「叩き上げ」てきた自信を感じさせるものだった。横浜FCにとっては、決して楽なゲームではなかった。草津も狙いをはっきりとした攻守を見せていた。しかし、攻められる場面があったと感じた前半でも公式記録では草津のシュートは2本。それは、シュートの場面でも必ずコースで寄せてブロックすることでシュートにさせていない努力の賜物と言える。さらに、この試合で永井が素晴らしいプレーを見せ、途中出場の内田智也も復帰を果たした。残り2試合での昇格争いのラストスパートに向け、精神的にも戦力的にも、さらなる上積みを図ることができたのは大きい勝利だ。
敗れた草津は、副島博志監督が「自滅」と述べたように、前半は悪い戦い方をしていなかっただけに、前半の失点に繋がったCKを与えたクリアミス、そして退場劇と、悔いの残るゲームだった。試合後の監督・選手からは内容と結果が結びつかないことへのもどかしさが語られていた。試合を勝つという目標を達成するために、攻守への自信を取り戻せるか。副島監督は今季で退任となるが、「この2試合に目標がないわけでないし、選手個人・チームの質と結果の向上に自信をもってトライしたい」という指揮官の言葉を実現することが、草津の来シーズンに向けて重要になる。
強く降る雨の中にもかかわらず、4,899人が集まったニッパツ三ツ沢球技場は、昇格を争うチームのゲームにふさわしい盛り上がりを見せたし、昇格という目標に向けて横浜FCがスタンドと一体になって加速する姿を見せた。この試合で横浜FCが一番得たものは、勝点3以上に昇格に向けた熱かもしれない。いよいよ、次は大一番の東京V戦、そしてクライマックスを迎える。
以上
2012.10.29 Reported by 松尾真一郎













