前線、サイドのマッチアップは互角。勝敗を分けたのはボランチの僅かな差だった。
予報通り、ヤマハは試合前から激しい雨。巻くような風も吹く悪天候のピッチで序盤から激しい攻防が連続した。「立ち上がりから両チームのタイトな守りが目立つ試合だった」と振り返ったのは柏・ネルシーニョ監督。[4-4-2]を敷く両者が真っ向からマッチアップし、互いに潰し合う展開が続いた。前半のシュート数は磐田、柏共に4本。41分にCKのこぼれ球に反応した磐田・藤田義明がフリーでシュートを放った場面が前半最大の決定機となり、それ以外の場面では共に大きなチャンスを作ることはできなかった。
ゲームが動いたのは後半。先に決定機を作ったのは磐田だった。55分、右サイドをドリブルで駆け上がった駒野友一から前田遼一、山田大記とつないでサイドを突破。最後は山田のクロスをニアサイドの前田が頭で合わせたが、惜しくもゴール横に外れた。ここで失点を免れた柏にチャンスが訪れたのは62分。磐田・藤田義明の田中裕人へのパスミスを見逃さず、中盤の大谷秀和、さらに守備に下がってきた工藤壮人の2人でボールを奪取。パスを受けたジョルジワグネルがドリブルで相手ゴール前まで運び、前線のクレオへ縦パス。一度はルーズボールとなったが、これを栗澤僚一が拾い、前線の工藤へ。この落としを受け、ゴール正面でフリーとなったワグネルが左足を一閃。ゴールまでやや距離のある位置ではあったが、強烈なライナーがゴール右に突き刺さった。「前が空いていたし、ピッチが濡れている時はGKの処理が難しいと思ったのでグラウンダーのシュートを打った」(同選手)。スペシャルな左足を持つブラジル人MFの一振りが、結果的にこの試合の決勝点。柏が今季初のリーグ戦連勝を飾り、中3日で臨むACLに向けて弾みをつけた。
「本当に、ほんの一瞬でしたが…」。磐田・長澤徹監督は失点場面を悔しそうに振り返る。「失点の前のボールの奪い合いのところで“ダブル”で持っていかれた場面があった。そこでは栗澤選手、大谷選手の方が一瞬ですが、勝ったかなと。それ以外の場面ではうちの小林裕紀、田中裕人がパワーを持って中盤で制してくれたが…」。加入3年目の小林裕は果敢な攻撃参加を見せ、大卒ルーキーの田中も持ち前の献身的な守備でチームに貢献。しかし、ゲームの分岐点となるポイントで光ったのは栗澤、大谷の勝負強さだった。「相手のボランチには僕たちボランチが行くようにと監督に口うるさく言われている」と語るのは大谷。中盤でセカンドボールを競り、それを拾ってワグネルのミドルにつなげたのは柏の両ボランチだった。
文頭に挙げた通り、前線、サイドのマッチアップはゲームを通じて均衡していた。磐田最終ラインが柏の2トップ・工藤、クレオに許したシュートは合わせて2本。失点こそ喫したものの、磐田としては相手2トップに自由なプレーをさせなかったと言っていい。一方、柏最終ラインも磐田の2トップ・前田、金園に対して肝を冷やされる場面もあったが、完封。ゴール前は両チームとも最後まで集中力の高いプレーを見せた。
サイドのマッチアップもほぼ互角。ワグネルは「駒野選手からの攻撃でジュビロが調子を上げてくることはわかっていた。そこで仕事をさせないように連係を取りながらブロックしようと思っていた」と試合を振り返る。その後ろで気を配った増嶋竜也の存在も光り、磐田の駒野を生かしたサイドアタックを単発なものにさせた。換言すれば、磐田の攻撃が十分に機能していなかったと言える。「ロングボールが多くなってしまい、高い位置を取れないこともあった」と語るのは駒野。「ショートパスをつないでタメやスペースを作ることができなかった」と続ける。磐田は前節より布陣を[4-4-2]に変更。この試合、守備面ではまずまずの手応えを掴むことができたが、課題は攻撃面。「柏さんが我々のボランチを厳しく捕まえにくるということで、トップの前にはスペースがある。そこでバイタルエリアにボールを打ち込む」(長澤監督)という狙いがあったにせよ、そこへ入れるロングキックが単調になり、柏の両センターバックに弾き返される場面が多くなってしまった。
終盤には山田が惜しいループシュートを放つなど最後まで諦めない姿勢を見せたが、0-1のまま試合終了。仮に失点がなかったとしても勝ちきれたかどうかは疑問符が付く。磐田市に招待された市内の約3200名の小学生の声援に応えることができず、リーグ・柏戦の連勝も『5』で止まった。「とにかく前を向いていきたい」。静まり返ったスタジアムに、主将の言葉が虚しく響いた。
以上
2013.05.12 Reported by 南間健治













