「さるく」という言葉がある。町をブラブラ歩くという意味の長崎弁だ。そして、今回のアウェイ旅のテーマは「遊さるく」(マップを片手に自由に歩くこと)。中華街の店頭で売っていたブタまん(ミニ)と焼売を朝飯代わりにお腹に入れて長崎の町へと繰り出した。ホテルで手に入れたガイドマップを見ると、長崎駅を中心に広範囲に観光名所が広がっている。公共交通機関を利用すれば、多くの場所を訪れることが出来るのだろうが、今回の目的は、あくまでも「さるく」。キックオフまでの時間を計算し、唐人屋敷から御崎道(みさきみち)を抜けてオランダ坂へ。そして、大浦天主堂へ向かってから長崎駅に戻るコースを設定して歩き始める。
現存する4つの唐人屋敷跡を示す看板を見ながら歩いて行くと、この辺りは全く観光地化されていないことに気付く。何やら再開発の計画もあるようだが、そこは普通の人たちが、普通の生活を営んでいる、普通の場所。年配の女性が散歩をし、子どもたちが元気よく走りまわり、市場では近所の主婦が買い物をしている。そんな中に、ごくごく自然に唐人屋敷跡が現存している。目的は唐人屋敷を見ることだったのだが、歩いているうちに、この町が持つ不思議な空間の魅力に取りつかれる。ひしめき合う住居の間に走る路地。あちこちにある小さな階段。そして顔を出す地域猫。その中に当たり前のように残っている歴史的な建物。長い時を刻んできたことを窺わせる空間は、物静かで、穏やか。大きな心で私の体ごと包んでくれるようで、不思議と穏やかな気持ちにさせてくれる。
そんな気持ちになりながら御崎道へと足を進める。ぎゅっと詰まったように立ち並ぶ家々の間を細い階段が伸びる。その階段をしばらく歩いていると、ほとんどの家の土台が石垣であることに気づく。しかも、何やら歴史を感じさせるものばかりだ。そして、あちこちに、何かの跡地であったことが記されている石碑が見える。すれ違う観光客はほとんどいない。ここも、普通の人たちが、普通に暮らす、普通の空間。だからこそ、悠久の歴史と、その中で、静かに時を重ね、世代を重ねてきた人たちが偲ばれ、長い時間をかけて築かれたであろう優しさのようなものを感じる個度か出来る。「長崎の観光地といえば、グラバー園や眼鏡橋、大浦天主堂や平和公園などを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、小さな路地を入ったところ、曲がりくねった石畳の坂道を上りきったところにこそ、長崎の本当の魅力は眠っています」とは、長崎さるくの公式HP(http://www.saruku.info/)の冒頭に書かれた言葉だが、その意味を実感する。
御崎道を通り抜けた頃には、すっかり長崎気分。「雨に湿った讃美歌の 歌が流れる〜」と自然にご当地ソングを口ずさむ。その先を少し歩けばオランダ坂。さすがに、この辺りからは観光客の姿が、ちらほらとみられるようになっていく。そして、オランダ通りを通って大浦天主堂に向かえば、そこは観光地。路面電車の大浦天主堂下駅から大浦天主堂へ続く長い坂道には数々の土産屋が並ぶ。日曜日の昼の時間帯ということもあって、既に観光客でいっぱい。これまで歩いてきた長崎の町とは、また違った雰囲気が周りを包む。この日は「さるく」が目的であったことと、諫早へ移動しなければいけないこともあり、大浦天主堂とグラバー邸には入館しなかったが、時間があるのなら、入館して当時に想いを馳せるのもいい。そう言えば「トルコライス」の看板をいくつか見かけたが、これも長崎が本場。カロリーは気になるが、旅の思い出に味わうのも悪くない。
さて、大浦天主堂を後にしてオランダ通りをまっすぐ戻れば、そこは新地。この日のスタート地点である中華街へと戻れる。のんびりと歩き、ゆったりと過ぎていく時間を楽しみながらの「遊さるく」は約2時間。程よい疲れと、癒された心に大満足の「遊さるく」だった。そしてここからは、長崎との間で初めて行うバトルオブ九州取材のために諫早へ移動する。さてさて、初めてのバトルオブ九州は、どんな戦いになったのか。その様子は後編で。
以上
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★福岡:アウェイに行こう〜長崎編(後編)はこちら
2013.07.17 Reported by 中倉一志
J’s GOALニュース
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朝食は中華街の軒先で売られていたミニブタまんと焼売。優しいお姉さんがおまけしてくれて500円。
普通の人たちが、普通に生活を営む、普通の場所。そんな中に唐人屋敷が現存している。
最初に現れるのは土神堂。この建物を含めて4つの唐人屋敷が現存するが、区画が当時とほとんど変わっていないことに感心しながら坂道を歩く。
家々に囲まれた路地裏には、長崎独特の空気が漂う。心が癒される空間だ。
歩いていると、あちこちに地域猫が顔を見せる。
唐人屋敷の入り口から、御崎道(みさきみち)を通ってオランダ坂へと向かう。
オランダ坂。それにしてもさすが長崎。坂道だらけ。
大浦天主堂。この辺りまで来ると観光客で一杯。















