「自分としては負けられない」(鈴木大輔)
「大輔は人に強く、やりがいがあった」(豊田陽平)
鳥栖が低い位置から前線の豊田を目掛けロングボールを送る。まるでAFCチャンピオンズリーグで、フィジカルコンタクトに長けた海外のストライカーとの競り合いを見ているかのように、鈴木と豊田は90分間体をぶつけ合い、迫力満点の激しいエアバトルを繰り広げた。
空中戦のみならず、27分には鳥栖のクリア気味のフィードに対し、豊田が柏の最終ラインの背後を突く。縦への突進力をも見せつけた豊田のシュートを、猛然と追いかけた鈴木のスライディングが食い止める。
7月の東アジアカップを制した日本代表メンバーであると同時に、星稜高校の先輩と後輩という間柄でもある。戦前から鈴木と豊田のマッチアップは注目を集めていた。
そして結果的に、このマッチアップは試合展開に大きな影響を及ぼしている。試合を通じて、柏も鳥栖も多くのチャンスを作り出したわけではないが、その限られたチャンスの中で、いかにゴールを挙げられるか。勝敗を分けたポイントでは、鳥栖の得点源である豊田を鈴木が抑え、柏の得点源である工藤壮人が少ない決定機の中で2度ネットを揺らした。しかもその2度の好機は、いずれも鈴木の守備から始まっている。
29分、鈴木のヘディングでのクリアがレアンドロ ドミンゲスへ通り、クレオとのパス交換の後、レアンドロは頭で工藤が走るスペースにボールを流した。「流し込むだけだった」と工藤は振り返ったが、呂成海と金民友の間で絶妙のポジション取りをした工藤の巧みな動き出しが光った。
65分、最終ラインの菊地直哉が池田圭にくさびの縦パスを放つ。「後半はボールを受けに落ちている選手に対し、取りに行こうと思っていた」と話す鈴木は、「前の選手がパスコースを限定させてくれた」と足元に入る鳥栖の縦パスを予測し、鋭いインターセプトを見せてショートカウンターの起点となる。レアンドロのスルーパスを工藤が冷静に左サイドネットへ流し、2−0と柏がリードを広げた。
ロングボールで豊田の高さを生かす、あるいは一発で相手の背後を突く。縦への速い攻撃は鳥栖の持ち味であるが、速い攻めへ出た直後にボールを奪われると、そこから慌ただしく守備をしなければならないため、ファウルで止めるなど試合全体が落ち着かず、せわしないテンポでのアップダウンを繰り返した。ルーズボールを出足よく拾い、ニルソンが鋭いパスを前線に入れた時などはシュートシーンまで持ち込んだが、全体的に攻め急ぎの感が強く、ボールを失ってカウンターを浴びることを考えれば、攻め急ぎが流れを掴めない原因であるようにも取れる。実際に、鳥栖にとってあまりにも痛すぎた2失点目は、縦パスを奪われたことが引き金となった。
鳥栖での初出場を果たした播戸竜二はこう言う。
「奪ったボールをしっかりつなぐこと。ディフェンスをする時間が増えれば、疲労も溜まっていく。自分たちがボールを回せる時間を増やしていきたい」
ゲームをコントロールできる菊地とニルソン、豊富な経験値を持つ播戸。鳥栖の特徴やストロングポイントを踏襲しつつ、この夏に加わった新戦力3人によって、鳥栖には新たなオプションを手に入れ、確実に幅は広がっている。この試合では結果を得られなかったが、最後のニルソンの一発で、ワンサイドになりかけていた試合の行方を、再びどう転ぶかわからないところまで引き戻した諦めない姿勢を含めて、試合終盤のゴールを次節に結び付けたい。
柏は、チャンスがありながら3点目を奪えなかった点、最後にラインが下がり過ぎ、前線との距離が開いてセカンドボールを拾えずに失点した点は改善すべきだが、ハーフタイムでのネルシーニョ監督からの修正と、後半途中での栗澤僚一の投入で全体的に落ち着きを取り戻し、バタついた前半から一転してリズムを取り戻したことは評価していいだろう。
そして何より、柏加入以来最高とも言えるハイパフォーマンスを見せた鈴木、ずば抜けた決定力から2つのゴールを挙げた工藤。代表選手2人が誇示した存在感は、これまで上昇気流に乗れなかったチームに勢いを与えた。
あとは、この勝利が“真夏の反抗”を呼び起こすキッカケとなり得るか。直近の5試合は負けなし。結果の上では復調の兆しが徐々に見えている。
以上
2013.08.04 Reported by 鈴木潤













